劇場公開日 2021年3月5日

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「死者が望むのではなく生者が望む勲章」ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実 フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

死者が望むのではなく生者が望む勲章

2021年4月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

戦場に舞い降りた天使の話

単館系の映画な割にめちゃくちゃ豪華な俳優陣なので見ごたえは十分。
アベンジャーズシリーズのウィンターソルジャーことバッキーバーンズ役のセバスチャン・スタンが主人公なのだが、脇役が大物過ぎてちょっと食われてしまってましたね。

セバスチャンをアベンジャーズ以外で見たのは「アイトーニャー」のクズ男役だったけどあんまり印象にない。
ウィンターソルジャー役は影もあっていい感じなのだがほかの作品で爪痕残して無いのはあんまり特徴的な顔じゃないからかな?

本作は育ちのいいエリート公務員役なので彼のまったく見たことのない演技でしたね。
スーツ似合ってましたよ、アクションより背広を着る系の役の方がしっくりくる人物だと感じました。

空軍の救助隊員に勲章を授与してもらうために証言を聞きまとめ、当時なにがあったのかを紐解いていく実話ベースのフィクション。
チラシ&予告編では陰謀めいた事が関わってると謳っていたけれどそこはやや薄め。
「英雄の条件」「戦火の勇気」ほどのサスペンスは無いのでその辺を期待してると肩透かしを食らうかも。

当時の生き残り兵士の証言と遺族の話を収集しているうちに、主人公は出世とかよりも大事なものに気が付いていく・・・のが本筋です。

証言者がサミュエル・L・ジャクソン、ウイリアム・ハート、エド・ハリス、ピーター・フォンダ、メンツが濃すぎるでしょいくらなんでも。これだけで見る価値あり。
かつて主役級の俳優が退役軍人役をやってるんだから説得力と安定感が抜群です。

ベトナム戦争自体が賞賛されるような戦争じゃない、いや戦争自体が賞賛されるべきではないけれど、戦場下で命がけで戦っている兵士の行動を見ていると複雑な心境になる。
一方で敵の命を奪い、一方で仲間の命を救う、異常な状態で英雄とは何なのかを考えらせられた。

回想や証言で救助隊員ピッツェンバーガーの行動が素晴らしいことはわかったが、私は感動までにはいたらなかった。
しかし最後の授与式での演説は心に響きました。
一人の人間がこれほどの人々の心を動かせる、人生を変えることができる。英雄とは命を奪うことでは無くて、命を繋げる人物にこそふさわしい呼び名かも知れませんね。

映画全体の印象として傑作とまではいかない、豪華俳優の見応えはあったけれどいかんせん地味な映画でしたね。
決してつまらなくはないのだが・・・

劇中「極限着弾(デンジャー・クロース)」を要請するシーンがあるので映画「デンジャー・クロース 極限着弾」を見るとどれだけ危険な行為かがさらに理解できていいかも知れません。
それにしてもデンジャークロースの味方側犠牲者って歴史上どれぐらい居るんですかね?
想像以上に多いのではなかろうか、味方の援護とは言え気の毒な話だ。

本作は史実を元にしているので、ベトナム戦争に参加したとある一兵士の成したこと知りたい人は見てもいいのではないだろうか。

彼の行動を後世に残したいと思った人々によって戦後数十年して映画になったのだから凄い事だ。
人は行動によって死後でも他人の心を動かせる。この映画を見た私もピッツェンバーグに心を動かされた一人なのは間違いない。

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劇中セリフより

「地獄と楽園が一緒の場所にある」

トラウマの場所や状況を維持し守り続ける事は大事。
忘れないためにも克服するためにも必要な事ですよね。
忘れたい事、見たくない事に向き合う強さを身につけたいものです。

フリント