「高齢化」鬼平犯科帳 血闘 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
高齢化
すごく時代の流れを感じる。
とても丁寧な展開で、見やすいのだと思われる。時代劇チャンネルに登録している人がターゲットらしく…そういう意味では的を得た作りなのだろう。
手掛けているスタッフも京都の面々が多いようにも思うし、歌舞伎由来の口調も味わい深い。
ただ…殺陣に迫力がない。
緊迫感を表現する何かが足りない。
若さ、なのかと思う。
挑戦的なアングルや実験的なアングルがある訳でもなく、驚きが少ないとでも言うのだろうか…要するに食い足りないのだ。最後の料亭のシーンなんかは、絶好の長回しが出来るシチュエーションなわけだ。1対多数、追い詰められていく平蔵…でもやらない。出来ないのかやらないのかは知らんけど、ない。
引き絵があるにはあるが、スッカスカだ。
もう…冒頭の昔と今の平蔵が入れ替わるカットとかみて、ズッコケそうになった。
カメラ前を交差する緊張感のカケラもない段取り重視の背中はどうだ?あんなカットで誰が喜ぶと思っているのか?子供騙しでないのなら、長らく時代劇から離れているいた高齢者くらいしか喜ばないんじゃなかろうか?このカットに感じた「アクションの偏差値は低いんじゃなかろうか?」って疑念は殺陣が始まるごとに確信に変わっていった。
担うものが違うのかとも思う。
時代劇ファンが安心して見れる時代劇。そんなコンセプトなのかもしれない。この作品をもってして新規を開拓するような意図はないのかもしれない。
だから、ゆっくり見れる。
特に、お政とか九平のエピソードや背景なんかは秀逸で、お白洲で裁きを言い渡される九平には、つい絆されてしまう。
長谷川平蔵の人柄なんかもとても親しみやすい。
こういう作品を心待ちににして客層は必ずいる。ただ、今の若い人への訴求力には乏しいのかと思う。
ドラマも人物もとてもよく理解できた。
時代劇チャンネルでの放映を楽しみに待つには申し分ない出来だと思う。
アナログ色が強かった京都にもCGによる表現が加わったようにも思う。屋根から飛び降りてくる柄本明のカットには感心してしまった。芋酒屋で展開される芝居も見応えあるし、惹き込まれる。志田さんが端っぱなキャラを好演してて◎
お政を演じる中村さんも好感触だ。
ホント、殺陣だけが残念だった。
アレが現状なんだろうか…。
昔、見てた時代劇にはもっと迫力ある殺陣があったように感じる。記憶を美化してるだけだろうか?
それとも本作にはソレが必要ではなかったのだろうか?何を見せてくれるのか楽しみだった本作。
退屈ではなかったけれど、チャンバラに熱くなることはなかった。
凹む。
時代劇自体が撮れなくなる事はないのだろうけど、チャンバラはもう撮れないんだな。
…悔しい。