劇場公開日 2021年3月12日

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「理想と迷宮は紙一重。地獄にもなり得る。」ビバリウム Chainさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0理想と迷宮は紙一重。地獄にもなり得る。

2021年3月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

マイホームを持ち、家庭を築きたいという「理想」。
概ね誰しもがそのような「理想」を描いたことがあるだろう。
しかし、それは抜け出すことのできない「迷宮」であるかもしれない。
家を買い、子供を産み、育て、死に、またその子供が家を買い、家庭を築く。
それは「理想」であるが永遠に続く「迷宮」でもあり、場合によっては「地獄」にもなり得る。
しかし、人間には少なからずも欲望があり、「理想」を描いてしまう。
それは人によって様々で、大きくもあり、小さくもある。
もし、それが今手に入るなら?
喜んで手を出してしまうだろう。
だから、このようにまんまと「理想」というワナにはまって抜け出せなくなってしまうのだ。

本作は様々な作品からの影響も受けつつ、極めて芸術的かつ斬新にこれを描いている。
あまり見ない挑戦的な作品だ。

本作の世界観はまるでマグリットの作品を彷彿とさせるような、美しいほどにシンプルで、夢にも見そうなまさにシュールレアリスティックな世界。
それが故により一層恐怖感を覚えるのであろう。

登場人物も少なく、割とシンプルに淡々とストーリーが進んでいく。
その中でも、イマージェン・プーツの演技は目を見張るものがあった。
愛らしい顔からは想像もつかない、『ヘレディタリー』でのアニー・グラハムを思わせるような怪演。
絶叫する表情表現は見事で、思わず引き込まれてしまった。

いくつか伏線もあって詮索するのも面白いが、できればただ純粋にこの世界観を楽しんでほしいと思う。

Shota