劇場公開日 2021年10月22日

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「【努力賞】」CUBE 一度入ったら、最後 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0【努力賞】

2021年10月31日
iPhoneアプリから投稿

オリジナルの「CUBE」は、あのCUBE自体が、社会システムを表象し、その中で生きる人の不安や軋轢を表しているように思えた。ただ、その中で、意志を疎通させ、協力してソリューションを見出すことが出来るのではないのかと云ったことも示唆していたように感じる。

これに対して、日本リメイク版「CUBE」は、閉じ込められる人々の人物背景を少し掘り下げたり、推測できるようにしたりして、CUBEの中で、トラウマと闘ったり、抱える怒りをぶつけたり、或いは、自分本位な姿勢から抜け出せない姿から、社会の歪みで足掻(あが)く人の姿を見せたかったのだろうか。

しかし、その試みは、あまり成功しているようには思えない。

なぜなら、オリジナル版は、個々が役割を果たすことによって構築されたCUBE自体が、作中でも語られる”不可抗力”という思わぬ結果をもたらすというフレームワークを提示して、僕たちの生きる世界の社会システムを想起させたのに対し、このリメイク版には、それがないからだ。

オリジナル版では、CUBEとは一体何なのかが、テーマの一部を構成していたのだ。しかし、リメイク版には、それが足りない。

オリジナル版も、リメイク版もステレオタイプな登場人物はいるが、それは、社会をデフォルメする際には必要なのだと思う。

やはり、CUBEとは一体何なのかを想起させ、登場人物の背景を中途半端に詳しく説明せずに想像させる方が、得体の知れないCUBEとの関連が逆にマッチするのではないのかと思うのだ。

因みに、杏さん演じる甲斐の存在は、物語の示唆するところを別の方向に向けてしまったように思う。

最後になるが、僕だったら、時生さん役の死体や肉片は、トラップCUBEのチェックに使うよな。

でも、時生さん、冒頭で笑っちゃってごめんなさい。

まあ、努力の足跡は伺えるので、努力賞というところ。

ワンコ