「タイトルの意味が深い」鬼平犯科帳 血闘 ゆいさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルの意味が深い
原作にほぼ忠実なストーリーで安心?して観られる鬼平の新作。
『必殺シリーズ』みたいな『ファン置いてけ堀の脱線』がちょっと心配だったがそれはなかった。
暴れん坊や黄門様のような勧善懲悪ではなく、ちょっと考えさせるようなストーリーが鬼平の魅力。
今回は悪の親玉が父親(悪人)を鬼平に殺されて逆恨みするというお話。
親玉は押し込み強盗で、殺しはやらないはずだったのが、鬼平に父親を殺されてからは人殺しもするようになる。
難しいところだね。
きっと親玉父は押し込み強盗はしても殺しはしなかったんだと思うが、鬼平に殺されてしまった。
まぁ、『ホストに貢ぐために男を騙したのは親に虐待されたことが原因』とか言っちゃう『なんとか女子』レベルの逆恨みではあるが、悪人でも子供にとってはたったひとりの父親だからね。
殺す必要はなかったと現親玉が鬼平を恨む気持ちは、ちょっとわかる。
もちろん鬼平は正当防衛で罪はないのだが、親玉父を鬼平が殺さず、奉行所に引き渡していれば、死罪は免れていたかもしれないからね。そうすれば、現親玉に殺された多くの被害者は出なかったかもしれない。
タイトルが『決闘』ではなく『血闘(血統)』ってのはそういうことなんだろうな。
『俺は人殺しだ』という鬼平のひと言は深い。
映画はいい出来だった。
敢えて、気になったところを挙げるなら、幸四郎が役に合っていないところかな。
ひと言で言えば『アクが弱い』
鬼平は悪人を取り締まりためなら、犬(スパイ。もちろんバレれば殺される)を使うし、悪人に対しては殺しも辞さない、言わばダークヒーロー的な側面があるが、幸四郎だとどうしても良い人に見えてしまい、それを感じない。
幸四郎の演技はもちろん上手いし、不満を感じたわけではないのだが、イメージ的には『(同じ歌舞伎役者なら)團十郎の方が合ってたかも…』と思ってしまった。