「中国人でなかったら…」世界で一番しあわせな食堂 ミーノさんの映画レビュー(感想・評価)
中国人でなかったら…
フィンランド北部ラップランドで、実は料理が苦手な女性が一人で切り盛りする地元の老人の溜まり場的なレストランに、突然中国人父子がやって来る。会う人片っ端からお辞儀をして、ある男性を知らないかと訪ねて回り、それを冷めた目で見てスマホゲームばかりしている反抗的な小学生の息子。探し人の手掛かりが全くないので途方に暮れている親子に、余っている部屋(一軒家)を提供するレストランのオーナー、シルカ。翌日もレストランで人探しを続ける親子と、距離を取るレストランの常連客。そこに、中国人ガイドが中国人観光客を大勢連れてレストランへやって来た。定番料理のポテトとソーセージを見て、ネガティブな反応を見せる観光客達。シルカが困っていると、中国人の父親が急に、私が、と名乗り出て、隣接のスーパーで食料を買い込み麺料理を提供する。実はこのチェンは上海で高級レストランのシェフをしていたのだった。それが評判となり団体の中国人観光客が次々にやって来て、チェンは腕を奮うが、給料は受け取らない。最初は「あんな料理」と言っていた常連客も、美味しそうに食べる人達を見て自分達も口にし始め、中華料理の美味しさを知る。そうしているうち、チェンが探していた人は発音が悪かったため誰も気づかなかったが、数年前に亡くなっていた人だったと判明。それであれば、と帰国準備をしていると、既にレストランとシルカにとって欠かせない人となったチェン達をシルカが引き止め、しばらく滞在することにする。チェンはトナカイ肉を使った料理や“医食同源”の体を癒すスープなどで、すっかり地元民に受け入れられる存在になり、フィンランドのサウナを教えてもらう。地元の小学校から見学に来て、息子を子供達と遊ばせたいと考えたシルカは、彼に自転車を買ってあげるが、チェンは自転車で遊ぶ息子を激怒、亡くなった母親は自転車での事故だったと話す。徐々に距離が縮まる3人、チェンもシルカの過去を尋ね、離婚歴があることを知る。
そんな時、村で歌手のコンサートが開かれ、皆ダンスをするので、シルカはチェンにかダンスを教え、3人でコンサートに行く(ムード歌謡みたいな歌)。
ある日、常連客でもある警官が、チェン達のビザが切れて不法滞在であると知らせに来る。チェンが既に特別な存在になっているシルカは耐えられず、それを察して常連客達がチェンをイカダ?のクルーズに連れ出す。酒を酌み交わし、歌を歌い、またチェンの歌も聞く。
今では料理だけでなく村人みんなで太極拳までしている。シルカはチェン親子と中国で結婚式を挙げ、スマホで中継するのだった。
結末としては共通点の無い男女が結ばれる恋愛話だが、北欧の田舎の人々が異文化と異邦人を徐々に受け入れて行く様子が良い。ただ、彼らはよそ者に対して戸惑いは見せたものの排除の様子は見せなかったので、もともと寛容な人たちである。また、ラップランドの清々しい空気が伝わってくる。
一方、コロナ前、中国人が爆買いしていたのが記憶に新しいのと、中国が世界第2位の大国として影響力を拡大しつつあるため、単に多様性の受け入れと映らない(受け取れない)のは否定できない。中国でなく、ベトナムなどもう少し小国であった方が良かったのでは…、と思うが、小国だとラップランドまで団体で行かないよなー。
最初に来た中国人団体客が「お寿司はないの?」と聞いたり、チェンがいちいちお辞儀をしたり、中国人への理解がおかしい気もした。チェンの中国語の歌を知っている筈もないのにアコーディオンで伴奏するのはご愛嬌。
チェンは朝日放送の岩本アナと三宅弘城を足して2で割った感じ?シルカはすこしリース・ウィザースプーンに似てる?