Swallow スワロウのレビュー・感想・評価
全34件中、21~34件目を表示
真綿で首を絞めるような孤独
明らかに虐待されたり、罵倒されてる訳ではないがジワジワと首を絞めるように追い詰められる主人公。夫(は本性現したが)・義父母・そして母の言外に込められた見下しや嫌悪感が主人公の自己肯定感を阻害し異食症へと引き摺り込む。
その存在を肯定してくれたのが母親をレイプした男と言うのがなんとも皮肉だし、この男を「罪を猛省し過去の自分と決別して新たな人生を歩み始めた者」と見るか「女の人生を潰し(男が「俺の人生を壊す気か」と言った時はお前が言うなと心の中で叫んでしまった)不幸な子供を生み出したくせに自分は幸せな家庭を待ったクズ」とジャッジするかは難しいところなのだが、主人公を唯一肯定してくれた存在という事だけは事実なので見終わった後もずっと考えてしまう。
とんでもない物を飲み込もうとする怖い衝動の物語。
何処か刺激的かつ魅惑な感じなのと、ポスターのヘイリー・ベネットに目を奪われ、興味があって観賞しましたw
で、感想はと言うと、まあまあw
作品ジャンルがスリラーと書かれていましたが、スリラーと言うよりかはサスペンスドラマと言う感じ。スリラー作品として観ると結構スカされる感じです。
新婚のハンターはニューヨーク郊外の邸宅に夫と住んでいるが、完璧な夫と養父母はハンターを何処か蔑ろにする感じからハンターは虚無感を感じる生活を送っている。
ある時、妊娠が発覚し、待望の第一子を授かり歓喜の声をあげる夫と義父母であったが、ハンターの孤独はますます深まっていく。ある日、ふとした事からガラス玉を呑み込みたいという衝動にかられるたハンターはガラス玉を口に入れ、呑み下すのだが、痛みとともに得も言われぬ充足感と快楽を得る。それが次第に様々な異物を「呑み込む」ことで多幸感に満ちていくがより危険な物を口にしたいという欲望に取り憑かれていく…
と言うのが大まかなあらすじ。
ハンターと夫家族との虚無感は何処か生い立ちからの劣等感にも感じるが、完璧過ぎると言うか、金持ちの相手を敬うと言いながら、何処かマウントを取る、振る舞いや言動・行動がなんか鼻につくと言うのはよく分かります。
本人はそういうつもりが無いにしても、側から見ていると行き詰まる感じのプレッシャーと言うか、他人にもそれを無言の圧力で強要してくる。自分だったら無理ですわw
そんなハンターの息苦しさは凄く分かるんですが、それでも異物を呑み込むと言う「異食症」と言うのはちょっと理解出来ない。
だが、小児と妊婦に多く見られる症候との事で、子供の時におもちゃとかを口にする感覚をなんとなく思い出した。
それでも飲み込もうとは思わなかったし、当時はストレスではなく好奇心の方が優っていたと思うがハンターの異食症は明らかにストレスからの物。
夫家族からの疎外感というか見下した様な感覚のストレスで異質物を飲み込む事での達成感や支配感にハンターは苛まれると同時に取り憑かれる訳ですが、これは無理だろ?と言う物を口にした時はさすが共感は出来ないけど、そんな物を飲み込む衝動に駆られ、自身を傷付けてしまうジレンマに陥る異食症の人の悩みは想像に絶します。
話のテンポが早くて、次々と明らかに危ない形の物を飲み込んでいきますが、個人的には止められないと分かりながらも治療を拒絶し、家を飛び出るハンターが結構ワガママにも映ります。
夫家族の悪意無き見下した感覚は分かりますが、もうこれは「相性が合わなかった」と言う所に落ち着けても良いのに、家を飛び出して、自身の出生の秘密となる父親を訪ねたり、結果堕胎を決意する迄落ち詰められていたと言うのは気の毒と言うしかないけど、そこに至る迄がやはり身勝手に移るんですよね。
夫とその義理の父母が大嫌いだったとしても、もう少し折り合いがつかなかったのか?とも思えるし、全くハンターに興味が無いと言う訳でも無い。悪気無いと言うか鈍感でもなんとか良くしようと言うのは分かるんですよね。薄っぺらいですがw
様々な物を異食し、逃げ出して飛び込んだモーテルで土を食べる程、心身ともに衰弱していたとしても、待望の子供を授かって、勝手に堕ろされたハンターの夫の気持ちも気の毒な感じ。
何よりも結婚して、夫婦二人が同意の元で妊娠したのに「私は実は子供なんて欲しくなかった。こんな夫と一緒には居たくもなかった」としても堕胎するのってどうなんだろう?
