返校 言葉が消えた日のレビュー・感想・評価
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台湾における表現の多様化と、ひるがえって日本における表現の不自由さを思う
台湾の独裁政権が言論弾圧し密告も奨励していた「白色テロ時代」(1940年代後半から約40年間)を題材にしたホラーゲームの映画化だそう。これまで台湾映画で白色テロ時代が扱われたのは「悲情城市」「牯嶺街少年殺人事件」などの例があるが、そうした暗い時代を真摯なドラマやサスペンスとしてではなく、超現実的なホラー作品としてエンタメ化した姿勢に、近年の台湾における表現の多様化を見せつけられた思いがする。
1960年代の台湾、自由を称える書籍の販売や閲覧が禁止されている時代の高校が舞台。女子高生のファンが教室で目を覚ますと、校舎全体が闇に包まれ廃墟のようになっていた。ひとけのない校舎で遭遇したのが、彼女を密かに慕う男子生徒ウェイ。そして、2人に迫る謎の存在…。
回想される高校生活で、ファンが美術教師のチャン先生を慕っていること、チャン先生が密かに組織した(禁書を読む)読書会にウェイが参加していることなどが明かされていく。読書会をめぐって起きた事件と、闇深い校舎にファンとウェイがとらわれた状況は、何か関係がありそう…。
主人公が非現実的な空間に迷い込むという点で「サイレントヒル」を想起させる(ゲームが原作の点も共通する)が、本作が歴史上の暗い時代を背景にしたことで、物語の深みが増し、観客に言論統制下の社会で生きること、言論・表現の自由があることについて考えさせる内容になっている。
日本で似たような暗い時代といえば、20世紀前半、特に第二次大戦前から戦中にかけての時期が該当する。この頃をシリアスに描く映画は数多く作られたが、権力者に思想や言論まで支配される理不尽さや恐ろしさを物語の要素に昇華させる喜劇やホラーなどのエンタメ作品は、三谷幸喜の「笑の大学」などの例外を除きほとんど作られてこなかったのではないか。「犠牲者も数多く出した暗い時代をエンタメ化するなどけしからん」といったクレームをおそれて自粛してしまうのか、権力者への忖度なのか。この「返校 言葉が消えた日」を観て、日本における表現の不自由さも考えてしまった。
白色テロを知るきっかけに
もともとゲームをやったことがあったのだけど話が抽象的すぎてあまり理解は出来なかった。そのゲームの実写映画化ということで改めて見てみたがゲームよりは話の流れがわかりやすかったように思う。しかしどうしても前衛的に作られているので理解が追いつかない場面も少なくなかった。
ただ、ファミコンのホラーゲームなどにありがちな細かい部分がよくわからないからこそ脳内で補完する恐怖、に通ずる見た人が勝手に感じる怖さをうまく引き出せているんじゃないかと感じました。
もともと返校は台湾で行われていた白色テロを多くの人に知ってもらいたい。作品として記録に残しておきたいという前提で作られているのだが、映画の内容はファンタジー寄りで直接白色テロについてはあまり描かれていない。
しかし、この作品と出会ったことが今までよく知らなかった白色テロやニ・ニハ事件について調べるきっかけになった私のような人も少なくないと思うのでエンタメ性に振り切った内容になってるのは悪くないと思う。
この映画の監督の意図を汲むとしたら、映画を見たあとに台湾の白色テロとはなんぞや?と調べるまでをワンセットとしてこの作品は完成するのではないかと思いました。
余談ですが、ホラーは雰囲気が良ければ細かいストーリー等はよくわからなくても楽しめる自分にとってはなかなか良い雰囲気の作品でした。
レビュー
台湾で言論弾圧が行われていた「白色テロ時代」を舞台にしたホラーゲーム「返校」の実写化。
自由な思想が禁じられ、密告が蔓延していた当時の雰囲気や感情が、非現実なホラーとして表現されていて凄く伝わってきました💦
作品としても満足感ありつつ、当時をもっと知りたくなった🦊
大切にしたい民主主義
主役のファン・レイシンを演じたワン・ジンさんはリアル美女JKに見えますが、撮影は台湾公開よりも結構前だったのでしょうか。
察しのいい人やこの映画の元になった大ヒットゲームをプレイ済みの人は、何が虚構で何が現実なのかが分かったのかも知れません。あまり察しの良くない私は分からないまま鑑賞していましたが、だからといって話に付いて行けないということはありませんでした。元になったゲームの世界観をこの映画が再現しているのだとすると、ゲームも相当面白そうです。映画とは違う結末にもなるでしょうし、色々な結末を楽しめることを期待しますが、ゲームらしくクリアやコンプリートもあるのでしょうか。
