「任務は生き延びること」アウトポスト kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
任務は生き延びること
何のために戦争に参加しているんだ?という疑問が兵士の中からももたらされるほど目的さえも見失ったキーティング前哨基地。山の中のジグザグ道を車を移動するのもタリバンよりも恐ろしいと言われていた。
毎日のようにタリバンのゲリラ部隊から攻撃を受け、いつか総攻撃を食らうに違いないという中、兵士たちは恐怖を克服するためなのか猥談やゲームに興じている。とにかく狙われたらひとたまりもない、険しい山に囲まれた谷底の基地。なぜこんな場所に?という疑問に不満を持ちながらも粛々と任務をこなさなければならないのだ。
そうした兵士たちの日常を描きつつも恐怖心を煽るように戦争の愚かさを訴え、絶対にこの基地に赴きたくないと思わせる描写が大半を占め、激戦の末ではやっぱりアメリカ万歳といった描写で締めくくる。なんて勿体ない作品。名前が次々と表示され、すべて名もなき兵士で終われば立派な作品になったであろうに、多くの生存者が勲章を与えられることによって亡き戦友を称える鎮魂歌になってしまったのが残念だった。
2009年といえばオバマ政権が誕生した年。テロとの戦争も終わらせてくれるかと期待させながらも、中東やアフガンの戦争は終わらなかった。この映画にしても、反戦の面は見せながらも戦争の愚かさまでは描き切れなかったようだ。むしろ終盤の戦争のヒーローたちを称えることによって、わけがわからなくなりました。
そんな中でもリアルで迫力のある爆撃や白兵戦には寒気がするほどだったし、臨場感は凄かった。そしてエンドロール中の兵士たちのインタビューでも語り継がなければならない事実というメッセージが届いてくる。しかし、結局は米兵の死者は8人。タリバン兵の方がもっと多く死んでるのだ・・・ベトナムと同じか!そして、驚いたことに生存者の一人が本人役を演じているという事実。見てない人に教えたくなるエピソードだな・・・