劇場公開日 2021年2月26日

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「【愛、野心、欲求、探究心、威信】」レンブラントは誰の手に ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【愛、野心、欲求、探究心、威信】

2021年3月5日
iPhoneアプリから投稿

ロスチャイルド家でさえ、あの2点の全身肖像画を手放さなくてはならない状態だったのだと改めて驚いた。
あの大作の肖像画は時代を経た経年劣化もあって、世界最高の修復を施さなくてはならないとしたら、尚更かもしれない。
そんな技術を持っている美術館などは世界にも多くはないからだ。

厳重な管理下のモナリザでさえ、もう二度とルーブルの外に出ることはないと言われているほど時の流れは、絵画を劣化させる。

この物語は、5者5様のレンブラント愛の物語だ。

ヤンや、コレクターの収集欲、仏蘭の争いを見ると辟易するような人もいるかもしれないが、僕は、レンブラントなんだからやむを得ないと思う。

それほどレンブラントは偉大なのだ。
研究者が言う、レンブラントは人々のものだという言葉は、もはやレンブラント作品は人類の遺産だと云うことなのだ。

祖先が残してくれた作品を自分なりのやり方で愛でたい、そばで感じたいと思うのも、

人知れず隠れていたレンブラントを世に出したいと思うのも、

研究しつくしたいと思うのも、

コレクションしたいと思うのも、

是非我が国の美術館で展示したいと思うのも、

レンブラント作品だからだ。

若い男性の肖像画にサインがない。

なぜ。

それは元の絵から切り取られていたから。

僕は、この推理の場面でゾクっとした。

確かに、絵画の一部を切り取ってアレンジするという不届き物は、過去には少なくなかったからだ。

ロスチャイルドから仏蘭が共同購入して、アムステルダムのナショナルギャラリーに運び込まれる時、「夜警」の前を通り過ぎる場面がある。
これにもゾクっとする。

ヨーロッパにはレンブラントファンは多い。
そのコレクションの中心は、やはりアムステルダムのナショナルギャラリーであることは間違いない。

日本にもレンブラントファンは少なくはないと思う。
日本の美術館の保有は多くはないが、淡い蝋燭の明かりに照らされた陰翳表現は、どこか谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」で記された日本人の美意識に通じるところがあるからではないかと思う。

そのレンブラント作品の所蔵で有名なのが、千葉県佐倉市の「DIC川村記念美術館」で、作品は「広つば帽を被った男」。
特別室に展示されている。

2年ほど前、新たな収集方針に伴い、国の重要文化財の長谷川等伯の「烏鷺図屏風」や、尾形光琳、横山大観、上村松園などの作品の売却方針が明らかになったが、この美術館設立のきっかけになった「広つば帽を被った男」は当然のように残っている。

お庭やカフェも気持ちの良い美術館なので、是非訪れてみてください。

背景は気になるとしても、絵画を前にしたら、それを純粋に感じたり、感動したり、楽しむのが、唯一極上の作法だと僕は思います。

ワンコ
ワンコさんのコメント
2021年4月5日

モリスンさん、恐縮です。ありがとうございます。

ワンコ
たけちゃすさんのコメント
2021年4月5日

ワンコさんのレビューは映画選びの羅針盤、鑑賞後の宝箱です。

たけちゃす