ミナリのレビュー・感想・評価
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うちの母にも見せたい
すべてのおばあちゃんへ捧ぐ、、、
いい映画でした〜。
私の祖母を思い出しました。
そして孫大好きでちょっぴりお節介で余計なことをしがちな私の母にも見せたいと思いました。
いたずらのくだりは最高♡
そして、スティーブン・ユアン、焼くよねー!
しみじみしました。
アカデミー賞とかゴールデングローブ賞という大きい期待をひとまず置いといて観て正解。
是枝監督作品っぽい、割とこじんまりした話です。
おばあちゃんも気取りがなく、いや今回は結構品がないところも(笑)、でも悪戯にも寛容なおばあちゃん、分厚い封筒用意してる母親らしいところもあって、間違いなく樹木希林さんを彷彿とさせるし(笑)
最後、ミナリがあって良かった。
5時間かけて明日は摘みたてを納品するのかな。
A24作品
A 24作品と冒頭わかり最近よく期待して観た。
ノマドランドと同じ日に見たので、時代は違えどトレーラーハウスの話で、これも日本にはないアメリカの生活文化で面白い、
ペースにはキリスト教もアメリカ人韓国人を結ぶものとしてあるのもなかなか日本とは違う。移民社会のコミュニティとしてあつまり助け合い祈るところ、アメリカの小さな町や村でコミュニティへの入り口ともなる教会、戦争で傷つき一人神と向き合う男。
韓国からの移民家族の日常生活が丁寧に描かれ、小さな事件大きな事件家族として会話ぴよこ工場での会話、全てに気持ちが集中し、意外にもおばあちゃんが大胆さを発揮しておばあちゃんらしからぬ、アメリカに来ても変わらず自分を表現仕切る素晴らしい人物で、そんなおばあちゃんも、成功のため信念持ってお父さんも、気持ちが揺れるお母さんも、可愛い子どもらも、みんなみなり(せり)の逞しさ。ミナリは水辺で、優しいひとの手と気持ちを受けて青々と生い茂り繁栄する。
観てよかった、心に残る作品。
共感まで至らず
80年代アメリカ南部、この土地へ移り住むことになった流れが弱いまま始まり、そこで成功を夢見る男と家族の物語なんだけど、この家族への感情移入や共感を持てないまま物語が進み、そのまま終わる感じです。
私と物語が最後まで平行線を辿る感じです。
春から夏に掛けての期間しか描いてなく、移民として成功でも失敗でもいいから、もっと長い期間の家族を描いて欲しい作品でした。
葛藤に解を示してくれる映画
1980年代、韓国では生きていけないと、夫婦で渡米し、子をもうけ、各地を転々としたのちに農業で成功することを夢見てアーカンソーにやってきた韓国人一家。
冒頭で父が子に、
俺たちは役に立たなければならない、
と一服しながら言う。
当時、移民が浸透しつつあったのかもしれないが、他所からやってきて、いわば人様の国で身一つで生きていくということは生優しいものでは決してなかっただろう。この国にやってきたからには役に立たなければならない。そして、役にたつだけでなく、成功も収めなければ。
役に立たなければという呪いを自身にかけて必死にアメリカで根を張っていこうとする移民一世の葛藤が非常に美しく瑞々しく描かれ、見入ってしまった。
この役に立たなければ、という呪いは父だけが抱えているものではない。
仕事を終えてもなお家でヒヨコ選別練習を行う母も、この苦労一家のサポートとして韓国から呼び寄せられ、後に脳卒中で倒れる祖母もまた、役に立たなければと葛藤する。
この一家の物語はそんな呪いが引き金となって起こる事件によりクライマックスを迎えるが、映画のタイトルであるミナリ(韓国の芹)がそれを解く鍵であったように思う。
劇中、脳卒中で倒れる前の祖母が韓国から持参したミナリの種を植えようと子に話すシーンがある。ミナリはどこにでも生えて、多様な食べ方があって素晴らしいと。
そして、父の農作物がやっとの思いで収穫に至った一方で、韓国産のミナリは手を加えることなくアーカンソーのとある河辺で鮮やかに茂っていったのだ。
ミナリは「この地で役に立たなければ」という呪いの対極にあり、
「生きる場所は関係はない。人は選択に応じて多様に柔軟に生きていくことが可能であるし、それは素晴らしいことだ」と解を示しているのではないかと思う。
ラストは腹にすとんと落ちる描写で非常に良かった。欲を言えば、もう少しこの一家の物語を見ていたかった。
余談だが、私自身もかつて外国への移住を夢見たことがあり、失敗して、訳あって今は縁もゆかりもない土地に住んでいる。
ここで根を張れるかどうか定かではないが、かといって故郷に帰るわけにもいかないので意地になるときがある。
ミナリはそんな自分の中にすっと入ってきて、多様に、柔軟に生きよと示してくれた気がする。
最後になるが、この映画に出会えてほんとうによかった。素晴らしい時間をありがとう。
期待した割には…
表層的で深みが感じられない平坦な映画。韓国移民の話だから、当然アジア系への人種差別の問題があるにもかかわらずそこには一切触れず家族だけに焦点を合わせた内容。一人一人の人物の心理もどっち付かずで、面白味に欠ける。かなり以前にフジテレビのドラマで古谷一行主演の「オレゴンから愛」というこの映画を彷彿させる日系移民のドラマがあったが、そちらの方がストーリーも上手く描けていた。この作品が既に何らかの賞を獲得したのは時代なのかもしれない。非白人的な視点で、人種の多様性を意図しやすいキャスティングと背景に、ここ数年アジア系の作家に注目が集っている今のタイミングが重要なのかもしれない。アカデミー云々が騒がれているようだが、果たしてそれに値するのかどうか…疑問が残る作品だ。ミナリ(芹)という題名も雑草よろしくどこでも育ち、金のある無しにかかわらず、広く誰もが口にする野菜という逞しさ、強さを象徴しているのだが、それもお座なり程度である。
