「本格的な時代劇を観た!という満足感を与えてくれる一作」鬼平犯科帳 血闘 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
本格的な時代劇を観た!という満足感を与えてくれる一作
『仕掛け人・梅津梅安』(2023)と同じく、池波正太郎生誕100周年の記念企画作品です。
『梅安』の豊川悦司が演じる梅津梅安像は、どこか現代味を漂わせていて、「新しい時代劇」という印象が強かった一方で、本作の10代目松本幸四郎演じる長谷川平蔵は、どっしりと構えた鷹揚な人物像で、その堂々たる演技とせりふ回しが、時代劇らしい時代劇という印象を与えています。
というより、かつての「鬼平犯科帳」のテレビシリーズがジプシー・キングスの楽曲をエンディングに採用するなど、時代劇の新機軸を打ち出していたことを考えると、本作の王道的な作りにはむしろ新鮮味を感じるほどです。
過去に背負った業が逃れがたく人生に付きまとう悲哀の物語はいかにも原作の筆致であって、そこに軍鶏鍋や「うさぎの忠吾」の軽妙な言動など、「鬼平」の定番的要素をうまく滑り込ませているので、原作ファンにも満足度の高い一作ではないかと思います。
大道具、小道具などの美術もスクリーンで観るほどに満足感が高まる水準で、こうした画面作りの隙のなさも本格的時代劇という威容を確かなものにしています。一方でセットの背景には巨大LEDスクリーンを用いるなど、最新の撮影技術も積極的に導入しており、古典的な印象の強い外観とはうらはらに、実は挑戦的な映画でもあります。
「時代劇専門チャンネル」が制作に携わっているんだけど、本作はぜひ映画館で鑑賞を、と強調したい!これを機に時代劇に挑戦したい、という方にもおすすめです。
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