レンブラントは誰の手にのレビュー・感想・評価
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名画自体よりも、美術収集をめぐる“上級民”らの欲や駆け引きに重点が置かれる
ゴッホ、フェルメールとともにオランダを代表する巨匠レンブラントのファンや、美術収集の世界に明るい人ならより楽しめるだろうが、私を含めそうでもない人にも勉強になり、興味深い要素が確かにある。 オランダ貴族の家に生まれレンブラントが描いた先祖の肖像画を見て育った若き画商は、ロンドンで競売にかけられた絵がレンブラント作だと直感し、安値(とはいえ1800万円位)で落札。鑑定後に発表して注目を浴びるが、入手過程をめぐり騒動が持ち上がる。あるいは、富豪ロスチャイルド家がレンブラント作2点を約200億円で売りに出し、オランダの国立美術館とフランスのルーブルが国の閣僚も巻き込んで獲得に動く話。 所蔵、売買、鑑定の対象になる絵画を紹介する際に画風や技法などを解説するので、レンブラント入門の側面も認められる。だがオランダ出身の女性監督ウケ・ホーヘンダイクは、「この世界は主に裕福で年配の白人男性が牛耳っている」とコメントしているように、ハイクラスの人々がその財力と欲や思惑で美術品の値段を高騰させる現実を冷ややかに見つめている。ある場面で専門家が「レンブラントは人物の本性を見抜いて肖像画に表した」と語るが、このドキュメンタリーも、美術収集や取引をめぐる個々人の行動や思いにとどまらず、美を愛する心や欲望といった人間の本質に迫ろうとしている。
好奇心くすぐる美術ドキュメンタリー
非常に好奇心をくすぐるドキュメンタリー作品だ。ホーンダイク監督は単に美術品にフォーカスするのみならず、そこを切り口として各人の事情や背景を描き、その先に我々の生きる時代そのものを映し出す。思えば同監督は「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」(08)で、”あるべき美術館の姿”を巡って多様な意見が噴出する中、誰もが全く譲歩せず、改修工事が一向に終焉を迎えないという、民主主義に関わる極めて今日的なジレンマを浮き彫りにした。レンブラント絵画をめぐる本作も構造はどこか似ている。美術界を騒がせた”名画の発見”をめぐる顛末にとどまらず、様々な人々を通じて”所有”という行為をじっくり見つめる。その間、ホーンダイク監督は自らがカメラ前に映り込むことなく、登場人物を批判することもなく、ただ真摯にフッテージを重ねるのみ。解釈や考察を観客一人一人の胸に委ね、自らは時代の観察者に徹しようとする姿勢に感銘を覚えた。
惚れて愛して欲と威信
画商ヤン・シックスは、競売にかけられた肖像画がレンブラントの作品だと直感し安値で落札した。本物ならレンブラントの作品が発見されるのは44年ぶりだった。作品が本物と鑑定された後、落札できなかった画商から共同購入の約束だったとクレームをつけられてしまった。 また、ロスチャイルド家が所有するレンブラントの絵画2点が売りに出されることになり、フランスのルーブル美術館とオランダのアムステルダム国立美術館が獲得しようとした。2点セットで200億円超の価格に、両国の大臣まで登場し国の威信をかけた大騒動へと発展していったというドキュメンタリー。 レンブラントはオランダに行った時アムステルダムの美術館に入って実際に鑑賞した事がある。その時はゴッホに比べて暗い絵が多いな、位しか思わなかったが、今回色々と解説を聞き、良さを教えてもらえたのが良かった。特に、肖像画を模写してる人の解説で、襟の白いフリルが難しいと言われていたのに、なるほど、と次回レンブラントを見る機会が有れば注目したいと思った。 それと、レンブラントの絵に惚れて、愛している人たちが多い事と、お金にしようと欲の塊のような人達もまた多い事を改めて知れて良かった。 レンブラント好きの方はぜひ観てください。
うーむ、見る方次第かなー?
