「【”自分の人生の最期は、自分自身で決める。”高齢の男女の湖畔での共同生活を通して、人生の晩年を如何に生きるかというテーマを、決然と描き出した作品。愛と再生と、人間の誇りを描いた作品でもある。】」やすらぎの森 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”自分の人生の最期は、自分自身で決める。”高齢の男女の湖畔での共同生活を通して、人生の晩年を如何に生きるかというテーマを、決然と描き出した作品。愛と再生と、人間の誇りを描いた作品でもある。】
■人里離れた深い森で暮らす年老いた3人の男たち。
それぞれの理由で世捨て人となった彼らのもとに、80歳の女性・ジェルトルードが訪れる。
精神科療養所に入れられ、60年以上も外界と隔絶した生活を強いられてきた彼女は、この地で新たな人生を踏みだすが…。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・今作の本当の価値は、ある一定以上の年齢にならないと分からないのかもしれない。
だが、私は身体中に管を通され、自らの意思も認められず、只、ベッドで死を待つ現代日本では普通になりつつある最期は遂げたくはない。
故に、隔絶した森に棲み、部屋にはいつでも死ねるように、青酸カリの瓶を置き暮らす、彼らの生き方、死に方を否定したくはない。
・長年、施設に閉じこめられてきたジェルトルード/マリー・デネージュ(アンドレ・ラシャペル)が彼らの元に、遣って来てチャーリー(ジルベール・シコット)と身体を重ねるシーンの美しさ。
アンドレ・ラシャペルという女優さんは資料によると、”ケベックのカトリーヌ・ドヌーブ)と言われていた女優さんだそうだが、実に稚気ある美しさを発揮している。
彼女は、この森に来たことで、愛を得て、再生したのである。
・一方、テッド・ボイチョク(ケネス・ウェルシュ)は、前半で亡くなってしまうが、素晴らしい絵を遺したし、トム(レミー・ジラール)も自分の死期を悟り、自分自身で穴を掘り、愛犬と青酸カリを仰ぎ、最期を遂げる。
ー このシーンは衝撃的ではあるが、上記に記した通り、トムの行為を私は支持する。ー
<日本でも、近年高年齢化が進む中、”老いと死”をテーマにした映画が、毎週の様に上映されるが、今作はカナダの”世捨て人”の男女の生き方、死に方は観る側に深い余韻とともに、人として死ぬとはいかなることかを、語りかけてくる作品であると思う。>