よかった
懸命に収穫したものが燃えてしまってつらい。結果的に子供の健康によかったのだけど、ママさんは「私たちより仕事をとった」と言って怒っている。パパさんの選択で子どもの健康がよくなるわけだし、そこは主張の食い違いなのでお互いさまとは言えないのだろうか。ミナリで儲けが出るのなら、苦労して農業しなくていいので、それまでの苦労はなんだったのかという気持ちになる。
我儘家族
アカデミー賞作品賞受賞と聞き鑑賞。
はっきり言って面白くなかったです。タイトルが芹と関わりがあるとかあんま分かりません。
最初から父親の身勝手ぶりがいきなり飛び出します。子供や妻のことは考えずに自分の楽園を作りたいとかなんとか、身勝手が先走っているあたりステレオタイプな父親だなと思います。
おばあちゃんもあまり好きではないです。全体的に口は悪いし、色々いらないお節介をはたらくしで見ていて面倒でした。そりゃ小便提供するよなって笑
家屋を燃やしたのもイマイチ分かりません。おばあちゃんどこか違う方向へ行こうとするし、最後まで?が付き纏う作品でした。
君の名はのハリウッド版は成功することを願っています。
鑑賞日 3/22
鑑賞時間 12:10〜14:15
座席 D-6
いい話なんだけど、なんか昭和のドラマみたいだったなぁ。
アメリカ南部にあるアーカンソー州へ、農場主になることを夢見て移住してきた韓国人一家を襲う困難と家族模様が描かれたヒューマン・ドラマ。
主人公である家長のジェイコブ・イーを演じたのは、ドラマ『ウォーキング・デッド』シリーズや『オクジャ』のスティーヴン・ユァン。本作の製作総指揮も務めている。
スティーヴンと並んで製作総指揮を務めているのは、『セブン』『オーシャンズ』シリーズで知られるオスカー俳優のブラッド・ピット。
第78回 ゴールデングローブ賞において、外国語映画賞を受賞!
第36回 サンダンス映画祭において、グランプリと観客賞の2冠を達成❗️
今年のアカデミー賞で6部門にノミネートされている超話題作。
安心と信頼のA24と、ブラピ率いるプランBという鉄壁の製作体制。
この製作陣でアジア系移民を扱うなんて、完全にアカデミー賞を獲りにきている映画やん。
全米で大絶賛されている映画なんだけど、個人的にはフツー。
アジア系移民を扱ったA24作品なら、2019年の映画『フェアウェル』の方が好きだなぁ。
勿論悪い映画ではない。
「夢を追うことには犠牲が必要だ」ということは誰しもが頭では分かっていることだろう。
しかし、その本質を理解しているのか?夢という甘美な響きの裏側に、思い描くエデンの楽園の裏側に、音もなく忍びよる蛇の存在とその激烈なまでの残酷性を本当に理解しているのか?ということを突き付けてくる一作。
そして、個人の努力ではどうすることも出来ない、神のみぞ知る領域があるということを伝えてくれる映画。
全体的に非常にキリスト教的な宗教観が強く打ち出されており、またそのほとんどが移民であるアメリカ人ならば絶対に共感するところがあるのであろう移民の困難が描かれているので、まぁアメリカ本国では受けるだろうな、というのが素直な感想。
勿論日本人にだって、イーさん一家の苦労には共感するところがあるし、特に農家の人、何か夢を追っている人には強烈に刺さるかも知れない一作である。
走ることを止められていたデヴィッドくんが最後に走りだすという展開や、ジェイコブが移住初日に提案しスルーされてしまった家族での雑魚寝が、クライマックスになって達成されるという展開は、綺麗に伏線を回収しており、ちょっと優等生すぎる感じもあるにはあるけどもお見事。
でもねー、やっぱりつまらないんですよ。
全体的に暗すぎる。個人的に暗い物語って苦手。
次から次へと悪いことが起こっていって、結局最後まで酷いことが起こりっぱなし。
まぁ最後には一筋の希望が残るわけだけど、それにしたってあそこから盛り返すのは相当キツいっすよ。イーさん頑張れ。
何というか、終始気が張っていて、抜きどころがない作品という印象。
倉本聰とか橋田壽賀子とか、一昔前のドラマ脚本家が好きそうな物語だなぁ。
『おしん』とか『北の国から』とか苦手な自分にとってはやっぱりこの作品も辛い…😖まぁ『おしん』も『北の国から』も真面に観たことないんだけど😅
ユン・ヨジョンさん演じるお婆ちゃんのキャラクターはユーモラス。でも、それをもっと前面に押し出していっても良かったんじゃないかな。
「えっ、もう病気で倒れちゃうの!?」と思っちゃった。もっと観客を笑わせて、物語を引っ張って引っ張って…からの悲劇的な展開の方が、ドラマとしては盛り上がったんじゃないかなぁ。
『ウォーキング・デッド』を観てきた自分にとっては(まぁシーズン6までしか観てないけど💦)、「グレン頑張れー☺️」という感じで、応援しながら観ることが出来てよかった。これがなかったらもっと退屈していたかも🥱
『バーニング』で納屋を燃やしてた男の納屋が燃えた…🔥とか思ったのは自分だけじゃないよね?
