「疵痕」プロミシング・ヤング・ウーマン U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
疵痕
復讐の話ではあったが、それだけではない。
被害者からの目線というか…崩された側が詳細に描かれていた様に思う。
脚本も巧妙で、彼女が夜な夜なBARに出没する動機をダイレクトには描かない。いや、描けないとでもいおうか、凄くパーソナルな動機で共感を期待しないとでも言うような作り方だった。
彼女なりの細やかな復讐でもあったのだろう。
当時者達というよりは、同類の男達に。
おそらく彼女の親友は同意なきSEXを強要されたのであろう。そこからその親友の人生は崩れだした。
その加害者達は、なに不自由のない人生を送り、幸せを謳歌している。
親友の屍の上で、優雅にダンスを踊っているように彼女には思えたのかもしれない。
「忘却が最大の武器」と説いたのは誰だったろうか?
この状況には当てはまらないのかも知れないし、そんな言い方でも無かったのかもしれない。
彼女には、それが出来なかった。
親友の両親さえ立ち直ってる所をみると、彼女は彼女で精神的な歪みを抱えているのかもしない。
脚本が上手いなぁと思うのは、彼女は一旦立ち直りかける。恋愛が彼女を未来へと後押ししてくれるのだ。
だけど、彼女の復讐は始まっていて、そんな彼女も過去の自分から逃れられはしなかった。
彼の過去を垣間見た彼女の衝撃はどれほどのものだったろうか?
まさか、親友を辱めた側の人間だったなんて。
その事実を持ち込んできたのは彼女が最初に的にかけた友人だった。
この時点で彼女の精神は崩壊したのかもしれない。
復讐に赴く彼女には、亡き親友への懺悔もあったのかもしれない。ひと時でも貴方を忘れようとした自分が許せなかったのかもしれない。
彼女の死から始まる真の復讐劇。
今の足場が明確に音を立てて瓦解していく恐怖と不安を、スマホの画面は的確に表現してた。
裁かれずとも、自分の記憶だけは欺けない。
そして、その罪の記憶は埋没したとしても、風化するものではないのだ。
なかなかに噛み応えのある脚本だった。
若干、説明不足な節もあり…ディレクターズカットが出るようならば観てみたい。
ありがとうございます。
僕の方こそtalismanさんのレビューを読んで、足りない知識や楽しみ方を補填させてもらってます。
音楽やら色彩やら、様々な角度からの視点は羨ましい限りです。
いつも、ありがとです。