劇場公開日 2021年2月26日

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「名画自体よりも、美術収集をめぐる“上級民”らの欲や駆け引きに重点が置かれる」レンブラントは誰の手に 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5名画自体よりも、美術収集をめぐる“上級民”らの欲や駆け引きに重点が置かれる

2021年2月26日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

ゴッホ、フェルメールとともにオランダを代表する巨匠レンブラントのファンや、美術収集の世界に明るい人ならより楽しめるだろうが、私を含めそうでもない人にも勉強になり、興味深い要素が確かにある。

オランダ貴族の家に生まれレンブラントが描いた先祖の肖像画を見て育った若き画商は、ロンドンで競売にかけられた絵がレンブラント作だと直感し、安値(とはいえ1800万円位)で落札。鑑定後に発表して注目を浴びるが、入手過程をめぐり騒動が持ち上がる。あるいは、富豪ロスチャイルド家がレンブラント作2点を約200億円で売りに出し、オランダの国立美術館とフランスのルーブルが国の閣僚も巻き込んで獲得に動く話。

所蔵、売買、鑑定の対象になる絵画を紹介する際に画風や技法などを解説するので、レンブラント入門の側面も認められる。だがオランダ出身の女性監督ウケ・ホーヘンダイクは、「この世界は主に裕福で年配の白人男性が牛耳っている」とコメントしているように、ハイクラスの人々がその財力と欲や思惑で美術品の値段を高騰させる現実を冷ややかに見つめている。ある場面で専門家が「レンブラントは人物の本性を見抜いて肖像画に表した」と語るが、このドキュメンタリーも、美術収集や取引をめぐる個々人の行動や思いにとどまらず、美を愛する心や欲望といった人間の本質に迫ろうとしている。

高森 郁哉