劇場公開日 2021年7月30日

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「体験せよ」アウシュヴィッツ・レポート tさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0体験せよ

tさん
2021年8月14日
PCから投稿

アウシュビッツレポート

「サウルの息子」っぽい作り。観賞後、とても鬱々とした気分にさせられる、というのは最大限の賞賛。人の鬱屈状態を、まるでその人になり切ったかのごとく主観的に体験させるという、表現方法が秀逸。セリフがほとんどない。マッドマックス怒りのデスロードと同レベルぐらいにセリフがない。カメラが常に揺れている。カメラから見える景色は、ほとんどが主人公の主観。全体がハッキリと映し出されるようなカットはひとつもない。ピントが合ってない。夜のシーンが多く。空は常に曇っている。晴れの日は一度も映らない。

私は当然アウシュビッツの囚人ではない・・・がしかし、この映画の主人公の鬱屈した状態が、私がこれまで経験してきた鬱屈した状態に共鳴し、映画に入り込むことができた。

自分がもし絶望的な状況に陥ったらどうするのか?を考えてしまった。なってみないとわからん。

うーん。自分がほぼ100%死ぬと決まった時に、人は他人の幻想の中に生きることを望む、ということなのかもな。「何かを伝える」というのは、他人の幻想の中に自分の存在を残すということだ。

t