「日本映画は「マネ」しないで…」白頭山(ペクトゥサン)大噴火 トコマトマトさんの映画レビュー(感想・評価)
日本映画は「マネ」しないで…
封切り2日目。東京・城東地区の映画見巧者が集まる映画館で鑑賞。
100席あまりのスクリーンは、コロナのために半数の客入れだが、それがほぼ満席。
中朝国境にある白頭山が大噴火を起こす。韓国政府は、北朝鮮にあるICBMの核弾頭を手に入れ、それをマグマ溜まりにブチ込み爆発させることで、噴火を鎮圧する作戦を決行する。それが主題だが、その過程を、火山爆発によるパニック面や、南北朝鮮、それに絡む中国、米国の駆け引きをサスペンスタッチと国際政治に絡め、さらにや家族愛のヒューマンドラマをトッピング…というお腹いっぱいになるテンコ盛。
しかし、アクション場面はスピード感たっぷり、迫力たっぷりで、ハラハラドキドキの連続で飽きさせない。荒唐無稽さや、主人公が最後までほぼ無傷で乗り切るご都合主義も、展開のよさで目をつぶってしまう。
こまごまとしたアラ探しなどせず、2時間余りをワクワクしながら、映画に埋没すればよい。
これだけの映画を作り上げた韓国映画界、エンタメ業界のレベルの高さに改めて目をみはる。
20-30年前なら、韓国、中国映画の撮影もポストプロダクションも日本人、日本の関係会社の協力なしには作れなかったが、今は彼ら自身の手で100パーセント可能だろう。
この間に、映画に映る韓国の街並み、韓国人の姿かたちもすっかりあか抜けた。
1984年8月、37年前の夏にぼくは初めての海外旅行で韓国に1週間ほど滞在した。あの当時、韓国の地方では牛を曳いて田んぼを耕していたし、ソウルの地下鉄駅の売店には冷蔵庫もほとんどなかった。発泡スチロールの大きなコンテナに氷を入れ、そこで飲み物(ガラス瓶に入っていた)を冷やして売っていた。自販機は滅多に見かけなかった。
ソウルの裏通りは、舗装もされておらず、ごみだらけで、異臭がした。小さな子供は路上で、うんちもおしっこも平気でしていた。
わずか30年余りで大変身。
これだけの映画を作り、おそらくタイ、ベトナム、インドネシアなど東南アジアでもヒットする映画だろう。
韓国では2019年暮れの公開で、おそらくコロナ禍で日本公開も1年以上ずれこんだか。
今はもっとすごい映画を撮れる態勢が整っているんだろうか。
韓国に負けられない、と日本もこれだけの大スペクタクル映画を撮るのか、撮れるのか。
CGその他も、以前より安く速く使えるようになって、そこでの差がなくなってきてはいるんだろうが、日本はそんな真似しなくていい。
「ドライブ・マイ・カー」みたいな映画で、評価の高い、芸術性、文化性の高い映画を志向すればいいと思う。
ま、文芸ものからアクションまで幅広く、フルスペックでの勝負は日本では無理だと思う。
そんなことを考えさせられた。