「小作ながらも二人の関係性の行方に引き込まれる」お隣さんはヒトラー? 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
小作ながらも二人の関係性の行方に引き込まれる
本作では戦時中に起こった出来事がいっさい描かれない。すなわち、オープニングではまだ家族みんなが幸せだった戦前の時代が描かれ、それが開けると、そこは終戦から15年後の南米。その間に主人公の身を襲ったことについてはすぐに想像がつくが、あえて描かないことで彼のとてつもない悲しみが伝わってくるし、この「描かない」という点ではお隣さんも同じだ。辿ってきた人生は違えども、語らない過去を持つ点では共通している。かくも因縁の過去(?)を抱えた者どうし、またある意味では疑心暗鬼の募る「お隣さんミステリー」のセオリーを踏襲しつつ、さらに全く立場の異なる隣人どうしがいかにして関係性を構築していくべきかという現代的なテーマすら併せ持つ。これは想像していた以上に見応えと巧さを兼ね備えた作品だ。二人の名優を配し、嫌味なく、くどすぎず、点を描くことで全体を想像させる手法が優れている。ちょっとした展開の捻りも気に入った。
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