やっぱり明るくて楽しいコメディ映画の方が自分は好みだということがわかった。
作品賞は難しいかも知れないけど、助演女優賞は獲るんじゃないかな。脚本賞もイケるかも…🤔
この感想文を書いていて気が付いたけど、お父さんの名前はジェイコブ=ヤコブ。
「だから、兄弟たちよ。主の来臨の時まで耐え忍びなさい。見よ、農夫は、地の尊い実りを、前の雨と後の雨とがあるまで、耐え忍んで待っている」
ヤコブの手紙にはやたらと「忍耐」という言葉が出てくるみたいだけど、この一文がこの映画の全てを表している気がするわね🍥
セリの様にも青臭さも苦味も感じる滋養溢れる作品です。
この時期になるとアカデミー賞エントリー作品が上映されますが、やはりエントリー作品となると、そんなにハズレは無いかなと思い、鑑賞しましたw
で、感想はと言うと、良いです。
但し、荒ぶった気持ちの時はもっと刺激が欲しい感じもありますが、穏やかな気持ちの時に観ると沁みわたる様な優しさが気持ち良いですw
韓国からアメリカでの農場成功を狙って移住した韓国人の家族の奮闘記ですが、戦後まもなくにブラジルに移住した日本人の方を連想しました。
1980年代に韓国からアメリカに移住すると言う社会情勢は全てを理解している訳ではありませんが北朝鮮との冷戦が続き、夜間の外出時間が制限され、軍人がデモ隊に催涙弾や銃を向け、言論の自由も制限されていたと聞きます。
明らかに日本より数十年遅れて感じで、戦前から戦後の日本の様な感じでしょうか?
現在も治安維持法である国家保安法が存在し、独立した公安組織である国家情報院が存在する事を鑑みると今から30年以上の前の韓国は自国民ですら住みづらかったと思います。
ジェイコブ一家はそんな韓国を抜け出し、新天地のアメリカ・アーカンソー州に移住して来ます。
アーカンソー州と言う州は個人的にはそんなに馴染みの無い州なんですが、自然が豊かで農業にはうってつけ。
ジェイコブがこの地で一山当てようとしますが、やっぱりそんなに甘くない訳でほぼゼロからスタートに一苦労どころの騒ぎじゃない。
一番の問題は妻の理解がなかなか得られない事。
息子のデビッドが抱える心臓の病で何かあった時に病院に行くのも一苦労の地での出発は納得が出来ない。
ジェイコブの気持ちも分かるし、妻のモニカの気持ちも分かる。どちらかと言うとモニカ寄りな感じですがw
そこからモニカの母親で祖母のスンジャおばあちゃんが孫達の面倒を見る為にアメリカに来る訳ですが、このスンジャおばあちゃんがかなり破天荒。
そんなスンジャおばあちゃんが巻き起こす大騒動!かと思いきや、そうでもなかったw
粗暴で口が悪くて何処かこズルい感じですが、孫想いの良いおばあちゃん。
なかなか懐かなかったデビッドがおばあちゃんにオシッコを飲ました辺りからなんか打ち解けていった感じw
物語は割りと淡々としていて、ジェイコブの農作もなんとなく上手くいきそうな感じでありながらも、モニカは常に仏頂面。
スンジャおばあちゃんが倒れた辺りから物語が動き始めますが、そこまではかなりスローでロハスな感じ。
ちょっと中弛みは個人的に感じます。
全体的には夫婦間のモヤッとした空気感がありますが、出てくる登場人物で嫌な奴がいないのが個人的には良い。
デビッド役のアラン・キム君が良い感じなんですよね。
お姉ちゃんのアンは些か割りを食ってる感じはあるのがちょっと残念。家族が弟に構いがちになるといつも割りを食うのはお姉ちゃんなんですよねw
スンジャおばあちゃんの孫想いの気持ちがじんと心に染み入ります。
最初は孫嫌いなのかな?と思いましたがそうじゃなかった。
デビッドを想う無償の愛情にウルッときますね。
でも、教会での寄付のお金をくすめ盗るのにはビックリもし、些か笑ってしまったw
ただ、十字架オジサンの存在はそれ以上でもそれ以下でもなく、単に田舎にいる変なオジサン的になってたのは面白いけど意図が分からんw
でも、信心深くてちょっと変なオジサンのポールも実は良いヤツで、実は一番変なのは…ジェイコブなんですかねw
自分の夢と理想を叶え、家族の為に突き進む姿は力強い父親像ではありますが、ちょっと頑な。
ヒヨコのオスメスの見分け方が瞬時に出来るとかの特技なんかも割りとスルーされている感じも勿体ない。
ここまでアーカンソーで農業に殉じて身を立てようとする過去の体験や背景をもう少し入れた方がジェイコブに感情移入が出来たかと思いますが如何でしょうか?