この映画を見たらここで描かれている1962年の戒厳令下から台湾がどの様に民主化を実現したのかを知りたくなりました。私なりに調べたところ、或る文献に「時の総統・蒋経国(蒋介石の息子)が1970年代初めの米中接近により生じた対外危機への対応として漸進的な民主化を始めざるを得なかった。」とありました。それ以上のことは分かりませんでしたが、一つの中国思想に傾倒しそうなアメリカを、民主主義陣営の一員になることで繋ぎ止めようとしたのかも知れないと推測します。
最近ではニジェールで軍事クーデターが起こるなど民主主義の国は減少傾向にあるとのことで、民主主義の維持は口で言うほど簡単なことではなさそうです。普通選挙を行ってはいてもその実野党を弾圧してせっかくの選挙が出来レースと化しているエセ民主主義の国もたくさんありますし。日本もちょっと心配です。空気を読みがちと言われる日本人の国民性は、言論の弾圧に対して抗しがたい性質と言えないでしょうか。いつぞやの放送法の解釈変更は、自由で開かれた言論への圧力がひたひたと迫っている兆しではないでしょうか。
ゲームを先に知っていましたが、ストーリーはほぼ忘れた状態&特に前情...
ゲームを先に知っていましたが、ストーリーはほぼ忘れた状態&特に前情報を入れずに鑑賞。
(物語の時代背景やキャラクターについては作品の中で説明されるので、その状態でも全く問題ありません)
裏世界(?)やクリーチャーのデザインが良かったです。
血やグロテスクな描写が割としっかり映されるので、苦手な方は注意!
1962年、台湾での国民党政権下の白色テロ時代の市民による相互監...
1962年、台湾での国民党政権下の白色テロ時代の市民による相互監視と密告の強要。勉強不足であまり詳しく知らなかったので、また一つ映画で歴史の勉強になりました。
主人公がうたた寝をして目覚めてからが、夢の中の出来事だったのか,実際に彼女が体験したことなのか分かりにくかったが、政権下の弾圧、拷問などの恐ろしさは充分伝わる。ホラー的な怖さはあまりなかったけれど、不気味な雰囲気はあったし、なんといってもワン・ジンがとても綺麗。
読書が禁じられていた時代の台湾の学校。 普通に作ればよかったのに、...
読書が禁じられていた時代の台湾の学校。
普通に作ればよかったのに、幽霊だの化け物だのを登場させ、安っぽいホラーになってしまっている。
残念な作品だ。
良くわかりません
今ある状況を普通と感じていると、いざという時に対応できない。人生裏切り、裏切られ状況がたちまち変わることがある。それでも生きていく そんな話。
台湾にも、過去の日本のように自由を奪われていた時代があったことが勉強になりました。
今台湾は中国に飲み込まれそうになっている(中国にも自由はあるが、アメリカホドでもない)現状を、今後どうするのか、ウォッチしたくなりました。
こんな映画が作れるほど良い国なんだね台湾は‼️
ホラー仕立てですが、ようは戦後の赤狩りのゲーム仕立ての映画化なんだとようやくわかった。
恋愛も拷問もリアルで映像も素晴らしい。
でも、なんか中途半端で、怖さも、感動も🥲さほど感じないトホホ映画でした。
少女の演技が印象的なだけに残念です。
それほどえぐくないので軽い感じで観れそうです、チープな感じもないし。
多分、これから中国から侵攻を受けそうな気配ですが、中国の歴史と現状と未来を描いたら、この映画の千倍えげつないでしょう。
台湾を知るための端緒として、是非。
時間を超えて二人の少女を繋ぐラブストーリー
軍政化の台湾のとある田舎の高校で起きた、事件。ストーリーは現代の、とある田舎の高校に転校してきた少女が体験する過去の事件。
SFラブストーリー。
大人たちの身勝手な保身や、都合に振り回されて、それにすがるしかない自分の立場に苦しむ高校生たちの姿を描く。
(原題) 返校 Detention
2017年に発売された台湾の大ヒットホラーゲーム「返校」を実写映画化。
台湾の歴史と現状を良く知らないから、少し難しい映画だった…しかしゲーム→映画→ドラマと展開するこの作品、他も体感したくなりました。
【”苦悶の象徴”暗黒の台湾白色テロ時代を背景に、“全てを壊したかった・・”悲しき密告者の恋物語を、ホラーテイストで描いた作品。】
ー 台湾白色テロ時代(1947年から1987年の戒厳令解除までの長き時代)
