劇場公開日 2021年3月5日

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「【アメリカという国】」ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【アメリカという国】

2021年3月7日
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ベトナム戦争だけではなく、イラク戦争や、トランプの登場による分断、トランプ支持者・白人至上主義者の連邦議事堂乱入・暴動など暗い部分はあるものの、アメリカという国で感心させられるのは、それを巻き戻そうとする意欲や力が個人や社会に存在していることだ。

民主主義の正義のようなものが、どこかで必ず息づいているような気がする。

最近では、アフガニスタン紛争の最中の米兵の殺害行為を暴くストーリーの「キル・チーム」は、米兵の勇気ある告発をモチーフにしたものだし、イラク戦争の証拠なき開戦を告発したメディアが題材になったのは「記者たち」だ。

この作品は、ベトナム戦争で、多くの負傷兵を救いながら、自身は亡くなってしまったピッツェンバーガーの名誉勲章について、30年を超える長きにわたって、これを請願し続けた元米兵がPTSDなどで苦悩する姿も描かれ、戦争の悲惨さを伝えている。

ハフマンは、元米兵の証言を聞くうちに、自身の為すべきことは何かと自問自答し苦悩するが、背中を押したのは、僕は、彼の家族や元米兵の偽らざる気持ちではなかったのかと思う。

救われた米兵や、無事に帰還した米兵も、自分のミスで味方の砲撃を招いたとか、あんな事を言わなければ、ピッツェンバーガーは助かったのだとか、ピッツェンバーガーが自ら戦地に降り立ってくれて自身は助かったとか、戦後もずっと苦しみ続けていたのだ。

この作品を観たアメリカ国民は何を想うだろうか。
勲章の意味を問い直すだろうか。
戦争の悲劇を考え直すだろうか。
米兵の苦悩に想いを馳せるだろうか。

戦場だった場所は、もともと楽園だったのだ。

もともと、この世界には戦場だった場所などないのだ。

叙勲の場で、次々と立ち上がる人々。

その気持ちは、多くのアメリカ人が共有するものだと思う。

ピーター・フォンダに合掌。

ワンコ
ワンコさんのコメント
2021年4月1日

こんばんは、僕も、そのシーンが大好きです。

ワンコ
mayuoct14さんのコメント
2021年4月1日

映画評、とても興味深く拝見しました。「戦場だった場所は、もともと楽園だったのだ。」と評されていますが、この言葉は戦争終結後もベトナムで暮らし続けるケッパーが、青い蝶を美しい花々とともに飼育しているハウスを主人公のハフマンに紹介するところで体現されていましたね。この映画の中でもとても好きなシーンです。

mayuoct14
ちゆうさんのコメント
2021年3月7日

アメリカという国は、正義とは何か、欲すれば自らが立ち上がり闘え、という意識が万人の中に培われている国なんだと思います。正義の定義は見方によっては異なりますが、この国のアイデンティティーの中にこれが組み込まれているのは凄いことですね。柳に風、暖簾に腕押し的日本人の発想とは違うようです。

ちゆう