「突然のボディーブロー。そのヘヴィな余韻は何処へ行く。」オールド・ドッグ osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
突然のボディーブロー。そのヘヴィな余韻は何処へ行く。
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ラストは結構、驚くと知ってはいたが、もっと暗喩的な感じで終わりそうな気もしていたので、急に突然とダイレクトにボディーブローが来て、かなりヘヴィな内容だった。ちょっと犬好きにとってはトラウマかもしれない。
この監督は「羊飼いと風船」があまりにも素晴らしかったが、こちらは少し期待していたのとは違った。
役者は相変わらず皆んな素晴らしかったが、カメラワークや構図は期待していたほどではなかった。
色々としっくり来ない所もあり(宝物として扱われている筈の犬が、ご主人様である老人が迎えに来ても全く嬉しそうに吠えないとか)
プロット全体も個人的には退屈だった。
しかし、それゆえにラストの方が強烈なコントラストを放ったのだが。
何度も観たくなる映画でないし、たぶんもう二度と観ないとは思うが、おそらく一生忘れられない映画になってしまった。
最後、チベットの風景の奥の方へ去って行った老人の後ろ姿に、あまりに複雑な感情や思惑が様々に押し寄せて来る。
伝統や固有のネイションに深く根ざした魂や誇りといったものは、外の世界とは簡単に折り合いがつけられないほど強くてヘヴィであるがゆえ、合理的で現代的な理性だけでは制御できない業の深さがあるのかもしれない。
グローバリズムが普通にデフォルトとなっているような日常において、とても貴重な映画体験だった。
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