「皆さん、まだ帰っちゃだめですよ!」仕掛人・藤枝梅安 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
皆さん、まだ帰っちゃだめですよ!
中高生の頃、テレビドラマの「必殺シリーズ」を毎週楽しみにしていました。当時はテレビ時代劇も一定枠で必ず放映されていて、且つ、面白いものも多かったのですが、そんな中でも外連味もあり、お色気もあり、必殺技ありで金曜22時が待ち遠しかったものです。そんな私に7つ上の兄から「緒形拳の必殺仕掛人は面白かった」と教えられ、その後、NHKで放映された『真田太平記(85)』をきっかけに池波正太郎にハマっていきます。
89年にはフジテレビ系列で二代目中村吉右衛門による『鬼平犯科帳』が始まり、そして91年には渡辺謙の『仕掛人 藤枝梅安』が放送され「梅安」に魅了されます。さらに萬屋錦之介、山﨑努の『雲霧仁左衛門』や藤田まことの『剣客商売』など、「フジテレビ×池波正太郎作品」に今考えると非常に贅沢で良い時代だったと思います。
そして、今作に対しては多大な期待は持たないようにしていました。と言うのも、やはり原作への印象があり、さらには過去作との比較をせざるを得ず、当然気になるのがキャスティングです。「今回は豊悦に愛之助か」程度の前情報で土曜午前中の丸の内ピカデリーへ。客入りは、、相変わらず観やすいけど運営が心配になる「まばら」状態です。正直、そこを狙っての当館でもあるのですが。。
映画が始まり、まず挨拶代わりの一つ目の仕掛け。うーん、そう行きますかね?とちょっと心配になりつつ、また、知っているキャラクターなのに見慣れない役者の演技に警戒しながら観続けます。そんな私を物語に惹き込んだのは天海祐希さん。姐さん、やっぱカッコいいっす。
そして盛り込み過ぎてスペシャル感否めないながらも、なんとかまとまりを持たせた展開の脚本に、最早、豊悦=梅安に違和感など感じず、さらに中盤以降は(個人的に)泣けるシーンも幾つか。
池波先生にとって、長編シリーズで一番苦労したのは稼業が殺し屋である主人公の『仕掛人・藤枝梅安』だったそうで、針医者という善行でバランスをとりつつ、苦しみながらも「今年も死ななかった」と生き続ける梅安に染み入ります。
また、今作も池波作品に欠かせない「料理と飲食シーン」にお腹が(本当に)鳴りやみませんでした。もっと湯豆腐も観たかったけど、彦さん、京都で楽しむかしら?
最後、エンドクレジットを観ていて「出演順」と配役を見ていくと、最後に「あれ?彼はどこで?」という名前が。するとエンドクレジット後にシーンが再開します。そうそうこれは2部作の第1部。で、そこに出てきたのがその方、第2部の中心人物の一人。なるほど、道理で。第2部も必ず劇場で観ます!