予告編と邦題で、実話サスペンス!? と思いきや、ハズレー。 原題は My Rembrandt=私のレンブラント。 さまざまな形の「私の」が展開されます。 あ、本作はドキュメントです。 かなり昔、ループルやオルセー美術館に行ったり、フランダースの犬に出てくるルーベンスの絵を教会に見に行ったりしたとき、本物の迫力というか、なんだかわからない力というか、それらの洗礼を受けた事があります。 とある有名画家の、そんなに有名ではない絵の前で30分動けなかったっけ、、、落涙しながら。 そんなこと思い出しました。 ですから、絵画は人心を激しく揺さぶり人生を惑わしたり、豊かにしたり、争わせたりするのですね。 友人が画商をしているので、美術品ビジネスの大変さはちょっと知ってました。 生き馬の目を抜くようなことは珍しくないって言ってましたね。 本作は素晴らしい絵画を見ることはできますが、エピソード紹介的なドキュメントなので、ちょっと鈍重な平べったい内容だったかなー? けど、絵画を趣味とされている方やレンブラント作品のファンの方なら凄く楽しめるのではないでしょうか?
絵画に興味がある方は是非ご覧下さい
オランダの画家レンブラントに関わった人たちのドキュメンタリー作品です。 贋作か真作かはともかく一生の多くの時間と財産をレンブラントに捧げた人達の生々しいドラマが見れます。 オランダとフランスの芸術関係者達が国家の威信をかけてレンブラントの200億円相当の2枚の絵画を獲得するために奔走する姿と、新発見?されたと思われる新作絵画1点の真贋に関わる若き画商の姿を並行で描いていてとても見やすかったです。 レンブラントに興味がある方だけでなく、純粋に絵画好きな方は見ても損はしないと思います。 世界的の歴史に名を残す絵画を所有するにはお金だけでない人格や品格、知性が必要とされるのが理解できました。
レンブラントに魅せられた人々が織り成す光と闇を鷲掴みにする渾身のドキュメンタリー
自身の肖像画をレンブラントに書かせたオランダの貴族ヤン・シックスの末裔で画商のヤン・シックス11世は競売にかけられた作者不明の肖像画がレンブラントの作品であると直感し落札、知人の修復師やレンブラント研究の第一人者に依頼して様々な角度からレンブラントの手によるものと実証しようとする。かたやスコットランドでは広大な土地を所有するバックルー公爵が代々所有してきたレンブラント作『老女の読書』が防犯対策で高い位置に飾られていることに不満を持ち、ふさわしい内装の部屋に飾るべく思案している。そしてフランスではロスチャイルド男爵が弟に課税される莫大な相続税を支払うために代々受け継がれてきたレンブラントによる2点の肖像画『マールテンとオープイェ』を売却する決断をする。レンブラントを巡る3つの物語が並走する中で真贋論争や所有権争いが勃発、やがて国家を巻き込んだ大騒動に発展していく。 監督は美術館の改装を巡る大騒乱をコミカルに捉えたドキュメンタリー『みんなのアムステルダム国立美術館へ』を手掛けたウケ・ホーヘンダイク。前作ではレンブラントの『夜警』が象徴的に使われていましたが、本作ではまるでその続編であるかのようにレンブラントに魅せられた人々が織りなす濃厚な人間模様をまるでフィクションかのように生き生きと描写。精緻かつ大胆な筆使いで最小限の色を操り深い闇もくっきりと浮かび上がらせるレンブラントの技法に関する様々な考察もしっかり取り上げているので、美術ドキュメンタリーとして鑑賞しても十二分に楽しめる美しい映像にはため息が出ます。レンブラントにまつわる美術史に自身の想像や伝聞を盛り込んでドラマ性を持たせたい父10世とあくまで科学的に実証されたことだけを史実として積み上げたい息子11世の確執、自身が築き上げた富と名声をレンブラントの作品に置き換えることで恍惚を得るコレクターのドヤ顔、絵画獲得を巡って繰り広げられるルーヴル美術館長とアムステルダム国立美術館長の神経戦、スクリーンにべっとりと塗りつけられる人間ドラマは終盤あらぬ方向に急展開し、『マールテンとオープイェ』の背景に描かれたような漆黒の闇を暗示して終幕。本作のために新録されたと思しき旋律に身を委ねてしばし余韻を楽しみました。 海外の美術館巡りが叶わない現在においてスクリーンで鑑賞することに格別の意味がある軽快なのに重厚な作品。そんな作品の最終上映なのに客が私一人、何とも贅沢な100分間を堪能させて頂きました。