制作・配給のA24は近年話題の作品を世に出している気鋭の会社で「ムーンライト」「レディ・バード」「聖なる鹿殺し」「mid90s ミッドナインティーズ」と言った話題の作品から「ミッドサマー」「ヘレディタリー/継承」「スイス・アーミー・マン」「Mr.タスク」と言う話題でありながらいわゆる「変」な作品も輩出w
良い作品も変な作品も玉石混淆な感じもしますがw、異様に攻めている会社なイメージ。
この作品は「ムーンライト」「レディ・バード」系の良い作品でありますが、A24は話題の作品を常に提供しているのでそのブランドがこの作品でも活かされているかと思います。
あと、劇中に出てくるダウンジングだけが、何故かA24らしい感じで「ミッドサマー」感を感じさせますw
タイトルのミナリは韓国語で日本ではセリの事。
春の七草の一つで「七草粥」の中に入れるので有名ですが個人的にはササッと湯がいてドレッシングや梅肉と和えたのなんかが好き♪
水田の畔道や湿地などに生え、雑草として捉えられがちですが、食べても良し、薬効もあると言う万能食。
それでいて栽培にも手間が殆ど掛からない。
このセリの効能を理解するとタイトルがかなり深いんですよね。
どんな土地に行っても雑草の如く逞しく根を張り、しっかりどっしりと生きる姿勢はまさにセリその物。
いろんなトラブルがあっても「雨降って地固まる」かの如く、トラブルを乗り越えるラストは若干尻切れトンボの様にも感じますが、いろんな想像を掻き立てますが、いろんな未来を暗示する流れとしては良いんではないでしょうか。
家族愛とおばあちゃんの優しさ、そしてセリの野性味溢れる美味しさを味わった様な清々しさ。
昨今の刺激的な作品に慣れていると物足りなさを感じますが、噛み締めると苦味を感じる滋養溢れる味わいは癖になる。
あ~セリの和え物やサラダなんかが食べたくなってきた♪
そんな気持ちになれる作品です。
まるでドキュメンタリーな家族の話
アメリカ映画でメインキャストは韓国人家族。どんな展開が気になるよね。
アーカンソーに引っ越してきた韓国人家族は、父、母、姉、弟の4人家族。70年代の話かな?お金がないのでトレーラーハウス。父がどうしても農業をしたくて安い土地を買ったようだ。
そこへ、お婆ちゃんも同居にやってくる。
人種差別とか自然災害とか、大変な困難を乗り越えて成功する話かと思っていたら、そんなイベントは一切なし、淡々と生活を描いた、ドキュメンタリーもどき。どちらかと言うと、お婆ちゃんと孫、夫婦の価値観など、家族の問題がメインだった。人種は関係なしのヒューマンドラマでした。ちなみにミナリとは日本語で芹の事。キレイな水があればどこでも育つらしい。
是枝監督の様な感じだった。
不器用だが懸命に生きるどこにでもある家族の風景
これは特別な家族の話ではない。80年代にアメリカに移住した韓国人の家族という設定ではあるが、イ家族はごくごく普通の家族であり、人たちだ。みな、不器用だけど家族思いで、自分本位だけど優しい。
夢aka呪いによって家族を翻弄してしまう父ジェイコブの「男・父・主人たるもの、こうあるべき!」と全部独りで成し遂げようと、背負ってしまっている姿。
(おそらく病気の子を産んでしまった事への責任を感じているのだろう)過保護すぎるほどに息子デービッドの身を案じ、子供達の将来と家計を心配する母の苛立ちと疲れ切った表情。
そんな父母と弟の間で感情を抑え冷静に振舞おうとする姉アンのどこか寂し気な眼差し。
父も母も姉も自分の立場・役割を全うしようと、理想としている人間になろうと懸命に生きているだけなのだ。
彼らを見ていると、自分の中に、家族や親戚や友人に、どこか見覚えのある姿が投影されるだろう。
そんな中で唯一自然体で生きているように見えるのが、韓国からやってきた祖母だ。
口が悪くても文字が読めなくても料理ができなくても、不自由なはずの暮らしにあっという間に馴染み、悠々と暮らしている。アメリカで生まれ育ったデービッドは、自分が移民である(外からやってきた)という認識が薄く、家族という自分の知っている世界の外から訪れる祖母やポールの存在に戸惑いを隠せず、挨拶もできないほどだ。兎角、祖母に関しては「おばあちゃんらしくない」としきりに言うように、アメリカ社会ですりこまれたのかもしれない「理想」(いや「空想」と言ってもいいだろう)が邪魔をしている。
そうでなくても、おばあちゃんというのは、子供からすると、なんだかとても面倒で、風変りで、でも愛嬌があって面白い存在だ。自身の幼少の頃を思い出しても、そんな風に感じることが多々あったように思う。妙な薬湯を飲ませたり、しきりに可愛いと言ってきたり、でもいつの間にか父母姉とは違うその自然体な言動をデービッドは少しずつ許容していく。
デービッドに一緒に走ろう、と言ってくれたのは、おばあちゃんだけだった。教えてもらった花札で友達との距離を縮めることができた。水道水の代わりになる水汲みで家族の役に立つことができた。農場を手伝うポールと家族の距離を縮めたのも、病気になってしまったおばあちゃんかもしれない…。
