「【国際社会として、よく考えなくてはならないこと】」アウシュヴィッツ・レポート ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【国際社会として、よく考えなくてはならないこと】
この作品の示唆するものは何だろうか。
エンドロールで流れる様々な主張や声がヒントじゃないだろうか。
エンドロール終了まで席を立たないで下さい。
ガザ地区の「世界一眺めの悪いホテル」をバンクシーが手がけたり、イスラエルのガザ地区への圧倒的武力を背景にした爆撃や、第二次世界大戦後の1948年5月のユダヤ人国家としてイスラエルの独立宣言の経緯をもって、イスラエルにあまり良くない感情を持っている人が結構いることを最近知った。
だが、この問題は、欧米で長い間行われてきたユダヤ人に対する迫害もあって、特定の断面から見るだけでは、理解できない複雑な問題が絡み合っていることは理解してして欲しいなと考えたりする。
簡単に云うと、欧州の大概の国では、もともとユダヤ人に好意的な感情を持ってる人は少なく、その団結する心が強く、向上心が高く、豊かな生活を築いている様に劣等感を抱いて、厄介払いしたいと考えた欧州人が多くいたということだ。
それを、ある意味で、ナチス・ドイツは察し、虐殺の矛先をユダヤ人600万人に向けたのだ。
そして、ナチスの敗戦が濃厚になるにつれ、虐殺は加速度的に増えていくことになる。
人道的にもだが、国際条約でかたく禁止されていた行為だったために、ナチスは口封じも含めて大量虐殺を進めたのだ。
映画に描かれているように、何とかして虐殺を止めなくてはならないと考えたアルフレート達は、ホロコーストの証拠とともに、アウシュビッツ・ビルケナウの収容所の同胞や仲間の命がけの後押し、途中で出会う支援者の助けもあり、国境にたどり着く。
しかし…。
結果的に、この二人の尽力で、12万人のユダヤ人の命は救われたとされているが、600万人という数から考えると、やはり僅かだ。
その背景には、長く続いたユダヤ人への迫害があったことは間違いないと、僕は思う。
言い方は悪いが、助けなければならないと云うモチベーションが決して大きくはなかったのではないかと思うのだ。
確かに、人道的な観点から、ユダヤ人を救った人は多くいた。
あまり、知られてないことだが、ナチス・ドイツと同盟国のイタリアの首都ローマでは、カトリック教会と医師達が、この世にない感染症をでっち上げて、ローマ市のユダヤ人の8割を救ったとされている。
ただ、こうした大規模なものは例外だ。
イスラエルの建国については、更に複雑で、興味のある人は調べて欲しいけれど、多くの欧州諸国が、再び、ユダヤ人を厄介払い出来ると考えたことは想像に難くない気がする。
だからこそ、多くのユダヤ人を救えなかったという事実、イスラエルとパレスチナの問題、イスラエルとイスラム教シーア派の一触即発の状況については、欧米諸国とイスラム諸国が真剣に取り組まなくてはならない問題なのだ。
エンドロール。
流れる声や主張は、全て、差別や迫害を助長するものだ。
一人ひとりの声は小さくても、まとまれば大きな主張になりかねない。
こうしたことが、当時のユダヤ人に対するジェノサイドに繋がったとも考えられるからだ。
そして、今、また、僕達の世界は、こうしたリスクを醸成しつつあるのではないのか。
世界はボスニア・ヘルツェゴビナ紛争でスレプニツァの虐殺を防ぐことは出来なかった。
中国の新疆ウイグル族へのジェノサイドも同様だ。
中国は、内モンゴル自治区のモンゴル人や、チベット人への激しい弾圧も行なっている。
だからこそ、過去の反省に基づいて、世界は、これらに強い反対の意を唱え、そもそも差別や迫害自体がおかしげなものだと伝え続けなくてはならないのだ。
僕達の世界はいつも危ういところを歩いているのだ。
ワンコさん、コメントありがとうございます。そもそも大昔からヨーロッパにあるユダヤ人差別と迫害を抜きにしてホロコーストを捉えることはできないとのご指摘はまさにその通りだと思います。ナチに情報を与え色々な側面で「お手伝い」した人々は沢山いました。
この映画と「パンケーキ」を同じ日に見たので頭がゴチャゴチャ&(怒)になって書いたレビューなので、心落ち着け少し調べてからレビューを書き直しました。評価も上げました。ワンコさん、ありがとうございます。
おはようございます。
イロイロと情報を有難うございました。
削除されてから、考えましたが、私はこの映画サイトでのレビューアップをして行きます。
多くの先輩レビュアーさん達のレビューはとても魅力的ですから。
ホロコースト、ナチス関連の映画はよほど考えて選ばないと見た後に心身がおかしくなってしまうので、この映画も見るつもりでしたが見ていません。ワンコさんのレビューを拝読し、同じ方向で考えている方が居ることがわかり納得し心を少し強くできました。ありがとうございます。
今晩は。
流石、ワンコさんのレビューは、勉強になります。
私も同じ事ような事が書きたかったのですが、マダマダだなぁ。
国際政治学の該博な知識には感服です。初めての削除を経験して、この映画サイトからは・・と思っていましたが、先程迄私が"この方のレビューは!"と勝手に思っている素晴らしいレビュアーの方々のレビューを拝読して、矢張、この映画サイトに少しずつ投稿して行こうと思いました。改めて、これからも宜しくお願いいたします。堅苦しくて、すいません。返信不要です。(昔、このフレーズ、五月蝿い奴に使われて封印していましたが・・。確かワンコさんが通報してくれましたよね。)