1947年の二・二八事件での蒋介石率いる国民党による人民弾圧以降の反体制派への政治的弾圧。国民同士が、相互監視と密告を強要され、自由、文化が著しく停滞した暗黒の時代である。-
◆感想
<Caution 内容に触れています。>
・女子高生ファン・レイシンが、いつの間にか誰もいない校舎の中で目を覚まし、経験した台湾白色テロ時代の凄惨な光景。
そして、彼女自身も白色テロ時代に生きている事になっている、設定の妙。
ー やや、戸惑う部分もあるが、面白くって怖い・・。ー
・彼女の同級生のウェイ・ジョン等と、秘密の読書会で禁書を書き写す日々。
そこには、彼女の憧れの生活指導のチャン先生も関わっていて。
けれど、チャン先生を思う、女性ピアノ教師がリーダーで・・。
ー チャン先生が、彼女に渡そうとした、首飾り。そして、処刑されてしまった先生が遺した手紙の最後の言葉。ー
・ファン・レイシンの両親は不和で、軍人の父親にも、宗教にのめり込んでいる母親にも、共感できない。
ー 心の拠り所が、欲しかったんだね。それが、あの行動に出た理由なんだね。ー
・時は過ぎ、大人になった”彼”は、取り壊しになる且つての母校を訪れ、禁書であった”苦悶の象徴”をチャン先生の思いが残る色褪せた水仙の画の裏側から取り出し、じっと見つめる。
<ストーリー展開が、やや粗いが怖ろしくも哀しき世界観をホラーテイストで、絶妙に描いた独特な蠱惑的な雰囲気が妙にココロに残る作品である。>
<2021年9月19日 刈谷日劇にて鑑賞>
「学校の怪談」抜きにしてくれませんか。
ウェイ・ジョンティンの悪夢の中で、ファン・レイシンを媒介し、過去の現実を掘り起こして行く構成で、建て付けはホラーなんですが。
かつ、台湾ファンタジーで台湾ラブストーリー。もう、この欲張りで意味不明な構成からの切なさが台湾らしくてですね。特にラスト近辺の「ラストレター感」は何なの?
と言うか。
冒頭30分のホラーから、助平根性丸出しに、下心を隠す気もなく、切ないラブストーリーに強引に落とす台湾国民に敬礼したいですw
蒋介石による「赤狩り」の時代。女子高生と教師の道ならぬ恋。嫉妬が招いた取り返しのつかない悲劇と来世の契り。
これ。ホラーの建て付け、要る?普通にファンタジーでやれば良くない?
ってのは、あるけれど。
良かった。かなり
原作に対する見事な返歌となっている一作。
本作の予習と思って原作であるゲーム版『返校』を体験したら、あまりの恐怖におののた(ホラーゲームは苦手…)観客による感想です。
予告編でも示されているように、本作の舞台は、「白色テロ」と呼ばれる、中国国民党政府による政治的弾圧の渦中にあった1960年代の台湾です。同様の時代を扱った映画としては、侯孝賢監督作品『非情城市』(1991)やエドワード・ヤン監督作品『牯嶺街少年殺人事件』(1991)などがありますが、本作にもこれらの作品を連想する要素が頻出します。この既視感は、単にこれらの作品の時代背景が類似している、というだけでなく、原作の『返校』自体、前述のようないわゆる「台湾ニューシネマ」の影響を強く受けていることも要因となっています。映画に影響を受けたゲームを映画化するという、本作自体が表題のごとく、「戻ってきた」ものなのです。
せっかく恐怖に打ち震えながら原作のゲームを体験したので、原作(ゲーム版)と映画版の違いを少し挙げておくと、原作は道教といった宗教的な要素を強く打ち出していますが、本作では政治的弾圧の側面を強調しています。特に幽霊の造形にその違いが顕著に表れています。
基本的な物語の筋は概ね一致していますが、映画版では男子学生ウェイの存在感が大きくなっている点が原作と最も大きな相違点です。また映画版では、全体的に原作ではあまり詳細に描かれなかった「読書会」や「弾圧」の描写にかなり力点を置いているため、原作では良く分からなかったところが上手く補われています。
女子学生ウェイの抱える鬱屈がかなり大きな意味を持っている作品ですが、原作は主人公二人の役割をはっきりと分けることで、この不気味かつ不可解な学校空間とウェイの心の関係がわかりやすくなっています。一方映画版では主人公二人をほぼ均等に描いているため、この空間が出現した意味がちょっと不鮮明となっていました。ここはちょっと残念なところです。
そんなごくわずかに気になるところはあるものの、全体的にとても良い作品でした。本作に感動した方は、原作のゲームを体験するとより一層味わい深いと思いますので、機会があればぜひおすすめしたいです(恐いけど)。
俺も、覚え続けます!
