キル・チームのレビュー・感想・評価
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解決しない話。
本当に見応えはありますし、映画としても主人公の緊張や焦燥感が、画面越しに感じ取れ、サスペンス的な雰囲気もあり。
只、扱っている内容にあらゆる問題が絡んでいて「これだ!」と言う明快な解答は、導き出せないですね。
戦争が問題か?個人の倫理観か?組織の在りかたか?
問題を切り取って考えるのであれば上司である軍曹が、終身刑になるのは妥当でしょう。最後、主人公に詰め寄るシーンが自身の行動に問題ありと認めている訳ですから。
しかし、これはあくまで映画だけを観た感想であり実際の現場ではどうだったかは、
当事者ですら自らの立場や視点で言うことが変わる訳で。
考えさせられる内容ですが、「こういうことがありました。皆さんどうお思いになるでしょうか?」と問題提起させられた話かと。
緊張感溢れる心理劇
2009年アフガニスタン。アメリカ小隊の友好的隊長が爆弾によって死亡。代わりに来た軍曹は、正反対の性格で殺人するのが仕事。と割り切って民間人をも殺めることもどちらかというと迷わない方向の性格。
その小隊の兵士達の物語。主人公アンドリューは、正義感あふれ非人道的なことはしない主義で、次第に過激な仲間達と距離ができていく。
実際の現地では、緊張感みなぎる張り詰めた雰囲気で、対峙する人が本当に無抵抗者なのかそうでないのか分からず命懸けであるだろうことは言うまでもないだろう。
最初の現地民間人の少年を撃つシーンは、米国産映画の都合なのか、過激なシーンは無かったな。
内部告発をするかしないか悩み、その後は裏切り者とバレ虐待を受けるのか?というギリギリの心理戦が続き緊張感が持続する。
ラストの展開はいただけないと思うが。
時には逃げることも
正当化し殺人を行えるから兵士になるのか、はたまた戦場にいる事で人を殺すという感覚がおかしくなり無実な人まで理由をつけて殺害し興奮を覚えてしまってるのか…このての問題にはいつもこの様な感覚を覚える。
主人公のアンドリューは国を守るという正義心を持って兵士となりアフガニスタンに派遣された。
不運にも派遣されたチームが倫理観が崩壊しており、対戦国のアフガニスタン国民の罪なき者まで隠蔽工作してまで殺しが行われてる。
チームの一人が管轄する組織に密告したところ、密告がバレて虐待を受ける。
アンドリューもまた軍事関係で働いていた父に現状を相談しかけるが、同僚の虐待を見て恐怖を覚え現状を素直に相談できずにいる。
同時に父親は息子の異変を感じ、管轄する組織に密告しようと促す。
こまめに連絡が取れない以上、いつ父親が勝手に行動に出ないか、そしてその事がチームにバレて虐待を受けないか…アンドリューはその緊張感を張り詰めながら戦場で暮らす日々を送る。
この緊張感の描き方は非常にうまくてとても見入った。
特に射撃練習のシーンでは事故を装おり殺害されるんじゃないかという恐怖心を見ているこちらも刺激される。
結局アンドリューは不正が行われてるチームを第三者に報告する事ができず、自分の心に嘘をつきチームに居続ける事で最後は罪なき民間人を故意的に殺してしまう。
それがバレて収監される所でこの作品は終わる。
この不正に殺害が行われてる問題はもちろん兵士特有の問題だとは思うが、この作品で描かれている悪の圧力というのはどんな人でも経験しかねない問題であろう。むしろ経験してる人の方が多いのではないか。
小さなコミュニティ内では過ちや間違いが正当化され、それに対して異議を唱えると唱えた者が悪とされる。
黙っていればそれらの悪を強要され、結局望んでなくても自分まで悪に手を染めてしまう事もある。この様な出来事は身近な生活社会でもいくらでも起こりうる不運な出来事であろう。
この作品を見ていると悪と訴える難しさを十分に感じ取れるが、同時に黙っている事で、自分に嘘をつく事で最後は自分までもが悪として裁かれそして自分自身を大きく傷つけてしまう結果になる悲惨さも伝えられる。
自分がアンドリューと似た立場に置かれた時にどの決断判断が正しいかは分からないが、時には逃げることも大切なのかもしれない。
エンドロールではこの作品のアンドリューのモデルとなった新兵は結局3年の刑期が下った事が説明されていた。
本人は望んでない殺しを強要され刑期までついてしまうなんて非常に悲惨な出来事である。
ドキュメンタリー作品のように決してドラマ性がある作品ではないがそれなりに見応えのある作品であった。
この映画を戦争映画と捉えると... 難アリ⁉
"Jap" と呼び、アフガンの方たちを "goat fu*kers" と呼ぶ人たち...
