「戦場のメロドラマみたいな作品」レッド・スネイク 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
戦場のメロドラマみたいな作品
確か高校で世界史を習ったときに、イスラム教について「右手にコーラン左手に剣」といって「改宗か死か」と迫ることで布教したと教わった。その後、イスラム教の布教においてそういう事実はなかったということになっているらしいが、シリアのイスラム国やアフガニスタンのタリバンなどのイスラム原理主義者の行動を見る限り、イスラム教は寛容の精神とは程遠い気がしてくる。
キリスト教にも十字軍によるイスラム教徒の虐殺があった。ブッシュ親子の湾岸戦争、イラク戦争も、イスラム教徒に対する武力攻撃という見方ができる。しかし申し訳ないが、テロリストという言葉で思い浮かぶのはアラブ人の濃い顔である。
さて本作品であるが、テーマはいくつもある。イスラム原理主義のイスラム国による虐殺と強奪があり、女子供に対する監禁と蹂躪と強制がある。それは宗教のせいなのか、民族主義のせいなのか、あるいは反アメリカ感情なのか。そして女性部隊にも存在するナショナリズム。
それらの問題が命の瀬戸際である戦場で顔を出すようなスリリングな展開を期待していたのだが、実際の映画は、はっきり言ってテンポが悪くてかなりダレる。演出にメリハリがないから、戦闘シーンで息を呑むこともない。戦場のメロドラマみたいな作品だ。せっかくのテーマと題材がもったいないと思う。似たような作品にゴルシフテ・ファラハニが主演した映画「バハールの涙」があるが、本作品はその足元にも及ばなかった。
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