「日本版でマイルドにした結果、理解難易度が高め(参考知識を本文に入れてます)」CUBE 一度入ったら、最後 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
日本版でマイルドにした結果、理解難易度が高め(参考知識を本文に入れてます)
今年146本目(合計210本目)。
2月か3月か、CUBE系かな?と思って見に行った「プラットフォーム」がアレだったので(ただ、趣旨は理解できる)、本格版というか正統派のこちら。
低評価が多いですが、その一つの理由に、日本版にリメイクしたときに、一般の視聴者の数学(物理)の知識を前提にしてパズルの難易度を下げたものの、一部は原作のままになっているようなのか、とにかく何を言っているのか、理系出身レベルでないときつい部分があるんじゃないか…と思えます。
作品自体もややグロテスクな部分が多かったり、謎な描写(多くの方が書かれている内容。趣旨のわからない登場人物が出る等)があるのは気にはなりますが、それより「一般的な視聴者の理解度を前提にして作ったらかなりマニアな内容になってる」というのがかなりあるんじゃないか…と思います。
多くの方が書いている通り、数学・物理的パズルを前提にするものですので、その知識もないと厳しいです。かつ、日本では高校数学から行列も消えてひさしいので(その代わりにまた複素平面が入ってる)、理解の前提となる知識はかなり高く、その結果何を言いたいか推論して見ないと???状態になってます(テネットほどではないにせよ、そこらの理系ネタ映画に比べるとかなり高い)。
採点に関しては下記の通りとしました。
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(減点0.5) やはり、謎の展開が多いことは傷になるんじゃないか…と思います。私は原作は見ていませんが(原作はもっと数学的なパズルの難易度が高かった模様)、その原作でもあったいくつかのトラップ(罠)がこちらではなぜかマイルドになっていて(パズルをマイルドにするのは理解できる)、この手の映画でそれはかなりの減点は免れないんじゃないか…というところです。
ただ、22日(金)の週はなぜか放映数が少ないので、本作品か、先週から引き続いて「最後の決闘裁判」か、あるいは「007」か…という状況にはなりそうです。
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・ わかりにくいシーン
▼ 「デカルト座標」
→ 中学校からおなじみの平面座標のことで、原点を中心に(x,y)で表すのが2次元、今回はCUBE「立方体」ですから、3次元の(x,y,z)となります。ただ、私たちが住む世界は3次元ですから、どこかを中心点にとって、x,y,zは任意の実数(負数も含む)になりますが、ここでは部屋の数の話になるので、x,y,zが取れる数は「正の整数」のみです(原点(0,0,0)を含む)。
この話はさらに行列につながったり、ベクトル空間論(線形代数)につながる内容なのですが、当然そこまでやると無理になるので、妙にマニアックな語彙「だけ」出てくる状況となっていて、かなり理解難易度は高いです。
※(参考) 私たちが住む空間は3次元空間です。「3」次元というのは、どんな座標(x,y,z)も、 (x,y,z) = x(1,0,0) + y(0,1,0) + z(0,0,1) で書き表すことができ、この3つ(縦横と奥行き)は全て独立している(数学的には線形独立といい、この3つをこの3次元空間の基底という)ことによります。
▼ 物を落として、高さを推定するシーン
→ 確か「落下音が聞こえたのが●秒くらいだったから、高さは×mくらいだろう」みたいな感じで出ます。
物理的には自由落下運動というもので、高さ h = (1/2)gt^2 h:高さ(m)、g:重力加速度(約9.8m/s^2)、t:時間(秒)) から求めているわけです(ちなみに、映画内ではなぜか電卓もないのに小数点以下2位程度まで正しいことを述べてます)。
※ 当然、この議論をするには、「映画内の施設は地球の中にある」ということが大前提になります(月や火星では重力加速度が違います)。
※ 厳密には、落下した後にその音が跳ね返る時間を加算する必要があり(音速は 340m/s と遅いです)、そうすると1次方程式を解く必要があるので、到底「そんな計算どこでやってるんですか?」ということになります。
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