Task & Purposeによる最近の軍隊、特にアメリカの若者が陸軍に入隊する動機についての調査より。(Task & Purpose:主に米軍、およびより一般的な防衛を対象としている出版物)
「アメリカ人は、国、家族、名誉など、さまざまな理由で陸軍に加わります。しかし、入隊した兵士についての新しい調査によると、中心的な動機は比較的単純です:お金のためです。」ただし、使命として入隊する約9%は医療関係とされている。
We kill people. That’s what we do. Do you have a problem
with that?
本作品『キル・チーム』を製作したダン・クラウス監督のバイオを見ると主にドキュメンタリー畑を歩いてきた方で2013年にこの映画『キル・チーム 原題:The Kill Team』と同名のドキュメンタリー映画を製作している。そのドキュメンタリーも自身のピーピングトム的な性格から見たけれども、最低でも3人のアフガニスタン人をスリル・マーダーと呼ばれる殺人を犯した張本人で中心人物であるギブス二等軍曹(1週間に及んだ軍法会議の末、終身刑を言い渡される。ただし、10年後には仮釈アリ)のコメントがとれているかどうかだけで興味が湧いた経緯がある。そんなの無理な話しだった?
Dan Krauss’ “The Kill Team” is a retelling — not a remake — of
his similarly titled 2013 documentary about
the Maywand District Murders.
ドキュメンタリー映画のサガとして、タイムマシーンがない限り、その事実そのものを描くことはできないし、監督がNPRのインタビューで述べているように「答えられない質問、不可能な選択、特に私たちがどのような人間であるかを試されるような難題に直面している人々に本当に興味が惹かれます。人が正しいとか間違っているとか区別できるのに、先の見える可能性のある決定をすることを余儀なくされたときの私たちの行動をたとえそれが正しいことが明白な事を意味するとしても、私たち自身に害を及ぼすことがあります。そして、それらの様々な場面の道徳的優先順位そのものが私にとって魅力の対象です。」またThe Moveable Fest に対しては、「ドキュメンタリーは、しばしば非常に客観的な映画製作であり、これは私が製作した物語を客観的な視点からとらえ、より内面的で感情に基づいた方法で主観的な体験を生み出そうとする機会でした。」
つまり、いくら当事者のインタビューやアーカイブス検証を重ねたとしてもあくまでも客観的な内容だけにとどまり、本人の当時の様子や内面的な感情を描き切れないドキュメンタリー映画製作者ならではのジレンマが本作品を作るにあたって彼らしい映画観なのかもしれない。
"The only thing necessary for the triumph of evil is
for good men to do nothing" 「悪が勝利するために必要なたったひとつのことは、善良な人たちが何もしないことである。」.. エドマンド・バーク(イギリスの政治思想家、哲学者、政治家)
この映画は、戦争が良心の魂を取り除く方法をはっきりと描いている...
"Kill one man, and you are a murderer. Kill millions of men,
and you are a conqueror. Kill them all, and you are a god." 「一人を殺すと、あなたは殺人者になり、何百万人もの人を殺すと、あなたは征服者です。すべてをせん滅すると、神になれます。」.. ジャン・ロスタン("Thoughts of a Biologist". 1939)
と同じようなセリフがチャップリンとしては珍しいコメディ色の薄い映画『殺人狂時代』でも
"Wars, conflict - it's all business. One murder makes a villain; millions, a hero. Numbers sanctify, my good fellow!" 「戦争や紛争、これは全てビジネス。一人の殺害は犯罪者を生み、百万の殺害は英雄を生む。数が(殺人を)神聖化する!」
The only... The only distinction is : What was in his brain at
that moment? Was he a willing participant or not?
2013年のドキュメンタリーの中での軍事法廷の弁護士の言葉「自分から進んで狂気に走ったのかが、裁判の行方を左右する」という言葉に個人的には、道義的責任はあるかもしれないけどこの映画『キル・チーム』を見ていただければ、狭い軍隊の中で孤立する姿を見れば彼、アンドリュー二等兵の志願して入隊した軍というモノに対する愛国心のやるせなさが理解できるかもしれない。
今のところ他国の軍や自衛隊任せで戦争を経験することはないし、出来ないニッポン国.. そんな派手な戦争映画ばかり見ている人民に対しては、毛沢東の造語 "反面教師" という言葉を思い出す... この映画を現代のパワハラの反面教師として置き換えるといい感じの映画かもしれないけれども、これを戦争活劇映画と捉えるなら物足りないのかもしれない。
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