「いわゆる癒し系。最後、わかりにくいところは事前の情報必要かも(長文)。」世界で一番しあわせな食堂 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
いわゆる癒し系。最後、わかりにくいところは事前の情報必要かも(長文)。
今年34本目(合計101本目)。
もう、映画のタイトルからこんな内容ですよっていうのがわかるような内容ですね。
ほとんどネタバレという概念が存在せず、最初に少し不穏当な表現が出るものの、そのあとは仲良く進み暴力シーンも(ほぼ)ないです。将来、料理店で働きたいと思っているお子さん(男の子でも女の子でも)と一緒に行かれると良いかな、と思います。
他の方も書かれていましたが、中国料理(とはいえ、日本で普通に想定するラーメンや麻婆豆腐、餃子などは出てこない)に関しては日本は隣国であること、医食同源の考え方もある程度実践されている(学校給食など)ことから、アジア圏以外の方から見た場合とは印象はやっぱり違いますが、それを言い始めると換骨奪胎になりますからね。
ちなみに、トナカイ料理は実際に存在するようです(北海道でも一部、名産としてソーセージ等売られている模様)。
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▼ エンディング前のわかりにくいところ(星空を見上げるシーン)
・ 短いところですが、なかなかにマニアックで、かつ、理論的に怪しいところが…。
順に行きましょう。「あれがアークトゥルス、一番明るい星なの。そして、あっちはカペラね。」という部分。この部分です。日本では星座は小学4年でしか習わず、いずれも1等星ですが小学理科で習うようなものではないので難解です。
(大阪市基準)
アークトゥルス:うしかい座のアルファ星、-0.04等 2月20日23時ごろから
カペラ:ぎょしゃ座のアルファ星、0.08等、2月20日20時ごろから。
(参考 シリウス:おおいぬ座のアルファ星、-1.47等、2月20日20時ごろから)
さて、フィンランドは日本よりさらに高緯度で北緯60度ほどです。こうなるといわゆる白夜現象が起きるので、あたりの風景から日時を特定することはできません。しかし、この3つの星が見えるときには、通常シリウスは高さ10度ほどで見えます(フィンランドの北緯60度基準、プラネタリウムソフトで確認)。すると「アークトゥルスが一番明るい」は明らかに誤っています。
一方、高さ10度ほどしか上らないので(日本のカノープスの扱いに近い)、それを除外して考えると、アークトゥルス(-0.04)←ベガ(0.00)←カペラ(0.08) の順で、上記の通り、シリウスは見えないと考えると、カノープス(会津若松市より南でしか見えない)・ケンタウルス座アルファ星(日本では、沖縄でしか見えない)を除けば、確かに北緯60度ではアークトゥルスが「最も明るい」ことにはなります。
しかし、ヒトの視力は明るさ差0.7がないとその明るさを識別できません(好条件な場合の理論的な話。通常は現代人の視力は落ちているので、この理論通りにならない)。
そうすると、0.7等差がないと明るさを区別できないのに(この考え方では、アークトゥルス(-0.04)とアルタイル(0.77)が、ほぼ0.7等差です)、わずか0.12等級差で「アークトゥルスが一番明るい」というのは、この条件では積極的な意味が見出しにくいところです(フィンランドの小学校の教科書にそんな細かい僅差で一番明るいとか書くの?)。
ちょっとこのあたり、説明が怪しいです(どちらに解釈してかなり微妙な発言)。かつ、アークトゥルスもカペラもどちらもそうそう学習するような内容ではないので(実際、中学入試の天文問題に出るレベル。1等星とはいえそこまで習わない)、日本の天文学習の現状を考えると(事実上、高校地学は存在しない科目と化している)、ここはちょっと字幕の丁寧さがないかなと思いました。
※ なお、映画には直接この天文についてこのあと発展する要素が一切ないのに、ここだけ妙にマニアックなことを言ってくるので、「え?エンディング近くになってまた固有名詞??」という方も出てくるかな…とは思います。
評価は下記の通りです(4.9を5.0まで切り上げています)。
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(減点0.1) 上記の点が明確に気になった(「一番明るい」と「シリウスを除外するとするなら、わずか0.12等差をどうこう言うのか?)点です。しかも、この映画で星を見ること自体にあまり意味がなく混乱しかねない(字幕も日本の今の天文を取り巻く環境を考えると不親切な)点。ただ、字幕作成者には工夫の余地はあっても内容を変更する権利は当然なく、もとの怪しい発言は主人公の実際の発言なので、ここは「わかればよい」という点で0.1どまりにしました。
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