【愛、野心、欲求、探究心、威信】
ロスチャイルド家でさえ、あの2点の全身肖像画を手放さなくてはならない状態だったのだと改めて驚いた。 あの大作の肖像画は時代を経た経年劣化もあって、世界最高の修復を施さなくてはならないとしたら、尚更かもしれない。 そんな技術を持っている美術館などは世界にも多くはないからだ。 厳重な管理下のモナリザでさえ、もう二度とルーブルの外に出ることはないと言われているほど時の流れは、絵画を劣化させる。 この物語は、5者5様のレンブラント愛の物語だ。 ヤンや、コレクターの収集欲、仏蘭の争いを見ると辟易するような人もいるかもしれないが、僕は、レンブラントなんだからやむを得ないと思う。 それほどレンブラントは偉大なのだ。 研究者が言う、レンブラントは人々のものだという言葉は、もはやレンブラント作品は人類の遺産だと云うことなのだ。 祖先が残してくれた作品を自分なりのやり方で愛でたい、そばで感じたいと思うのも、 人知れず隠れていたレンブラントを世に出したいと思うのも、 研究しつくしたいと思うのも、 コレクションしたいと思うのも、 是非我が国の美術館で展示したいと思うのも、 レンブラント作品だからだ。 若い男性の肖像画にサインがない。 なぜ。 それは元の絵から切り取られていたから。 僕は、この推理の場面でゾクっとした。 確かに、絵画の一部を切り取ってアレンジするという不届き物は、過去には少なくなかったからだ。 ロスチャイルドから仏蘭が共同購入して、アムステルダムのナショナルギャラリーに運び込まれる時、「夜警」の前を通り過ぎる場面がある。 これにもゾクっとする。 ヨーロッパにはレンブラントファンは多い。 そのコレクションの中心は、やはりアムステルダムのナショナルギャラリーであることは間違いない。 日本にもレンブラントファンは少なくはないと思う。 日本の美術館の保有は多くはないが、淡い蝋燭の明かりに照らされた陰翳表現は、どこか谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」で記された日本人の美意識に通じるところがあるからではないかと思う。 そのレンブラント作品の所蔵で有名なのが、千葉県佐倉市の「DIC川村記念美術館」で、作品は「広つば帽を被った男」。 特別室に展示されている。 2年ほど前、新たな収集方針に伴い、国の重要文化財の長谷川等伯の「烏鷺図屏風」や、尾形光琳、横山大観、上村松園などの作品の売却方針が明らかになったが、この美術館設立のきっかけになった「広つば帽を被った男」は当然のように残っている。 お庭やカフェも気持ちの良い美術館なので、是非訪れてみてください。 背景は気になるとしても、絵画を前にしたら、それを純粋に感じたり、感動したり、楽しむのが、唯一極上の作法だと僕は思います。
「個人蔵」という世界
ヤン・シックス11世が発見した問題の肖像画は、果たして、良い絵だろうか? レンブラントにしては、顔がのっぺりしているし、ポーズのおさまりも悪い。 ただし、比較的若い頃の作品で、かつ、大きな絵の一部が切り取られたためだと考えれば、レンブラント作として違和感はない。 13万7000ユーロは、レンブラントとしては格安だ。 映画のメインテーマは、この肖像画をめぐるスリル満点の“真贋”の話かと思っていたら、途中からはそうではなくなった。 「Rembrandt: The Painter at Work」などの著作のある、レンブラント研究の権威デ・ウェテリンク教授が、初見では否定的であったが、最後は“真作で傑作だ”と断定したからだ。 「このレベルの人でも、ずいぶん主観的な判断を下すなあ」と自分はあきれてしまうのだが、年代測定や透視画像や元素分析など、科学分析ツールがそろっている今日でも、しょせんはその程度なのだろう。 そしてその結果、画商仲間のあいだの諍いという、実に卑俗で退屈な話に映画のテーマが変化する。 また、3~4つの無関係なテーマが、入れ替わり立ち替わり現れるのも分かりづらい。 別々に章立てして語られるべき内容ばかりで、なぜゴチャゴチャにしたのか、理解できない。 とはいえ、ただ一点だけ、共通点がある。「個人蔵」の世界という点である。 英題「私のレンブラント」は映画の本質を語っており、邦題の酷さは腹立たしい。 