ただ、出産は女性に多分な影響を与えるだけに男が言う事は何処か他人事に感じるのかも知れませんがちょっと思ったりしました。
ラストの洗面所での様々な女性の化粧直しの様子がエンドロールとして流れるのを見るといろんなドラマがあって、ハンターの新たな旅たちと共にそれぞれの女性のドラマを紡ぎだす場とすると男が考える以上にいろんな思いがあると言うのを改めて実感します。
異食症をテーマに一人の女性の苦悩と葛藤、旅立ちが描かれていますが、どの立場で共感する事で感想は変わるかな。
ですが、ハンター役のヘイリー・ベネットが個人的には良いかなと。面倒臭そうですがw
色々と考えさせられる作品で、女性の方は多く共感出来るかもです。興味がありましたら、如何でしょうか?
ジャンル映画として敬遠して欲しくない、万人に勧めたい傑作
異物を飲み込んでしまう女性のサイコスリラー的ジャンル映画として敬遠して欲しくはない、万人に勧めたい女性の生きづらさと社会の歪みを描いた真摯な作品。
ヘイリー・ベネットの演技力と美しさが際立っていて、それだけでも見る価値がある。
加えて、映像と画角も非常に美しい。それがかえって作り物のような冷たさを感じさせ、広々とした洗練した家の中にポツンと残された彼女の姿が、世の中から遮断された圧倒的に孤独な存在に見えるのだ。
更に凄いのが、彼女が飲み込む“異物”たちが神々しくすら見え、本来の食べ物がそれはそれは不味く見える演出だ。ビー玉はもちろん、より鋭く毒々しいものにエスカレートしていくのだが、彼女が憑りつかれたように飲み込む物たちが、美味しそうとまでは思わないが魅惑的に映り、家族ではあるが心が通わない他者と口にする食べ物は、なんとも気持ちが悪く見えてくる…。
そんな中で、自国から逃げてきたシリア難民の使用人、唯一の理解者となる彼とは、何かを一緒に口にすることは無かった。その代わり、彼女と対等に会話が成り立つ相手として描かれていた。表情こそ硬いが、命に関わる逃避を経験した彼だけが、彼女とはまた違う形ではあるが「生」と向き合ってきた人間であり、自分自身と自分のお腹の中にある「生」に苦しむ彼女に寄り添うことができるのだ。
彼女には友達と呼べる人がいなかった。そして親族についての話題も出てこなかった。それは何故かということが中盤以降に明かされるのだが、その事実はあまりにも衝撃的で。彼女自身が自分の出自に強い後ろめたさを持ち、人生をリセットするための結婚だったからこそ「私は失敗したくない」という言葉が重たく響く…。
そのような自分の出生と向き合うための実父との対峙シーンは、まさに異物が喉を通り胃に落ちていくような苦しさが、見ている側にも生じた。と同時に、やっと彼女が自分自身を“飲み込む“・・・、つまり受け入れ、赦すことができたのだと思うと、自然と涙がこぼれた。最後の公衆トイレのシーンで、彼女が放ったものを見届けた時は、痛々しくもありながら、文字通り溜飲が下がった瞬間だった。
そこから繋がるエンドロール…
冒頭に書いた「作り物」のような感覚を持って見ていたことが、映画のスクリーンを超えて、今この世界で、どこにでも起こっていることなのだと、多くの女性が苦しみ戦っているのだと、フィクションがリアリティへと転換し、突き刺さってくる鋭いエンディングだった。
題材は面白いけど伏線が弱すぎて感情移入できない
感想を簡潔に書くと、「異食症という題材は面白い。でも伏線が弱いな、分かりにくいな」です。
この作品、大事なことがあまり描かれていないんですよね。もしくは薄い。例えばハンターとリッチーの馴れ初めは一切描かれていません。
何でハンターはリッチーのようなお金持ちと結婚することができたのか。ハンターは何故リッチーと結婚したのか。これを描いておかないと、観客はついていけないんですよね。感情移入ができない。ハンターが孤独なのは分かるし同情もするけど、それが異食症に繋がるという展開が理解できません。置いてけぼりにされてしまいます。母親のレイプの件が話されてようやく彼女が異食症になってしまうほど大きな傷を持っていたのだと理解できますが、遅すぎます。