ポールという人物もまたイ家族とは違うが、不器用に一所懸命に生きている。奇妙な程に信心深い彼は穏やかな目元にどこか狂気のような絶望のような深い闇を携えている。おそらく彼は、戦争の傷跡が残り、妻や家族を亡くした独り身で、もしかしたら農業でも失敗したのかもしれない。文字通り十字架を背負い、神を信仰し、悪を祓い、人を赦し、人に感謝して生きている。ジェイコブと対のような人間だ。彼も一度は理想を追い求めたのかもしれない…けれど今は雲の隙間から太陽の光が漏れただけで目を潤ませる…。
人は正解かも間違いかも分からない道を進んでいく。
おばあちゃんはとんでもない事故を起こしてしまった。
途方に暮れ、行く当てもなく、ただどこか遠くへ消えてしまいたいようなおばあちゃんの茫然とした姿、それまでたくさん笑っていたおばあちゃんからは想像も出来ない表情に胸が引き裂かれそうになる。そのおばあちゃんに駆け寄り、一緒に家に帰ろうと、デービッドは優しく言った。それは、デービッドが初めて意思を持って走った瞬間だった。
その夜、疲れ果てたイ家族4人は、リビングで川の字になって、ぐっすりと寝ていた。アーカンソーのトレイラーハウスに着いたその日に父ジェイコブが提案した「ここで雑魚寝しよう」はスルーされ、いつもバラバラに寝ていた家族。デービッドはそれまで半ば強いられて行っていた祈りを捧げることもなく、深い眠りについていた。最悪な事態が起こった夜に、家族は一つになった。
その姿を見つめながら一人眠れずにいたおばあちゃんは何を思っていたのだろうか・・・。
父が一人船頭を切って「始めた日」、家族は同じ方向を向くことができなかった。最悪の事態、いわゆる「終わった・・・」の日。でもそれは言い換えれば、これ以上の最悪は無いと信じたい、新たな「始まりの日」だった。
不器用だった家族たちは、各人が抱いていた理想という呪いが少しだけ解けただろうかと、想いを馳せるエンディングだった。人に頼ることを覚えた父は、ポールにサンキューと言えているだろうか。母はデービッドに走ってもいいよ、と背中を押せているだろうか。姉はもっと子供らしく無邪気に笑っているだろうか。デービッドはミナリ(セリ)のように逞しく成長しただろうか。おばあちゃんはまた笑って自由に振る舞っているだろうか…。
人生とは理不尽で、人間とは不器用な生き物で、家族という集合体は面倒だ。
また嵐が来て、夫婦は喧嘩して、親に説教され、水が出なくなっても、窓から朝陽がさして一日が始まるー。その繰り返しかもしれない日々は続いていく。
それでもやはり、人は愛おしく、家族と生きていくことは尊いのだと思う。
エンドロールの虫の鳴く音に故郷を、家族を、祖母を思い出し、涙した。
”To All Our Grandmas." 「全てのおばあちゃんに捧ぐ」
この言葉で締めくくられた本作。
鑑賞後にじわじわと様々な感情が沸き起こる。
キャスト・脚本・演出・撮影・音響・美術・・・全てが良かった。
A24配給、PLANB制作らしい本当に素晴らしい作品だった。
ミナリ(セリ)というタイトルは絶妙
アメリカに移住し農園で成功しようとする韓国人家族の物語。
夫婦ともひよこの性別鑑定で収入を得ながら、夫が自宅の土地で農園づくりに励むという話。俺が成功してる姿を子どもたちに見せたいというメンタリティを自分が持っていないので若干のついて行けなさを感じてしまった。
でも、途中から同居することになる祖母(妻の母)のキャラクターの濃さで惹きつけられてしまった。強烈なのに憎めない。いや、実際に孫として同居していたら嫌悪していただろうな。で、大人になった今となっては懐かしむことができるようになるというそんなキャラ。
で、その祖母が話の展開のポイントとなる。倒れたり、火事を引き起こしたり。悲しくもあり、苛立たしくもあり、切なくもある。そういう意味でとてもつらい映画だった。あの夫婦のすれ違いは男女のすれ違いとしてかなり難易度の高いもののような気がする。夫がんばってるのに!でも家族のことを見てもらっていないという彼女の言い分も理解できる。自分でも同じような流れになってしまう気がする。
色々あったがラストではなんとなく丸く収まったのかな?という雰囲気で終わっていくことに若干の物足りなさを感じてしまったのも正直な感想。
誰かの実体験を映画脚本にしたのかなと思う。火事という事件はあったが意外と淡々と進んだことにも納得できる。
やっぱりお祖母ちゃんは最高で最強!「ミナリ」がセリ(芹)のことだとわかるとグッと親近感が増します。
①アメリカのど田舎に新天地を求めて移住した韓国人の若夫婦の生活を、オネショの癖が抜けず心臓に疾患をもつ下の息子(ディヴィット)の目を通して描いていく。②パパは信仰や民間伝承にすがるのが好きでなく何でも自分(の知恵や努力)で切り開いて行きたいタイプ。自立心も強い。ただ自分の夢を追う余り、家族のためにやっていることの筈が、それが家族との間にすきま風を吹かしていることになかなか気づけない。ママは信仰深く子供たちのことを第一に考えている。やや自分勝手なパパについていけないところを感じながらも夫唱婦随なスタンスを守っているところは韓国の儒教思想がまだ体のどこかに残っている世代からかな。しっかり者のお姉ちゃんはその分影が薄いのは可哀想なところ。③始まってそうそうモーレツな夫婦喧嘩が始まるのには驚かせれる。