アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版のレビュー・感想・評価
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見応えのある社会風刺もの
ウェス・アンダーソンのフレンチディスパッチのような三部構成で作られた映画。
第一部ではウィズコロナ禍の現代のルーマニアが抱える数々の問題を主人公が街中を歩く中で遭遇させる形で詳らかにしていく。歴史的背景からくる人種差別やコロナ禍での鬱憤の噴き出し、根強く残る女性軽視(蔑視とも言える)などなど。
第二部では第一部では直面した問題を裏付けるネタにブラックユーモアのエッセンスをふりかけて風刺のきいたものに。
『ドラゴンタトゥーの女』の原作にちょいちょい挟まれてた“ノルウェーの女性の○%は〜”を思い出した。
第三部でやっと本題のセックスとは卑猥か否かの議論が名門高校の保護者説明会という形の会話劇で展開されていき、それを楽しむ。
映画のタイトルは若干“釣り”気味ではあるものの、セックスの云々を語りたいのではなく社会全体を風刺してる映画。この直前に同じ劇場で観た『インフル病みのペトロフ家』と同じでロシアや旧ソ連の歴史を学び直してから観た方がより理解が出来て楽しめる映画。
お勉強し終わったらもう一度観ます!
自分のセックス動画が流出してしまい、魔女裁判のような保護者説明会で生徒の保護者たちに一部始終を観られ、あれこれ言われながらも凛として振る舞っていたエミ先生が素敵でした💕
多分この監督は人が悪い。しかし面白い
日本ではセックスについて正面から語られることは、日常生活ではあまりない。話そうとすると猥談と思われたり、場合によってはセクハラだと訴えられることもある。
しかし性は食と並ぶ基本的な欲望である。どこのメーカーのコンドームを使うとか、避妊リングは何がいいとかいった話題は、どこのレストランが美味しいとか、そういう話題と同じレベルで語られてもおかしくない筈だ。しかし現実はそうではない。
食事が公の場でも堂々と出来るのに対して、セックスは公の場ではできない。人類もかつては動物と同じようにいつでもどこでも公然とセックスをしていたと思う。それがいつしか秘め事となり、猥褻という概念が生まれる。
詳しくは文化人類学者に任せるとして、本作品ではヒロインが夫とセックスをした際に、アホな夫が撮影して動画をPCに残し、そのままPCを修理に出して、どこかのタイミングで動画がネットに拡散されてしまった訳だが、ヒロインが名門校の歴史の教師ということで、お堅い学校関係者によって大問題にされてしまう。
夜に開かれる保護者との会合を前に、ヒロインはブカレストの街をうろつく。街には不満と怒りと欲望が充満している。どの街も同じだ。金を持っている人間だけが街を満喫できる。貧乏人は苛立つだけだ。その苛立ちがヒロインに感染したように、怒りが増幅する。
保護者会に到着したときは、その怒りが最高潮に達したかのようだが、ヒロインは歴史の教師らしく、保護者たちの無知で筋違いな詰問のひとつひとつに理路整然と反論する。問題はセックスそのものなのか、拡散したことなのか、それともセックスを猥褻とするパラダイムなのか。
議論は一瞬だけ、本質的な議論に発展しそうになるが、旧態依然の倫理観の持ち主たちが邪魔をして、名門校にあるまじきだとか、破廉恥な行為だとかいった決めつけで終わってしまう。フェラチオもしたことのないような高慢な金持ちのおばさんが主導権を握る保護者会ではそれも仕方がない。
軍服を着て威厳を示そうとする保護者がいるが、道化にしか見えない。別の制服を着た男は、論理的な発言ができないで茶々を入れるだけだ。ルーマニアには馬鹿しかいないのかと思わせるようなシーンが続く。多分この監督は人が悪い。しかし面白い。結末はルーマニアの人々のくだらない倫理観と頭の悪さを嘲笑うかのようだ。
ただの悪ふざけか緻密な計算の物語なのか
オリジナルは未視聴。
中学教師である女性が夫とのセックスを撮影した動画が流出し、生徒の親たちに追求されるという内容なのだが、冒頭のセックスシーンは自主検閲のためにほぼ声のみ。スクリーンには監督のメッセージが映し出されるという風変わりな始まりだった。
その後も町中を歩いたり、カフェに入ったり、電話したりしながら時が過ぎる。ちょっと長くないか?やっと別のチャプターに移ったと思ったら今度は監督のキーワード解説的な映像とメッセージが延々と流れる始末。本当に本筋とは全然関係ないパートだった。そして校長を交えて保護者たちと話し合う集会のシーンに。
たとえセックス動画が流出したとしても夫婦の営みであればそこまで問題視しなくてもよさそうなものだが、そこは進学校の保護者たち。下世話な好奇心と嫌悪感を剥き出しに退職を求めるという展開。登場する人名なんかでわからないシーンがいくつかあったが、ここでようやく少しは面白くなったと言える。
