「もっとアイロニックかと思ってた。」レンブラントは誰の手に osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
もっとアイロニックかと思ってた。
う〜ん。悪くはなかったけど。
ちょっと肩透かしだったかな。
やっぱり、あの「上塗りされた絵の下に真実が隠されているかも?」の件、4年は待てなかったのかな。
記事によれば、結局その後、剥がした絵の鑑定結果が出て、やはりレンブラントだったらしいので、これはもうちょっと粘って欲しかった。
絵の表面を剥がして、隠されていた過去を暴くなんて、それこそミステリー映画みたいな醍醐味があったはずだ。
とはいえ、いくら鑑定の精度が向上したところで、本物か?否か?本当のところは、描いた本人にしか真実はわからない訳で、そんな不確実性の塊のような代物に巨額のマネーが当たり前のように動く滑稽な現実に対して、もっとブラックユーモアで積極的に切り込んで行くのかと思いきや、実際そういった何か痛烈な身も蓋も無くなるようなアイロニーなどは殆ど出てこなかった。
ルーブルとアムステルダム国立美術館との丁々発止にしろ、ヤン・シックス11世のスキャンダルにしろ、人間の滑稽さや愚かさは図らずも出てはいたが、あれでは物足りない。
その点でも、ちょっと肩透かしだった。
あと、冒頭の方にも出ていたコレクター夫婦、実は役者なのかな?
ヤン・シックスのスキャンダル記事をwebsiteで発見するシーン、あそこで偶々カメラを回しているなんて、あまりにタイミングが良すぎて、とても偶然ではなく、明らかに見え透いたヤラセ演出にしか見えなかったけど。まあ、そんなことは、どうでもいいか。
映像作品としては、撮影も編集も上手で、全編に流れる音楽も良くて、滅多にお目にかかる事が出来ないプライベートなコレクションも、じっくりと至近距離で堪能する事も出来て、美術館での肉眼では見過ごしてしまいそうな繊細な描写もカメラの大写しのアップで、たっぷり味わう事も出来て、そういった意味では、随分と貴重で快適な時間を過ごす事が出来たので、西洋美術の愛好家であれば、休日の一時デートムービーとしてもいいかもしれない。
特にスコットランドのお城にある「読書をする老婦人」は本当に素晴らしい。
この絵を観るだけでも、この映画を観る価値がある。
但し、何かアイロニカルな鋭い批評性や強烈なブラックユーモアを期待している人にとっては、だいぶ物足りなくなるので、そういった意味では決してお勧めは出来ない作品だろう。