だが、子供たちが早速「ケンカしないで」と書かれた紙飛行機を作り出すところを見れば日常茶飯事なのだろう。その夫婦喧嘩の結果、韓国からママのママであるグランマ(お祖母ちゃん)を呼び寄せることになる。④戦争未亡人で女手一つで娘を育て上げたであろうグランマは何せ明るく逞しい。遠いアメリカに来ても気後れせず花札(恥ずかしながら韓国に花札あること初めて知りました)もすればプロレスに興奮する。このグランマと孫のディヴィットとの交流がこの映画の一つのハイライトである。⑤男の子は元々シャイなものであるが、アメリカで生まれ育ったディヴィットも初めはなかなかグランマになつかない。韓国臭い(?)し、イヤな黒い汁を飲まされるし。グランマに自分のオシッコを飲ませるイタズラの顛末が笑わせる。タンスの引き出しを脚に落とした怪我を手当てしてもらっ時にディヴィットは“strog”と言ってもらって一気に心の距離が縮まる。その時にディヴィットがグランマに決まり悪いような面白がるような顔で「オシッコどんな味だった?」と訊いて逃げるシーンが微笑ましい。また、ある日グランマはディヴィットを連れて行ってはいけないとされている先にある小川の処までつれて行き日当たりのよい斜面にミナリ(芹)を植える。『ミナリは水があって日当たりのよい場所ならどこでも育つ。食品にもハーブにも薬にもなるんだ。』このミナリ(芹)が映画の一つのモチーフとなる。そして感動のラストへの布石とも…⑥しかし、良いことばかりは続かない。肝心のお祖母ちゃんは脳卒中で倒れちゃうし、パパは当てにしていた買い付け先からけんもほろろに一方的にキャンセルされる。疲れきったママはカリフォルニアに戻ることを決意する。パパは引き続きこの地で頑張るという。家族が離ればなれになるのも仕方ない様子。⑦でも悪いことがあれば、良いことも有るのが人生。カリフォルニアに戻る前にディヴィットの診察を受けに行ったら心臓の疾患は治癒に向かっているという嬉しい診断結果、ここの水がディヴィットの身体に合っているようだから現在の生活を変えないようにと医師にアドバイスされる皮肉さ。パパも野菜を買ってくれる先がやっと見つかった。⑧でも、良いことが続いたのにママの顔は晴れない。家族よりも仕事(野菜を売り込む)を優先させるパパの姿勢にほとほと愛想が尽きたからだ。そして野菜の商売が決まった直後、夫婦の間に決定的な溝ができてしまう(様に思える)。⑨一方、留守番していたグランマは不自由な身体でごみ焼きをしているうちに近くの枯れ草に延焼させてしまう。この時点では「グランマ、何しとんね!」という印象。帰ってきたパパは野菜貯蔵庫に延焼しているのを見つけ少しでも野菜を運びだそうとする。その後をママも追いかけ一緒に野菜を運びだそうとするが、煙に巻かれてしまう。そしてパパは野菜を置いておいてママを救い出す。野菜貯蔵庫は野菜ごとあえなく全焼。しかし、炎と煙のなかで二人で助け合ったこと、野菜より何よりママを救ったことで夫婦の絆は戻った様。グランマに悪気ははなかったとは言え何てことしてくれたとおもったが、結局夫婦の絆を復活する吉祥となった。やっぱりグランマは一家にとって天使だったのかも知れない。自分が起こしたことにショックを受け且つ罪悪感で家を去ろうとするグランマに最初はあれほど懐かなかった(走らない方が良い)ディヴィットが走って行く手を塞ぐシーンなややベタながら涙が出る名シーン。⑩
邦画を観てるようだった。。
韓国映画、20年ほど好きで観てるけど。。
こんなに、穏やかで淡々と、それでいて愛情深い作品は少なかったように思う。。
少年の理想とする、おばあちゃんではないけれど、大切な家族になっていく様が愛しい。
ラスト、大切なものを失わずに良かった。。な。
そんなか?
アカデミー賞ノミネートやら宣伝の煽り文句が
やたら大きくてなら観てみるかと観賞
昨今話題のインディペンデント系A24や
ブラピの制作会社と共作ということですし
感想としては
・・・で?というのが正直な感想
人種?宗教?高齢者?どのテーマに触れたいのか
わからず中途半端な印象を受けました
80年代のアメリカが舞台
アーカンソーの田舎に越してきた韓国人一家
無神論者で現実主義で在米韓国人向けの野菜を
開拓して栽培しようとする旦那
看護師っぽい心得もあり息子の疾患を心配し
田舎への移住に否定的な妻
しっかりものの姉
先天的な心疾患(たぶん卵円孔開存症みたいの)
を抱え人見知りが激しいデビッド
とそれぞれの家族に妻が祖母を韓国から
呼び寄せますがこの祖母がなかなか破天荒で
デビッドも最初は馴染みませんが
デビッドのいたずらをかばった
(いたずらにしては度を越してますが)
事がきっかけで徐々に懐いていきます
旦那は変わったキリスト教信者の隣人の
力を借りて菜園を進めていきますがうまくいかず
たびたび金銭的な困窮を迎えます
・・しかし結局どう解決したのかがわからず
行動があんまりわかりません
教会に行くと言うのでてっきり
韓国教会(アメリカの教会は移民にとって駆け込み寺)
のコミュニティに助けを求めると思ったら
普通の教会に行ったりわけがわかりません
旦那が神を信じる気になったってレベルの話?
