劇場公開日 2021年3月26日

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「世界に誇れる日本人映画監督がまた一人増えました」JUNK HEAD Ganymedeさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0世界に誇れる日本人映画監督がまた一人増えました

2021年4月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

これをストップモーションで作ったなんて信じられません。

すべてのキャラクターに魂が宿っています。

何百人もの有能なクリエイターが集まって細かな表情筋まで描き出すディズニーやピクサーに、たった一人で渡り合う気かと思うほどの熱量、気概を感じます。
まったく表情のない人形を繊細に緻密に動かして、一つ一つのキャラクターに魂が宿ってリアルに生きています。

ミニチュアスタジオから生み出されたとは思えない巨大迷路の閉塞感や、地下世界の深淵さを感じます。
まさに堀氏はこの世界をたった一人で作り上げた神様です。

「光あれ」で6日で世界を作って7日目は休んでいた神様とは訳が違います。
7年間の歳月をかけて、地下世界のセットを作り、キャラクターをコマ送りで動かして生み出された世界。
とにかく見れば見るほど没入感が凄いんです。

さらに凄いのが、女性の声を除く全てキャラクターの声を堀氏が一人でやってのけている事です。
未来語を作り出す才能、キャラクターごとの声音の使い分け、感情の起伏の表現、声優としても異彩を放っています。

時々、アレ今、日本語喋ったよね?英語喋ったよね?
(もしかしたら他の言語も混じってるかも)という可笑しみもあったり、
声を出して笑いたくなるおとぼけシーン、時に下品な笑いを明らかに狙ってるシーンもあったり、楽しめます。
最後の方では、ありふれたシーンにもかかわらず、表情のない能面顔にハッキリと悲しい泣き顔が見えて不覚にも泣きそうになったり。

好き嫌いが割れそうなグロカワ系ワールドですが、この緻密に完成された世界観は一見の価値があると思います。

堀氏の言葉が女性蔑視と取らておりましたが、この世界観を理解したらあの言葉は蔑視による発言ではないと分かると思います。
私は女性ですが、堀氏流の褒め言葉だったと受け止めました。
一連の騒動は、好きな女の子にブスと言って泣かせて謝罪に追い込まれた小学生男子を思わせます。
今の世界の言葉尻を取って蔑視だ差別だと騒ぐ事に閉塞感を感じます。
「バカ」という言葉が時には愛情表現で使われるように、同じ言葉を使っても、そこに込められる思いや感情は、その人の人なりや互いの距離感によって変わってきます。
相互への理解力が必要だと思います。

堀氏の世界感は品性がある美しい世界ではないかも知れません。万人に受け入れられるのは難しい事です。
でも堀氏独自の愛情表現や美意識、世界観が一人でも多くの人に伝われば良いなと思います。

Ganymede