「みっともないおっさんを延々と鑑賞できる」レミニセンス kekeさんの映画レビュー(感想・評価)
みっともないおっさんを延々と鑑賞できる
ヒロインが何を考えていたかがもう普通すぎたというか、もちろん普通が悪いわけではないが。
あれなら真相は描写せず愛を貫く道筋に注力して、主人公が雲を掴む思いでもがき続け、周りから見放されても幸せな夢を繰り返し見続ける。といったインセプションのもう一つのエンディングみたいな展開でも良かった。が、そうなる余地は無い。
格闘や取引や別れを含めて何もかも「ありきたりの寄せ集め感」が漂う。
過去に溺れて眠っていたい主人公が果たして爪を生やして暴れまくるこの俳優で良かったのだろうか。
生きる行為において危うさを匂わせるキャラクターでも良かったと思う。
家族に逃げられた酔っ払い刑事のような中年男が主人公では、哀しみや虚しさより先に自業自得という言葉が滲み出る。
生きたいように生きろというメッセージがあるかもしれないが、自分には伝わらなかった。
答えを手に入れるまでに犠牲にしたものが無いからだ。
仕事や仲間は確かに失っているが、その失い方が非常におっさんくさい。後悔するシーンも無い。
そうだ、こいつは現実生活に対する後悔をしていない。なんで開き直っているんだ。
それでいてミステリアスな美女がやってくるからコメディと認識してはいけないようで、困ったものである。
水没都市の映像は良かった。敵がピアノごと落ちていくシーンが特に。
で、その敵を助けて殺されそうになるという陳腐な展開がダメすぎた。
おっさん同士の小競り合いと美しい水中映像がマッチしていない。
ある意味で教訓になりそうな、ならなさそうな、そんな映画だった。