いちいち行動の理由が大げさな割にしょぼい
人種的な差別とかもその教会でアメリカ人の
子供がなんで顔が平たいんだって言うくらい
とりわけ何か問題となるレベルの感じもない
菜園がうまくいかないことにも特に関係ない
妻の心配とうらはらに息子の病気は良くなり
旦那の野菜も引き取り手が見つかりひと段落
しかし都会に帰りたいという妻に旦那は
田舎で頑張りたいと言ったので妻は
あんたは結局家族より菜園を取ったと
別れるような話をしたり
日本のドラマでいくらでも見てきた
ただの家族間の話になっていってます
韓国人の監督だから登場人物が韓国人
なのはまあいいんですが
80年代とか舞台設定が別に話のテーマに
そう関わってきておらず訴えたいことも
よくわからない映画でした
スタッフロールの「すべてのおばあちゃんに捧ぐ」
なんですかその大雑把なメッセージ
この監督が君の名は。の実写版を
撮るそうですがこれでは不安ですね・・
まあ全く期待してませんのでいいですけど
ありり?これ、普通にただのA24じゃないですか。
良かった。
けど。
過度の期待は禁物、ってことで。
一家には深く共感するし、将来が心配で堪らないんですが、いかんせん。シナリオがテンプレ過ぎるw
画も、脚本も、演出も、演技も、全てが普通だった。期待値上げ過ぎた俺が悪いw
韓国映画の特徴と言えば、喜怒哀楽のデフォルメ。最近は、それを排除した「はちどり」みたいな淡々とした語り口の映画もボチボチ有りますが、ミナリもそっち系。地味にニヤリとさせるエピソードを挟んで来ます。タッチは期待通りだし好きなんですが、刺さらないw
何処にでも根付き生きて行く「ミナリ」がテーマならですよ、そこに重心があって、静かに話を結ぶ様なシナリオにならんのでしょうか。毎年、韓国から移住して来る韓国の人達が、異国で自分の足で立って生活して行く様の生々しい話や、感動する話を期待しとりました。
おばあちゃんと孫のエピソードや、ダウジングを断った男の末路とオチとか、魅力あります。が、テーマ性が薄過ぎないどすかね?
家族よりも農業を取るのかと、妻が迫る件とかも有耶無耶。
タイトルへのこだわりの無さも、韓国らしいって言えば韓国らしいかもw
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5/3 追記
登場人物の名前で「あぁ、聖書やね」ってのは判ります。
聖書をモチーフとした映画脚本はたまにありますよね。【物語の結末を示唆】していたり、【登場人物たちの言下の精神世界を象徴】していたり、【テーマ性の軸】になっていたりします。
ミナリの場合、登場人物の行動に聖書を引用しているのだと思いますが、上記の【 】に相当するものが感じられません。よって、聖書をモチーフにしてる割には物足りないし、知的じゃない聖書の使い方にしか見えないんですよ。
私も、聖書に詳しいわけではありませんので【 】の要素に関しての見落としがあるのかもしれませんが。
いずれにしても「ばーちゃんとボク」以上のものには見えないw
タイトルなし(ネタバレ)
韓国映画ではなく、アメリカの映画だ。皆大好きなブラッド・ピットも関わっている。
アカデミー賞の噂からかなり期待していた。
が、そこまで面白いと言える映画には感じなかった。
映像は美しく、素晴らしい。
冒頭のアメリカの家に到着するまでのシーンでは、その美しさから期待せずにはいられなかった。
先日、藁にもすがる獣たちを鑑賞したのだが、スンジャを演じるユン・ヨジョンが出演していて、初めて彼女の存在を知る。韓国国内では人気の高い実力俳優のようだ。本作でもその力を発揮している。スンジャは物語後半で脳卒中で倒れてしまい、体が不自由になり会話も難しくなってしまうのだが、見事に演じていたと思う。
本作の家族は、親が離婚危機である。口論が絶えないので、子供たちはケンカをやめてと書いた紙飛行機を飛ばしたりするが効果ないようだ。私はこういう両親の下に生まれなくて良かったと思う。きっとケンカの絶えない夫婦の子供たちは悪影響を受けていくだろう。
ジェイコブが農業を始めるにあたり、アメリカ人のポールが手を貸した。ポールは休日になると木の大きな十字架を背負って歩くのだが、何故かは理解出来なかった。
孵卵場でヒヨコの選別を行う仕事がある。選別をしながらも、不要なオスのヒヨコは焼却処分されていく。何故このシーンを入れたのか?を考えると、言わば役に立たない人間は要らないと言う、現代社会を表しているように感じた。現代では生産性が求められるので、能力の低い人はこぼれ落ちていく。
映画では仕事を求めていたポールは自分をアピールして農業の仕事を得たし、地下水を当てる仕事をしてる人も生きるのに必死なようだった。ジェイコブも同じで農業が成立させないと貧困へ落ちていくだろう。スンジャも病気でありながらも家族の為に家事をしていた。
イ家は四人家族。父ジェイコブ、母モニカ、長女アン、長男デビッド。時代は1980年代で大統領はレーガンだ。当時は毎年3万人の韓国人が渡米していた。イ家もその中の一つ。物語が進むとモニカの母スンジャが韓国から合流する。
モニカはジェイコブの計画を何も知らずただジェイコブに付いてきた。だから、アメリカの家、と言ってもトレーラーハウスのような、車輪が付いた家を見て、ショックのようだった。
ジェイコブがデビッドに大きな庭を作ろうと言うと、すかさず小さくていいとモニカは口を挟んだ。
ジェイコブとモニカは口論が絶えない。子供たちも2人が離婚したらどちらと暮らすかと会話している。
ジェイコブの計画は、アメリカで農業で成功することにある。だから、大きな庭と言うのは、農園を指している。作ろうとしている農作物は韓国の野菜だ。移民の韓国人向けに韓国の野菜を作れば儲かるだろうと算段している。これ程大きな話なのに、妻モニカは何も聞かされていない。
