劇場公開日 2021年3月19日

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「家族 × 夢 × 是枝さん?ポスト・パラサイトという新たな時代の地平線を描く感動のドラマ!」ミナリ よしさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5家族 × 夢 × 是枝さん?ポスト・パラサイトという新たな時代の地平線を描く感動のドラマ!

2021年3月20日
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【garden】歳月の流れを丹念に丹念に積み上げていく。ある家族のポートレートに親近感を覚え、心痛む --- そして深い感動。スティーヴン・ユァン × ハン・イェリの熱演に心掴まれる。何においても考え方が違い、対立する、何かと喧嘩ばかりの主人公夫婦。自分のプライドや夢、自己実現に固執するジェイコブと、家族のために地道に堅実にタグ生きていきたいモニカ。撮影も音楽もすごくよかった。ユーモアのセンスも抜群。子供への演出・距離感や、樹木希林さんが演じるのを想像できるようなクセのあるファンキーなおばあちゃんなど、是枝監督を彷彿とさせるものがあった。それほどまでに皆魅力的で印象的なキャラクターたち。特に、アカデミー助演女優賞も期待できるおばあちゃんと、ウィル・パットン演じるポールがいい。素晴らしい。おばあちゃんに関しては、本編の途中である変化が訪れてからの演技もすごく、その振り幅に引き込まれてしまう。『フェアウェル』とはまた違う形で、おばあちゃんという存在に想いを馳せる作品。
《信仰》現実の壁に敗れ、今まで存在を信じてこなかった不思議なものに頼るという心境の変化。自分ではどうしようもないことを祈ること(ex. 天候、水源、病気)。人に頼っても、運に頼っても、神に祈ってもいい。ヒナのオスの廃棄というのも主人公ジェイコブにとって、どこか示唆的。農業での成功を夢見ているというキャラクター設定ではあるものも、誰のどんな夢にも落とし込めそうな普遍性は、まさしく映画としてのあるべき姿。ミナリ〜ミナリ〜ワンダフル♪視点人物的立ち位置の長男デビッドは、ペニスがブロークン、ディンドンがブロークン?露の水ことマウンテンデューはそりゃ美味しい。雑魚寝、冒頭の方の草原カット、そして水調査という差異を伴う反復からの、時の流れを感じるタイトルに帰着するラストシーン。そしてエンド始まった瞬間に鳥肌。しっかりと生活があった。何気ないどの瞬間も愛しくて、最後には骨の髄、魂の芯の琴線まで沁み入るような。何週間たっても、何ヶ月たっても、きっと思い出してしまうだろう。
ポスト・パラサイトと言えそうな新たな時代の到来を実感する地平線を描く。毎年賞レースに絡むA24 × PLAN B = 『ムーンライト』最強タッグ再び!! 本作で製作総指揮も務めるスティーヴン・ユァンは、"『ウォーキング・デッド』の人"から映画俳優、それも作家性強く本当に意味のある素晴らしく実のある作品に相次いで出演する実力派に華麗に変身を遂げた。今年度の賞レースを賑わせている2本柱、本作と『ノマドランド』共にアジア人監督が描くアメリカ。だから、仮定の話をしても仕方がないって分かっているのだけど、考えずにはいられない。『万引き家族』がもし今だったら?…と。違う結果になっていたのでは、と。それだけ『パラサイト』が映画史的にも重要なランドマークになり得る一大事件として風穴を開けるに相応しい突破口として凄かったということに尽きるのだろうが。この監督が撮る実写『君の名は』ならオリジナルより見てみたい。

とぽとぽ