「アンソニー・ホプキンス級の名優は変形する。」ファーザー 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
アンソニー・ホプキンス級の名優は変形する。
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もうアカデミー主演男優賞も当然でしょうよと納得するしかない、アンソニー・ホプキンスの素晴らしさ。いけ好かなくて、威圧的な年寄りが、恥ずかしげもなく若い娘の前ではしゃいで見せたり、クソな言動を繰り返したり、まあ、自分の父親だったら絶対に見たくなような姿を、延々と娘の前で晒し続ける。なんとイタくて哀しい姿か。そして、それこそが老いであるとでも言わんばかりの容赦ない演出にもう釘付けである。
認知症側の主観から描くというトリッキーな形式も、映画として非常に上手くいっていてとても面白いが、やはりアンソニー・ホプキンスの演技に一番圧倒される。これ、まだ観てない人に言うと怒られそうなんですが、終盤で『千と千尋』の坊みたいになるシーンがあるじゃないですか。顔がまっかになって、身体全体が大きく膨らんだ大きな赤ん坊みたいにあって、まさに坊みたいに見えるんだけど、その後すぐに元のサイズの老人に戻る。
これって目の錯覚かもですけど、ホプキンス級の名優になると身体の大きさまで自在に変えられるのかと思いましたよ。そういえば『沈黙 -サイレンス-』でイッセー尾形が急速に身体しぼんで小さくなるという驚異的な演技をやってたけど、もうイッセー尾形やホプキンスのレベルになると、人智を超えてくるのだなと目を瞠りました。
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