「人生は博打」キャラクター ONAKAMAさんの映画レビュー(感想・評価)
人生は博打
私自身、「バクマン」が好きで、そこから創作する漫画・映画が好きになりました。今作の主人公・山城はまさに博打と隣り合わせで生きてきた漫画家だと思います。
今作は完全オリジナルで製作されたことにまず驚きました。こんなにも面白い作品を、一から創造し生み出すなんて天晴れです。
演技面では全役者がお見事なのですが、その中でもFukaseさんが最高でした。初演技とは思えないレベルの狂気っぷりと気持ち悪さが惜しみなく発揮されていて、殺人鬼なのに魅入ってしまうほどでした。
ストーリーは殺人を犯した殺人鬼をたまたま見てしまった冴えない漫画家が見た光景を題材にした漫画を世に放ち、作中で行われた架空の殺人を、殺人鬼がこなすという異色ながらも分かりやすいストーリーです。4人家族を狙うという設定は一貫されており、山城の家族が血の繋がっていないことや、夏美のお腹の中には双子がいるんだなとある程度予想はつくのですが、その予想通りながら、少し捻った展開を用意しているので、常に裏切られ続けました。
今作では警察がメインの立場にいるおかげで、ポンコツにはならず、小栗旬さん演じる清田や、中村獅童さん演じる真壁が常に協力的に動いてくれるおかげで、不快になるような人物がいないということも今作の面白さを際立たせています。物語の中盤から清田が山城と共に事件を推察していく流れは立派なバディものに仕上がっていました。普通なら清田と共に事件解決の糸口を見つけ、最後に逮捕しにくる立場のはずなのですが、まさかの殺人鬼の身代わりに思いっきり刺され、殺されるという予想だにもしない展開が待ち受けていました。ただ刺して死ぬだけならまだしも、手はブチブチに切れて血まみれになるわ、足もぶっ刺されるわで滅茶苦茶にして殺します。唖然でした。面白さのレベルがぐいっと上がった瞬間です。
漫画の最終回を山城自身が殺される展開にすることで、実家へと呼び出そうとしますが、簡単に見破られ、夏実のいる自宅へと向かわれます。玄関のオートロックを開けようとした瞬間に手の甲に思いっきり包丁をぶっ刺して、そのあとは足も刺して、手を切りまくってと、数ヶ月前にキラキラした恋愛映画を演じた人がこんなに血みどろになるなんて思いもしませんでした。常に血が流れ続ける道のりが恐怖で、部屋に入ってからも恐怖全開でした。夏美の足まで刺すしで狂気的という言葉が似合いまくりの殺人鬼・両角です。漫画のように殺されるのかと思いきや、山城の反撃により致命傷を負う両角ですが、皮肉にも漫画のラストのシーンと2人の攻防の終わりが殺人鬼と人間の立場が逆になるという鳥肌ゾワッな感じで物語はひと段落しました。
物語が落ち着いたあとも、どこからともなく感じる視線や、両角の裁判と解決したはずなのに、心の奥のどこかでモヤっとする、そのまま物語は終わりを迎えました。
最初から最後までフルスロットルで突き進んで、余計なものを省きまくったスリムな映画でした。とてもビクビクしましたし、とても興奮しました。最高最狂の作品です。
鑑賞日 6/12
鑑賞時間 16:25〜18:45
座席 F-11