「パンパンに太ったラッセルが怖い!」アオラレ shunsuke kawaiさんの映画レビュー(感想・評価)
パンパンに太ったラッセルが怖い!
人生はストレスの連続だ。仕事で辛い思いをし、家族は時に悩みや困難に寄り添ってくれるどころか、突き放したり煙たがったりして人を孤独や絶望に追いやる。それがMAXに達したのが、この映画のラッセル・クロウ(苦労)。離婚や失業で精神不安になり、鎮静剤をがぶ飲みして身も心もボロボロ。
医者に処方してもらった中毒性のある精神安定剤を過剰摂取して精神が崩壊する人がアメリカにはたくさんいると聞くが、まさにそんな感じ。
日雇い仕事でお金がない中、離婚と財産分与、母親の介護、子育て、働かない弟とその彼女をお金がないのに家に住まわせて面倒をみているカレン・ピストリアス扮するレイチェル。ラッセル・クロウとタイマンをはれるくらいのストレスを抱えている。
そんなある日、ボロボロのボルボで息子を補修授業のために学校に送り出してから日雇いの美容院に向かおうとしたら、休日のため道路はあちこちひどい渋滞。ストレスが瞬間的にボルテージを上げてしまったところに、出会ってはいけない奴が青信号なのに交差点で立ち往生していた。
ストレスがストレスを生み、積み重なった結果、パンパンに膨れたストレスは全く関係ない人への八つ当たりという道をたどり人を命の危険に導いていく。ストレスがMAXの人は全く関係ない人にタイマンをはりたがる。特に車の運転中は、それがよく起こるし、日本だけでなくこの映画のようにアメリカでも起こるし、はっきり言って世界中で起こっているはず。
そして、この映画でもっとも適切にストレスを表現しているものといえば、なんといってもラッセル・クロウの尋常じゃない出具合の腹。パンパンになった痛々しい腹。この映画の役のようにストレスが原因でやけ食いしたからこうなったようにしか見えない。(役作りで太ったわけではないと思うけど、見事にこの映画にマッチした太り方)
この映画は、はちきれんばかりのストレスでぶくぶくに太った狂人という珍しいキャラクター像を生み、狂人像に新境地を切り開いたといえる。
ラッセル・クロウの腹がストレス社会の全てを物語っている。