劇場公開日 2023年2月3日

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「我が郷土出身の藤枝梅安」仕掛人・藤枝梅安 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5我が郷土出身の藤枝梅安

2023年2月5日
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鑑賞方法:映画館

1970年代に始まった『必殺シリーズ』と言えば、仕掛けのシーンの演出として、レントゲン写真で骨や心臓を粉々に砕いたり、三味線のツルで人を吊り上げたりと、当時としては斬新な映像が印象に残っている。そして、ちょっと艶っぽいシーンも必ず盛り込まれて、中学生だった自分にとってはドキドキしながら観たのも覚えている。

その『必殺シリーズ』の元祖仕掛人の藤枝梅安が、スクリーンで復活するのを楽しみにしていた。これまで梅安は緒形拳をはじめ、田宮二郎、渡辺謙等、錚々たる俳優が演じ、仕掛けをしない時は、軽いノリのスケベオヤジに描かれていたが、今回の豊川悦司が演じた梅安は、普段からも物静かで、常に沈着冷静な豊悦らしい梅安像として描かれていた。

表の顔は腕の良い針医者、しかし裏の顔は、世の中の為にならない者を、針の一撃で闇の中に葬る仕掛け人の梅安。そんな時に仕掛けの標的として依頼が入ったのが、割烹料理屋の女将。しかし、その顔を見た瞬間に、梅安の心と顔に揺らぎがよぎる。その女将の正体と共に、梅安の幼き頃の忌まわしき過去が、明らかになっていくのだが…?

本作は、『池波正太郎の生誕100周年の記念作品』と言うことでの肝入り作品。時代劇として、当時の生活がリアルに描かれ、背景となる街並みも、CGで違和感なく差し込まれていた。食事シーンも、質素な食事ながらも、いかにも美味そうに描かれていたのも印象的。そして、映像の光と影や、スモークの演出を巧みに使うことで、不穏な空気観が伝わってきたし、胸を締め付けるような脚本も、なかなか良かった。

豊悦を引き立てる出演者も、また渋く、演技派の俳優が揃っていた。梅安の相棒・彦次郎に片岡愛之助、料理屋の女将には天海祐希が珍しく汚れ役を演じている。他にも、梅安の女として菅野美穂も艶っぽい役を演じ、高畑淳子も、いいおばちゃん振りを発揮していた。そして柳葉敏郎の元締め役も、なかなか堂に入った役どころ。鑑賞後に、若林豪も和尚役を務めていたのも知った。

個人的には、話題のキムタク信長より、ストーリーの面白さ、時代劇のリアルさにおいても、上まわったと思う。そして、藤枝梅安が我郷土『駿河の国の藤枝』の出であることを、梅安自身が披露してくれていたのも嬉しい限りだ。また、本作は2部作であるので、エンドロール後に、次作に繋がるオマケシーンがあるのでお見逃しなく。それを観ると、本編には登場していなかった大物俳優が、エンドロールに名前を連ねてあったことも納得する。

bunmei21
bunmei21さんのコメント
2023年2月14日

和尚さん役だったんですね。
昔の姿から、随分と歳をとりましたね。

bunmei21
大吉さんのコメント
2023年2月14日

私も若林豪気づきませんでした。エンドロールみてびっくり。

大吉