オールド・ドッグのレビュー・感想・評価
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突然のボディーブロー。そのヘヴィな余韻は何処へ行く。
ラストは結構、驚くと知ってはいたが、もっと暗喩的な感じで終わりそうな気もしていたので、急に突然とダイレクトにボディーブローが来て、かなりヘヴィな内容だった。ちょっと犬好きにとってはトラウマかもしれない。
この監督は「羊飼いと風船」があまりにも素晴らしかったが、こちらは少し期待していたのとは違った。
役者は相変わらず皆んな素晴らしかったが、カメラワークや構図は期待していたほどではなかった。
色々としっくり来ない所もあり(宝物として扱われている筈の犬が、ご主人様である老人が迎えに来ても全く嬉しそうに吠えないとか)
プロット全体も個人的には退屈だった。
しかし、それゆえにラストの方が強烈なコントラストを放ったのだが。
何度も観たくなる映画でないし、たぶんもう二度と観ないとは思うが、おそらく一生忘れられない映画になってしまった。
最後、チベットの風景の奥の方へ去って行った老人の後ろ姿に、あまりに複雑な感情や思惑が様々に押し寄せて来る。
伝統や固有のネイションに深く根ざした魂や誇りといったものは、外の世界とは簡単に折り合いがつけられないほど強くてヘヴィであるがゆえ、合理的で現代的な理性だけでは制御できない業の深さがあるのかもしれない。
グローバリズムが普通にデフォルトとなっているような日常において、とても貴重な映画体験だった。
マスティフ(チベットの誇り)を失う?
千九百九十年ごろ、チベタン・マスティフ (Tibetan Mastiff) というチベット犬を父親の許可なしに売る息子。老人(息子の父親)の所有の犬で中国でビジネスの対象になっていて希らしい。だから、高値で買いたがる人が多い。老人(父親)は(Yanbum Gyal)『売らない』と何度も断るが、売らないと盗まれるよと、息子。息子のGonpo が(Drolma Kyab)売ったのを親戚の警察官(公安派出所勤務)に頼んでこの老犬を取り戻す父親。警察は車で息子は
ホンダのバイクで、この老人は馬で動くところがいい。
結婚して3年も経つが孫ができないと不思議に思い医者に行く費用を出すからといって、息子夫婦に行くことを進める。結果は嫁、Riksoには問題がないらしいが、息子は医者にもいかないし、嫁は義父にも何も言わない。息子は悩みやっと父お親に本当のことを話し、何か欲しいかという父親に対して、ビールを買ってきて欲しいと頼む。監獄でビールが許可になるのかと息子に聞くが、父親は息子の気持ちを察して買いに行ってあげる。父親はここで始めて息子の気持ちを考えてあげたと思う。チベットに住んでいるこの家族は伝統的な精神を持っている。例えば、妻であり嫁でもある女の役割や分担。嫁に問題がないと分かった時、家族に事実を告白することに時間がかかったり、息子夫婦の問題に口を挟む自己中でもあり家系を大切に考える父親。何も言えない嫁の立場。実権を握る父親。寡黙な嫁で父親にも夫にも仕え物静かな嫁。
病院の外にある大きな看板が読めない。字幕をつけてほしいね。中国の一人っ子政策?多分チベットは一人っ子政策外地域だと思う。なんて書いてあるのこの大きな宣伝文句?これが理解できることによっても私の感想がもっと書けるんだが。
この映画で好きなシーンは、伝統保持と近代化のコントラストだ。
馬とバイクや車
老人家族が住む家と公安警察所のある通りの家並み
老人家族の服装と嫁の妹や地域の人々の服装
老人家族の住んでいる場所の静けさとバイクや車や工事の音
金のネックレスのを持つ意味を持たない素朴な生活とテレビから流れる金のネックレスのテレビショッピング
伝統犬を守る老人と中国にマスティフを売る犬買い
チベットの伝統の中で生きる人々と中国の近代化の波に乗って生きる人
老人は『売らない』という言葉を何度も使っている。『チベットの誇り』は売らないという意味だと思う。最後は圧巻で父親の老人はチベットの伝統を決して中国政府に売らないと言う強い意志がマスティフを通して(比喩的表現)見られた。老人の目には涙が見られなかったから。それに自己中が加えられたから、終盤の顔つきは力強く感じられた。中国政府の介入や商戦にチベット(自治国)社会は翻弄されて、機能を失いそうになっている。伝統を頑固として守り抜き屈服しないよと言う終わり方だと思った。政治的見解の入っている映画に感じられた。
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