「さぁ、しまっていこう!」野球少女 ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
さぁ、しまっていこう!
一人の少女がプロ野球選手を目指す…。物語の筋だけ追えば、スポ根モノのド定番となる内容でありながら、ストレートな展開に持ってこないのが本作のミソ。何しろ試合のシーンがほとんど無いという点も本作が変化球勝負のスポ根映画であることを物語っている。
それもそのはず、本作は野球界という男社会と向き合いつつもプロを目指す、試合以前の戦いに主軸を置いているからである。言うなれば、実力云々以前にピッチャーマウンドに立つまでが物語の肝となる。しかし、女性蔑視や男女差別という問題を取り上げつつも、重苦しい内容になっていないのは、主人公がただ直向きにプロを目指すからに他ならない。
周囲のネガティブな声や性別に関する偏見が多いのに対し、主人公はそのことに不平不満を漏らすよりも、あくまでも一選手として自分の夢を追いかける。男性に力で劣るなら、技術で挑む。中盤の展開はやや単調にも感じるが、入団テストのシーンは一球一球をじっくり見せるという粋な演出がツボに刺さる。
しかし、個人的に一番のツボは本当の物語はここからだ、と感じさせるラストシーン。「さぁ、しまっていこう!」そんな声を彼女にかけたくなるほど清々しい気持ちで私は映画館の座席から立ち上がった。
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