「典型的なバディ・ムービーの脚本がよくできている」白頭山(ペクトゥサン)大噴火 shoheiさんの映画レビュー(感想・評価)
典型的なバディ・ムービーの脚本がよくできている
非常に面白かった。白頭山は北朝鮮と中国の国境地帯にある火山なのだが、ここが噴火すると、朝鮮半島が壊滅するくらいのインパクトがあり、噴火を抑えるために北朝鮮の核兵器を使うというとんでもない物語の設定。2019年の映画なので、北朝鮮が核廃棄を進めており、米国にICBMの核弾頭を渡そうとして、準備していたという設定なのだけれど、これは当時の米朝接近の背景もある。国家として機能が停止した北朝鮮の隙をみて、その核を奪い、火山の近くで爆破させて巨大なマグマの流出を抑えようという実現不可能としか思えない作戦が企画される。
主演俳優がイ・ビョンホンとハ・ジョンウという一流の役者で、ヤクザ役のイメージの強いマ・ドンソク兄貴が、アクションをせず、作戦を提案した火山の研究者の役を務めているのが面白い。いつもの武闘派ではなく、知的な雰囲気を漂わせている。作戦を提案したくせに、途中で米国籍を利用して米国に逃げ出そうとする。
核兵器を盗もうとすると、当然北朝鮮軍とも交戦せざるをえない。地勢学的な問題から、米国は中朝国境沿いで核を使おうとする韓国の動きを阻止しようとする。さらに中国の情報部だって黙ってはいない。そうした敵ばかりの中で必死に敵の攻撃をかいくぐり、北朝鮮で拘束されている二重スパイ、リ・ジョンピョン(イ・ビョンホン)とともに作戦部隊は行動する。除隊直前だったのに、作戦部隊に参加を余儀なくされ、事故から隊長を務めることになったチョ・インチャン(ハ・ジョンウ)とのかけあいがなかなか面白い。韓国映画でよくあるバディ・ムービィ的な味付けなのだけれど、二人の会話の言葉に伏線や意味があって、最後のメロドラマにつながるあたり、脚本家がなかなか手練の人のようだ。アクションや地震を描く特殊撮影のシーンはそれほど多くなく、むしろ二人の主演のかけあいとドラマが中心になっていると思える。