「【”何故、島田叡は死を覚悟して、沖縄県知事の座を引き受けたのか・・””真のリーダーとは、官僚のあり方とは・・”現代社会で生きる我々に深い命題を突き付けてくるドキュメンタリー作品。】」生きろ 島田叡 戦中最後の沖縄県知事 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”何故、島田叡は死を覚悟して、沖縄県知事の座を引き受けたのか・・””真のリーダーとは、官僚のあり方とは・・”現代社会で生きる我々に深い命題を突き付けてくるドキュメンタリー作品。】
ー 島田叡は、県庁から逃れ、数々の壕を転々とする中、何を想っていたのであろう。
残してきた家族の事なのか、
何故、知事を引き受けてしまったのかという悔悟なのか、
旧日本陸軍の民を蔑ろにする態度への怒りだったのか・・。
島田氏に関する資料が、余りに少ないので推量するしか無いのであるが、私は
”県知事として、守る事の出来なかった沖縄県民への謝罪の気持ちと、一人でも多くの沖縄県民が生き残って欲しい”
と言う気持ちではなかったのではないか・・、と今作を観て思った。ー
■感想
・沖縄人を馬鹿にした発言を繰り返していたという前知事や、出張と称して本土に戻りそのまま帰らなかった多くの官僚がいた中、1945年1月末、辞令を受け、内務省官僚だった島田は、家族の反対を押し切り、沖縄県知事に就任する。
ー 現在であれば、国家上級職(いわゆる、キャリア)であったにも関わらず、”言うべき事を言う気質”により、地方を転々としていたという、島田の官僚時代の処遇に言及するシーン。
成程、自らの立身出世よりも優先すべき事を実行する、”精錬潔白の士”であったのだな・・。ー
・沖縄県民のために、台湾まで危険を冒して空路、米を調達する交渉を行った・・、など、彼の視線は常に民にある。だが戦況が悪化していく中、行政官のトップとして県民の命を守る姿勢と軍部の様々な要求の板挟みで苦悩する姿。
・島田と、大田真海軍司令官との交流や、牛島満陸軍司令官と遣り取りした手紙などは、非常に興味深かった。
ー 島田氏に関する資料は、余りに少ない。牛島陸軍司令官の末期までの記録と比較しても、少なすぎる。このドキュメンタリー作品の唯一の弱点は、島田氏の末期の想いを描き切れていないという、一点に尽きると思う。ー
<沖縄戦を扱ったドキュメンタリーは「沖縄スパイ戦史」を始め、幾つか観てきたが、軍や基地は民を守るモノではない事を、今作でも認識した。
それにしても、立派な”本物の男”が、昔の官僚にはいたのだなあ・・、という事を、深い感慨と共に感じた作品であった。>
ありがとうございます。
「背中を拝まれる人」を目指す想い、まったく同じです。
また、NOBUさんが「空白」に記された箇所にも共感しております。現在だって、組織の中で頑張っている「個」はいるのですから。
報道される「ごく一部」が、あたかも全体であるとは、思われたくないものですね。