「『ロング・キス・グッドバイ』に感じたノワール感に満ちた手堅いB級アクション」AVA エヴァ よねさんの映画レビュー(感想・評価)
『ロング・キス・グッドバイ』に感じたノワール感に満ちた手堅いB級アクション
エイヴァ・フォークナーはアルコール依存症から立ち直って陸軍入隊を経て今は秘密組織に属する有能な暗殺者となっていた。鍛え上げられた身体能力と美貌を巧みに使った暗殺スキルは上司のデュークからの信頼も厚いが、彼女は殺害の間際にターゲットになぜ殺されるか知っているかと尋ねるようになったことが組織内で問題視されており、デュークの上官の娘カミーユが密かにエイヴァを尾行し会話を盗聴していた。サウジアラビアでドイツ人将校を暗殺する指令を受けたエイヴァは容易くターゲットに近づくことに成功するがある些細なミスから銃撃戦となってしまう。辛くも生還したエイヴァはそのミスが仕組まれたものではないかと疑い、デュークを問い詰めるが・・・。
『ゼロ・ダーク・サーティ』で数多くの主演女優賞を受賞したベテランのジェシカ・チャステイン主演作ながら、共演陣がジョン・マルコヴィッチにコリン・ファレルということで仄かに典型的なB級感が漂いますが、手堅く仕上げられたスリリングなアクションシーンが不安を軽快に払拭してくれます。実際製作費35億円程度と小規模なのでド派手なシーンは皆無ですが、その分エイヴァが引きずる過去、家族や元恋人とのすれ違いといったドラマ部分が丁寧に描写されており、全然作品規模は違いますが25年前のアクション大作『ロング・キス・グッドバイ』に漂っていたノワール感に満ちた陰影を帯びた渋い作品となっています。
出番は少ないもののデュークを演じるジョン・マルコヴィッチの存在感がとにかく圧倒的なので、その上司サイモンを演じるコリン・ファレルの小物感が際立っているのがなかなか面白いです。あと全然期待していなかったのですがカミーユを演じるダイアナ・シルヴァースの美しさも際立っていました。どこかで見た顔だなと思ったら『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』のホープ役でした。
ちなみにエイヴァの母を演じていたのがジーナ・デイビス。『ロング・キス・グッドバイ』の主演だった彼女の出演も前述のノワール感を盛り上げていましたが、バリバリのアクション女優として名を馳せた彼女が老いた母親役を演じていることに25年の月日の長さを痛感しました。