<鑑賞の前に知っておくとよい前知識>
第二次世界大戦が終わり、日本統治から脱却した台湾は、国民党政権下に入ったが、「イヌ(日本)が去って、ブタ(国民党)が来た」と人々に囁かれていた。特に、1947年の二・二八事件から1987年に戒厳令が解除されるまでの「白色テロ時代」、国民党は台湾国民に相互監視と密告を強制し、反政府勢力のあぶり出しと弾圧を徹底的に行った。
と、これだけの前知識を持って入ると、話がすんなり入ってくること、請け合いです。このシチュエーションはゲームのために空想されたものではなく、上記時代の台湾を実際に反映したものです。
台湾人が忘れてはならない負の歴史をストーリーに取り入れるという大胆な発想で大ヒットとなったホラー・ゲーム「返校」がもとです。
圧政のため学校内でも「禁書(読んではいけない本)」が当たり前な世界をおかしいと感じ、自由を求め続ける一部の先生と少数の生徒たちで秘密裏に行われる学校内の読書会。それを体制側(秘密警察)に密告したのはいったい誰か。どんな理由で密告したのか。それを謎解きしていく話。
これをホラーテイストの謎解きミステリー物として描く。ホラーは書いたようにホラーテイスト程度で自分でも耐えられるもの。ひんやりと、どうなることかと見続けるのは楽しい。
そこに描きだされるのは、残念ながら悲しい話だ。しかし、どんなことが行われてきたのかを知り、そこから抜け出そうとする動きがなぜ、どんな理由でつぶされてしまうのかを知ることは、今を生きる自分たちも、知っておくべき記憶しておくべき大切なこと。もっとも学ぶべきことは、「そうした環境下で密告しないためにはどうするか」 よりも、「こんな当たり前のことが "密告" という悲劇を生んでしまう、そんな状況を生み出したくない」 という気持ちだろう。みなが潜在的にその気持ちを持っていれば、自分の環境が "圧政" という忌むべき、きわめて不自由な状態になってしまうことを防げるのだと思う。
私たちには獣性があり、悪魔性ももっている。でも神性ももっている。
あなたは生き続けて。生きてさえいれば希望はある。生きていれば何かが起きる。誰かが生き続けて、全てを覚えておいてほしい。
夏の映画の半分くらいは、歴史からそれを思い出し学ぶ映画たちだが、本作はその中でも「エンターテインメント的で観やすく、かつ伝えてくる」いい映画だったと感じる。
「共産党のスパイ告発は、国民の義務です」
冒頭に流れるこの地域放送の声。いまはピンとこないかもしれないが、共産革命が全世界を席巻し始めた1950年前後には、戦々恐々とした民主主義国家の多くが似たような情勢にあった。いわゆる「赤狩り(Red Scare:共産主義の恐怖:共産主義者摘発公職追放活動)」に多くの民主主義国家が陥っていた。わすか70年前のことだ。戦時中日本の「(五人組という施策による)非国民狩り」等、密告により体制にあわない人たちをあぶりだす活動は、すぐにまた現れるかもしれないことを忘れないようにしよう。
「自分がこの人に政治をまかせたいと思う人に投票して選ぶ」権利をもち、「任せた人がなにを言い、なにを行ったか」を確認する権利をもつ世界が、なくなっていかないようにしたい。
ホラーとして観に行かないことをおススメ
ジャンプだとホラーなんだろうけど怖いというよりも不気味な描写が多い
元々は台湾のインディーズゲームでそれを映画化(ゲームも元々原作あるのかもだけど)で
ゲームをしっかりと再現しつつも、映画としてしっかりとドラマがあり
展開も二転三転とするので没入感も強い
最後にまつ結末は切なく一見の価値はあると思う
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