「結婚式で疎外感を味わう男女はどちらも異次元の体験者」パーム・スプリングス 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
結婚式で疎外感を味わう男女はどちらも異次元の体験者
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ここ数年、タイムループ映画が多い気がする。パイオニアは言うまでもなくビル・マーレイ主演の『恋はデ・ジャブ』(93)だが、同じ1日が何度も巡ってきて、そこから抜け出せない主人公の徒労感と言うか閉塞感はあの映画でフォーマットが完成した気がする。なのに、またまた現れた新手のタイムループ映画がこれ。何が新しいかって、本作でループにハマる主人公のナイルズには、サラという仲間がいるのだ。彼らは何が起きても常にリセットされる人生に、何らかの意味を持たせようと努力する。意味とは、2人の関係性だ。ただただ時間が回転する空間を共に生きる相手が、果たして、自分にとって意味のある存在なのか?という。キャラ設定がうまい。誰も知らない異常な時間軸を往来するナイルズとサラは、どちらも結婚式というお定まりの儀式に全然馴染めないでいる。その疎外感がタイムルーパーにはぴったりなのだ。また、舞台になるパーム・スプリングスの閉ざされた砂漠の街感が、この話にぴったり。ちょっと郊外まで歩いたら何があっても不思議ではない、という。最も笑ったのは、ナイルズとサラがループに対して自暴自棄というか、むしろだんだん挑戦的になっていく件。これは、巻き込まれ型ループ映画の意外な新規軸かもしれないと思った。現在、もう1本のタイムループ映画『隔たる世界の2人』(今年のアカデミー短編映画賞候補)がNetflixで配信中なので、こちらも強くオススメします!
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