ただし、この監督はラストでまたとんでもないことをやらかした。3つの結末を見せるのはまだいい(それもかなりの抵抗感あるけど!)。3つめの結末のしょうもなさに失望してしまった。いきなりコメディ?どう好意的に見ても悪ふざけにしか思えない。それともこの映画全体が壮大な悪ふざけなのか?それでも納得はいかない。
前半2つを何とか耐え抜いて─
冒頭のかなりパンチのある社会風刺的?な映像と、次に続く映像の不自然なカメラワーク、さらには本をめくるがごとくのアイロニーというかこれまた社会風刺?の結構難関な映像が続くわけですが、そこをじっと我慢して、なおかつしっかり受けとめていけば、後半の頭に血が上るような怒涛の興奮を得られること間違いなしです。
成り行き上、至極当然のように総攻撃されている個人をめっちゃ応援したくなりましたが、色々な立場を想像すると、なかなか深く難しいものだと実感させられます。とかく内容が他人事のようには眺めることができなかったので・・・。あんな攻められたら、果たして独りで立ち向かえるかどうか、とか、淫らに見えてしまう行為を見せつけられ果たして冷静に分析などできようか、とか、どんな立場であれ自覚あるなしに関わらず当然のように差別的になりそしてそれをすんなり受け入れていたりするものだなぁ・・・とか、とにかく刺激的な作品です。
パラダイムシフト
夫との営みの映像がネットにアップされてしまった名門中学の教師の話。
モザイクどころかほぼ画面全域レインボーで音声とふざけた字幕の「観られなくて残念だね!」なオープニングでベタベタなコメディかと思ったら、マッタ~リ能書き臭い物語が始まり、コロナ禍のストレスフルな世の中をみせるのか???
3パートに分割されているけれど、パート2は脱線したフリップ芸的映像ネタだし、パート3はワンシチュエーションでタラタラ能書きを。
言ってることややってることは面白くはあったけれど、兎に角長い。
これなら半分の尺で何とかして欲しかった。
ちょっと生真面目過ぎる気も
ふざけきっているようで、その奥の生真面目さがちらついてしまう。part1の道で追いかけてからの建屋カメラワークはどう理解すれば良いのだろう。
part2のアーカイブボケ編は偉人の名言引用が鼻に付く。なにより偉い故人の名言を引くのは権威主義に見えてしまう。
私としては教育者のセックス流出しても、別に良いんじゃないかと思うけれど、これは子を持っていない為、考えても仕方ない。
もっと尺削って90分程度にすれば良いのに、これに賞を与えるとまた、偉そうな映画にするために長尺化が進んでしまう。
初見では半分も拾えない膨大なトリビアと赤裸々な言葉の応酬が浮き彫りにする凶暴な皮肉が痛快極まりない。金熊賞受賞に納得しかない挑発的で型破りで極めて知的な作品。
タイトルに反して極めて知的、すなわちこのタイトルに眉を顰めて遠ざける、まさしく本作に表現の自粛を強いるような風潮を嘲笑う凶暴な作品。監督が自らに強いられた検閲作業をむしろ楽しんでいるように見えるのはそのような強制もまた本作のテーマをくっきりと浮かび上がらせるからではないか。映画は三部構成となっていていきなりぶち撒けられる赤裸々にも程がある動画(といっても自己検閲されているので見えませんが・・・)がネット上に流出してしまった中学校の歴史教師エミが狼狽しながら街を徘徊する第一部、様々な逸話を写真や動画で縁取って陳列する第二部、そしてパンデミック下にも拘らず開催された父兄会に呼びつけられたエミが個性的な保護者達と舌戦を繰り広げる第三部という構成。全編を貫いているのは乾いたユーモアで、無数に挿入されるネタが浮かび上がらせるのは、躍起になって隠そうとしたり目を逸らそうとしているものよりももっと卑猥なものがそこら中に散らかっているこの世界そのもの。パッと見では半分も拾えない膨大なトリビアがパンパンに詰まっているので前代未聞の結末までずっとボディブローを食いっぱなしになります。
原題を直訳すると“変態ポルノにぶち当たる不運”。画面にボカシやモザイクを入れるのではなく独特の手法で自己検閲を施すラドゥ・ジューデ監督がフランク・ザッパを頻繁に引用しているのは自己検閲版ならではのオマケ。前日に偶々『ZAPPA』を観ていたのは、本作のタイトルに反して非常にラッキーでした。
学生時代にルーマニア語とスペイン語は非常によく似ていると教わっていましたが、当然ポルトガル語とも親和性が非常に高く、ほとんど知識がないはずの言語のはずなのに耳からもちゃんと情報が入ってきたのには少し驚きました。ブカレストの退廃的で埃っぽい街並みも自分がかつて住んでいた街にそっくりで一層身近に感じました。
ベルリン国際映画祭すげえな
2022年4月11日
映画 ##アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版(2021年)鑑賞
コロナ禍の閉塞感が生みだす人々の憎悪や欲望を赤裸々に描いた作品です
主人公の女性教諭はメンタルがとても強いなと思いました
@FansVoiceJP さん試写会ありがとうございました
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