農業はすんなりと始まるわけではない。まず、畑を耕し水を引かなければならない。ジェイコブは井戸を掘って地下水で野菜を育てようとした。水の確保は上手くいって地下水を掘り当てた。畑は中古の耕作機を買い、開墾した。
野菜を作って農家として生計が立つまで、ジェイコブとモニカはヒヨコの選別で生計を立てる。メスは貴重だがオスは殺処分される。デビッドが孵卵場からモクモクと立ち上る煙を見て、父にあれは何かと聞くと、ジェイコブは廃棄と答えた。廃棄とは?と聞かれると、ジェイコブは役に立たなければならないと答えた。
韓国からモニカの母スンジャが渡米してくる。デビッドはスンジャのことを好きになれない。ある日デビッドはスンジャに連れられ山林の小川に行くと、スンジャはミナリを植える。ミナリとはセリのことで韓国人はよく食べるようだ。
農作物のための地下水が枯れてしまい、ジェイコブは仕方なく水道水を使った。お金が無いのでやがて水は止められてしまう。
ジェイコブとモニカは口論が絶えない。アンとデビッドは親が離婚した後のことを考え、どっちと暮らすか会話している。
ある日スンジャは起きれなくなる。病院で診てもらうと、脳卒中と診断される。その日からスンジャの体は動きが悪くなり、会話もまともに出来なくなった。
農作物が収穫出来たので、スンジャを家に残し家族で街の店舗に営業へ行く。取引が成功しこれからジェイコブ達は成功するかもしれないと思われたのだが、店を出るとモニカはジェイコブとの別れを告げる。家族のことより商売を優先していることが受け入れられないようだ。
デビッドには心臓病がある。デビッドの容態はアメリカに来てから順調に回復していて、医者は今の生活を続けるようモニカに促していたのだが、モニカは今の生活を続けることを拒否する形となった。
家ではスンジャがゴミを集め、庭で燃やしている。燃やす場所は収穫物が沢山置いてある小屋の近くであったため、火のついたゴミがドラム缶から飛び出すと、瞬く間に小屋に飛び火した。
ジェイコブ達が帰宅の道中、焦げ臭さを感じた。家に着くと小屋が燃えている。ジェイコブとモニカは急いで収穫物を外へと移動するのだが、煙の量が多く呼吸が難しく視界も悪くなっていく。
ジェイコブはモニカを見失い、苦しみながらも大声で名前を呼んでモニカを探す。モニカの声が聞こえると、ジェイコブは収穫物を残してモニカと小屋を出た。
スンジャは申し訳なさそうに、家から離れていく。子供たちがスンジャを引き止めた。
後日、ジェイコブは農業を再開しようとする。隣にはモニカがいる。モニカにとって、火事の時にジェイコブが収穫物より自身の事を優先したことが嬉しかったように感じた。
スンジャが植えていたミナリは、自然に増殖していた。ジェイコブとデビッドはミナリを収穫し生活費に立てるのだろうか。ここで映画は終わる。
【"アメリカンドリームを追い求めて・・" 辛い事があっても、家族で”セリ”の様に逞しく生きて行こう。移民として大地に根を張り、懸命に夢を叶えるために生きる家族の姿を描いた、アーティスティックな作品。】
- 韓国、軍事政権時代にジェイコブとモニカは豊かな生活を夢見て、心臓に病を抱えるデビッドとしっかり者の娘アンと4人で、アメリカ・アーカンソー州の片田舎に移り住む。韓国野菜農業での成功を夢見て・・。-
■感想
・年代は、レーガン大統領が一瞬映されるので、1980年代であろう。
韓国では、”漢江の奇跡”と呼ばれた高度経済成長が続いていたが、一方では光州事件に代表される軍事政権が国を支配していた。
ジェイコブ達が、アメリカに来た背景は特に語られていないが・・。
物語は淡々と進む。彼らが漸く到着した家は、トレーラーハウス。愕然とした表情のモニカ。
- 喧嘩の絶えない二人に子供達が"喧嘩は止めて"と書いた紙飛行機を必死に投げる姿が、沁みる。広大な土地に君たちしかいないのだから、力を合わせようよ・・。-
・ジェイコブが、購入した土地の土を握りしめて言う言葉。”アメリカ最高の土地だ。だから、ここを購入したんだ・・。”確かに、肥沃な土の様に見える。そして、自力で水源を探すジェイコブの姿。
ー 彼の開拓者精神が、良く分かるシーンである。トレーラーハウスの周囲の緑が印象的である。が、そこには嵐もやってくる。自然の脅威との共存。ー
・ギスギスした夫婦関係に中、韓国からモニカの母がやって来て・・。
- 文盲で、明るくて賭け事の好きなおばあちゃんの姿が良い。彼女が、近くの川辺に植えたセリ。生命力の強いセリは移民してきたジェイコブ一家の逞しさの”象徴”であろう。
ラストシーンとの繋がりも、良い。-
・最初は、おばあちゃんを遠ざけていたデビッドが、徐々におばあちゃん子になって行く姿。
ー おばあちゃんと亡きおじいちゃんは、朝鮮戦争で国を守った人たちなのである。
そして、ジェイコブを手伝うポールが、毎週日曜日に十字架を背負って歩く姿。彼も、朝鮮戦争に従軍した際に心に傷を負ったのであろうか・・。ー
・そのおばあちゃんが、脳梗塞になってしまい、起きてしまった悲劇。
ー 自分の侵してしまった事に驚き、家とは反対側に歩いていくおばあちゃんを必死で、引きとめるデビッドとアンの姿。きっと、ジェイコブ一家は、おばあちゃんを責めることなどせず、逞しく生きていくだろう、と思う。ー
・そして、ジェイコブとデビッドがおばあちゃんが撒いたセリの種から、立派に成長したセリを刈り取るシーン。親から子へ。子から孫へ、生命力が引き継がれていく様子を表した見事なシーンである。
<韓国移民の一家が、様々な経験をしながらアメリカの土地で、苦労しながらも逞しく生きていく姿を静かなトーンで描いた作品。
エンドロールで流れる”すべてのおばあちゃんに捧ぐ”という言葉が、儒教思想が浸透している、韓国の強さを示している作品でもある。>
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