「炸裂した、凝縮された作家性」サマーゴースト ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
炸裂した、凝縮された作家性
loundraw初監督作品。今作の最初のビジュアルを見た時に「君の膵臓をたべたい」のアニメ版と似てるなーと思ったら、キャラクター原作を務められていたというので合点がいきました。とても好みのキャラクターデザインだったり、タイトルのストレートさだったり惹かれるものが多く楽しみに待っていました。(サマーとついてるものだからてっきり夏に公開かと思いきや、肌寒くなってきた11月公開でした笑)
今作40分という劇場公開作品としては異例の短さで、自分が今年観た作品の中でも同時上映を除けば1番短い作品でした。メディアミックスはされていましたが、敢えて情報を入れずに初見で鑑賞しました。
loundrawさんのアニメーターとしての魅力が存分に発揮されていました。灰色に近い白を基調とした風景描写、その白さとの対比のように美しく光る青空や夕焼け、夜空。線香花火の小さな閃光すらも見惚れてしまいました。地面の下を水として映す表現も素敵だなと思いました。
物語もサマーゴーストこと絢音の体を探すというもので一貫しているので、無駄な要素が全くない綺麗な映画でした。変に横道に逸れたり、男女の物語だからと恋愛に走ったりなど、余計な事をしなかったのが功を奏しています。自分を見失っている友也、病気を抱えており寿命が差し迫っている涼、同じ学校の生徒にいじめられているあおい、と型にハマりながらも、現代の若者を象徴しているものから、病気という身近ながらも遠いように感じるものまでカバーしているので、脚本を務めた乙一さんの構成力もお見事だなと思いました。そんな3人が同じ目標に向かって力を合わせるのも一種の青春だなと思いました。
絢音がサマーゴーストになった理由は、自殺ではなく他殺という中々に重いテーマでした。絢音の遺体を探すというヘビーな展開を、空を飛ぶなどのファンタジックな世界線が混じりあっているので、ヘビーに感じなかったのも凄いなと思いました。3人が出会ったこと、3人が絢音と出会ったことにより前を向く理由を見つけ、友也は美術の学校へ行き、あおいはいじめっ子に立ち向かい、涼は病気での死後、サマーゴーストとなり、2人を暖かく送り出しました。というストーリーでした。
40分という時間に詰め込まれたひとつの物語がとても面白く、もっとこの世界を堪能したいなと思ってしまった程です。漫画版や小説版も出ているみたいなので、一通り読んでいこうと思いました。新たなアニメーションの時代を体験できる今作、超オススメの一作です。次の作品も楽しみです。
鑑賞日 11/12
鑑賞時間 16:40〜17:30
座席 H-11