「【”誰にも心を開かない女子高校生の、ある打算から芽生えた禁断の恋” 恋や進路に悩む多感な高校生男女を描いた、静謐で美しき、ビザール・ラブ・トライアングル・ストーリーである。】」ひらいて NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”誰にも心を開かない女子高校生の、ある打算から芽生えた禁断の恋” 恋や進路に悩む多感な高校生男女を描いた、静謐で美しき、ビザール・ラブ・トライアングル・ストーリーである。】
ー 原作が”綿矢りさ”さんだから、一捻り半はある映画だろうと思いながら、劇場へ・・。
で、その通りの面白き映画であった・・。ー
◆感想
・愛(山田杏奈)は、同級生のたとえ君(作間龍斗)に高校一年の時からずっと恋していながら口にせずに過ごすが故に、少しひねくれてはいるが、一型糖尿病を患う美雪(芋生悠)のダンス練習中の変調にいち早く気付き、低血糖状態で倒れていた美雪にジュースを口移しで飲ませる。
ー 愛が、周囲を良く見ていて、良心ある女性だという事が、一発で分かる。
口移しでジュースを飲ませるシーンが、後半、彼女と美雪の、心持の変化に繋がっていく事を、暗示している。
良い導入である。ー
・愛が、”たとえ君に恋人がいるのでは・・”と気付き、”恋人からの”たとえ君宛ての手紙を盗むシーン。
ー 遊び仲間と共にではあるが、あの教室侵入シーンは危険だよ。けれど、それが愛のたとえ君に対する強い想いを表しているのである。ー
・そして、愛がたとえ君の恋人であった美雪に“打算から”近づいて行くシーン。
ー 愛は、略奪するもの・・。そのためには手段を選ばない。
小悪魔的な蠱惑さを漂わせた愛の姿。ー
・それまで、孤独だった美雪が、初めてできた同性の友人、愛に惹かれていくシーン。
二人で映画を観たり、カラオケに行ったり・・。
ー それは、美雪にとっては、嬉しいよね・・。例え、愛の打算の行為だったとしても・・。ー
・けれど、二人の間は徐々に、徐々にエスカレートしていく。愛は、美雪のピュアな姿に自分にない生き方に惹かれたのではないか、と私は思った。
ー ドキドキしながら、観てしまいましたよ・・。エロティックすぎます・・、お二人とも・・。
特に、「ソワレ」での芋生悠さんの逃避行が印象的な姿を覚えている者にとっては、彼女の”受け”の演技と山田杏奈さんの”攻め”の演技に・・。ー
・愛の表情は暗くなり、言動、行動がドンドンオカシクなって行くシーンの数々。
ー ”策士、罠に嵌る”ではないが、”打算だった筈の行為が、本当の愛に変わっていくのであるから、当然であろう。そして、愛はたとえ君も好きだし、美雪だって好きなのだ・・。ー
・愛が到頭、たとえ君に告白するも、キツイ言葉で拒絶されるシーン。
ー あれは、辛いよなあ・・。3年間好きだった男から
”上から見下ろした態度の君は嫌いだ!”などと言われてしまっては・・。
上から見下ろしているふりをしているだけだったのに・・。ー
□今作の少し、残念だった点
・たとえ君と、蒲鉾職人の父親(荻原聖人)の捻じれた関係性が上手く描かれていない点。
たとえ君の母親が関係しているのは、
”地頭が無い、女の子供だからな・・”
と言う父親のセリフから類推出来るのであるが・・。
けれども、愛が愚かしき”たとえ君”の父親に見舞った渾身のグーパンチは、良かったなあ・・。
<誰にも心を開かない愛の心を開いたのは、”打算で近付いた”ピュアな心を持つ愛する男の子の秘密の彼女、美雪だった・・。
愛と美雪のレズビアンシーンはドキドキしたが、二人の距離と想いがドンドン近づいて行く事を示すシーンであり、静謐な美しさを湛えていた。
愛が、たとえ君と作った折り鶴を桜に見立てた卒業製作も含め、美しくも悩める男女を描いた、ビザール・ラブ・トライアングル・ストーリーである。>