「ヒロアカはいつもヴィランがいい」僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ヒロアカはいつもヴィランがいい

2021年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『ヒロアカ』のヴィランは、説得力のあることを言うやつが多い。今回のヴィランもなかなか心理を突いてくる。今回のヴィランは、個性が人類を終末に導く「個性終末論」を唱えている(個性特異点とおなじことでいいのか)。『ヒロアカ』の世界では個性をみだりに使うことを法律で禁じているが、それはみんなが自由に個性を振るえば社会がとんでもないことになるからであり、そんな危険な力を持たせ続けることに危惧をいだく人間は当然いるだろう。「“個性”は世代を経るごとに混ざり深化し、いずれコントロールできなくなる」という主張には一定の説得力がある。
今回のヴィランがそういう主張する動機は、自身の個性で不幸になった過去を持つことにある。個性のせいで傷つくことになった人々もいるというのは、本編でも描かれているが、個性は多くの人を実に傷つける厄介なものでもあるんだろう。
これは現実社会の色々なことのメタファーとして読むこともできるだろう。個性を身体能力に置き換えて考えることもできる。あるいはテクノロジーの発達を解釈すれば、どんどん発展して高度になっていくテクノロジーはいつか暴走して、人間には止められないのではという恐怖とも繋げて考えることもできる。
本編のヴィランもいぶし銀揃いだが、今回の映画も光るものがあった。名ヴィランがいるから『ヒロアカ』はいつも面白い。

杉本穂高