この映画を観た自分にとっての収穫は、 ・デ・ウェテリンク教授の人となりが分かったこと ・(有名な銅版画の)窓辺で読書する男がヤン・シックスの先祖で、「オランダ黄金時代」が少し身近に感じられたこと そして、 ・「個人蔵」とひとくくりされる世界の、“多様性”が垣間見えたこと であった。 あとは、オランダ人が「フランス人のケンカ好きはDNA」と怒るエピソードや、物質主義を嫌悪していた男が「レンブラントを買い占めたい」と思うほどコレクションに取り憑かれてしまったエピソードは面白かった。 とりあえず観て良かったと思うものの、たいしたドキュメンタリー映画とは言えない。
邦題は要らない
原題「My Rembrandt」で、観賞した者には十分作り手の意図が伝わるし、邦題の「名画の争奪戦」的なミスリードはこの作品にとってむしろ好意的なレビューを減らすことになっていないか? …と私には直接関係ないことを思いながら、劇場を後にした。 絵画取引の常識に関しては私の不勉強から不可解な部分もあったが、「名画」と言われるものが、財産的価値や個人の名声や所有欲、国の威信という意味合いで高く取引されていることは私でも知っている。 一方で、そういった何かの加減で簡単にゼロになるような言わば「虚飾の基準」によって数字化され取引きされながら、才能の具現化である「絵画」そのものと、それを愛し続ける人々は現実だ。 そこで、この映画は「さあ、レンブラントは誰のもの?」と問かけてくるわけだ。 当然それぞれにそれぞれの言い分があるし、何かが一方的に正しいということはない。 その辺りを皮肉も込めながら、ドキュメンタリーでありながらちゃんとドラマとして見応えがあった。 また、繰り返しそれぞれの絵画を細かな筆致まで見えるくらいに接写でしっかり映してくれている辺りも、個人的にはありがたかった。
【レンブラントの画に魅入られた人たちの姿をミステリー要素も絡めて描いたドキュメンタリー作品。】
■数名のレンブラントの画に魅入られた人たちの中で、印象的だった人・画 <Caution! 以下、”概要”に少し触れています。> 1.「読書する老女」をこよなく愛し、共に暮らす老伯爵。 絵画盗難事件が、父の代にあったため、壁の上部に掲げられていた、「読書する老女」を、もっと身近な場所に移す事を決意する。 - それにしても、凄い数の肖像画である。- 2.ロスチャイルド家が、代々所有していた対の名画「マールティンとオーブイェ」を相続税を払うために売却する事に・・。 彼の名画を入手したいルーブル美術館と、アムステルダム美術館の攻防が・・国家まで介入することに・・。 - 1億6000万ユーロって!。あと、ロスチャイルド家だからの、あの余裕の笑顔かな?- 3.これは、レンブラントの画に違いない!と、無名の作家の画を”購入”したレンブラントの画を見て育った、ヤン・シックス。 ホンモノ!である事が判明し、大喜びして、本まで出版したら・・。 <レンブラントの画に魅入られた人たちの、悲喜こもごもの姿を、少しコメディとシニカル要素を絡めて描いた面白きドキュメンタリ―作品。 皆、本当にレンブラントの画が、好きなんだねえ・・。 レンブラントの多数の画を、細部まで観れて僥倖だったなあ。 我が家にある、レンブラント風の画が、ホンモノだったらどうしよう・・。>
共通点はレンブラント推し!!
レンブラントに関わる4つの物語がテンポ良く映される。 1人はレンブラントの作品と思わしき絵画の真偽を見極めようと奮闘する者 1人はレンブラントの絵画への愛をひたすらに語る者 1人はやむなく手放されるレンブラントの絵なんとか自国のものにしようと他国とにらみ合う者 1人は己の財力を糧にレンブラントの絵画を収集し、それを公開することに悦を感じる者 事情も経歴も異なる登場人物たちの共通点は、そう、レンブラントの虜だということ。 レンブラントを語る彼らの目は共通して輝いている。 この輝きは自分の大好きなものを他人にとことん熱く語っているときの輝きそのものだった。 様々な背景を持つ人々を惹き付けるレンブラントの魅力が詰まった作品で 観終わって気づく、私もレンブラント推しだと。 映画.comオンライン上映会にて鑑賞
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