一応、異食症の伏線はあります。リッチーの両親と会食をしているとき、ハンターが話し始めたばかりなのに義父が遮って別の話をし始めます。その時、ハンターはストレスを感じ、氷をガリガリと食べます。しかしハンターがビー玉を飲み込んだ時、「あぁ、さっき氷食べてたもんな。あの時から異食症は始まってたんだ」と気づく人はあまりいないんじゃないかなと思います。
また、最後はハンターが自らの意思で中絶薬を飲むのですが、それが夫への反抗であると同時に、「たとえレイプで誕生した命でも中絶をしてはならない」というハンターの母への反抗であり、母の倫理観や宗教観への反抗でもあると気づき、すなわちそれはハンターが自分の意志で行動した=母や社会から自由を勝ち取ったということを示していて、だから彼女はカタルシスを得たのだと気づく人は少ないんじゃないでしょうか。
ハンターにとっては天地がひっくり返るようなとてつもなく大きな決断と行動をしているんですよね。生まれる前からそういう倫理観や宗教観に囲まれて育ったのですから。でも前振りが弱すぎます。
や、もしかしたら欧米の人には説明しなくても異食症のことなんて誰でも知ってるし、宗教の話をちょろっとしとけばハンターの生い立ちまで想像がつくのかもしれないですけどね。ちなみにこの作品の紹介に「スリラー」と書いた人はこの映画の内容を1ミリも理解できていないと思います。
リアルガッちゃんスリラー
具体的なシーンについて感想
・異物スワロウシーンについて
まずは氷!
異物じゃないんだけど馴染めてない食事の中で見つけてしまった逃げ道と満足感。
氷アップも手掴みでいっちゃうところもいきなり「これはやばくなる」と思わせられた。
次にビー玉・画鋲・・・
予告の時点から
想像できる気になるところ「痛みやその後」を
ゆーっくり丁寧に見せてくる。
テーブルの置き方や画鋲の向き、手の震えひとつひとつに
目が離せなくった。
お菓子爆食でストレス発散シーンがあってからの
モーテルでの砂爆食!
まさに、砂っく。笑
・お土産要求シーン
カウンセラーとの電話で夫に生い立ちを知られてしまったあと
家を空けるにも妻を気遣う夫が問う土産に「ブレスレット」と答えたハンターだったが
あのショックの受けっぷり。買ってきたブレスレットもこっそり飲み込んだのだろうか。
てか、なんで、スピーカーにしてんだよっ!
・お手伝いルアイの行動がイケメン
ベットの下でハンターの気が済むまで寄り添い側にいてあげるなんて(いびきかいて寝ちゃってたけど笑)。
あの逃がす行為から、ハンターの辛さを一番理解していたのは彼だったのでは。
主演ヘイリーベネットの演技に何度息をスワロウしたか。
まさか、本当に飲み込んで演技しているんじゃないだろうかと思ってしまう
迫真の演技だったと思う。
震えながら異物を飲み込み続けるハンターを見ている時、
夫やその家族・周囲の人・カウンセラーの立場に自分がなったとしたら、
どうすることで辞めさせることが出来るのかを考えながら見てしまった。
まぁ、最低でも、妊娠祝いの食事会でのハンターの話を最後まで聞いてあげるべき。
結局、近所の変なおじさん話のオチは何だったんだろう。笑
終盤の実の父親に詰め寄るシーンからエンディングでまさかの感動。
きっと、ハンターの人生にとっての異物が
生い立ちや親族内でのハンターの立ち位置、今の生活でのフラストレーション、抱えきれない想いなのかな。
そして、今まで手にとっていた異物が薬に代わり中絶という手段で立ち直るという表現。
その選択が正しいのかどうかは置いといて
トイレでのビー玉回収でのシーンにも繋がっているようにも感じて
インパクト抜群で面白い映画だった。
手洗い場でのエンディングも含め最高!
怒りと愛
(めちゃくちゃな文章、映画を見て思ったことなどの覚え書きです、支離滅裂)
静かな他者への怒りと、穏やかな自己への愛が詰め込まれていた。彼女は今までいくつの「自己」を飲み込んできたんだろう。配役もベストオブベスト。どこか世間離れした美貌が、彼女の無垢な少女らしさを際立たせていた。
過去も隠して、自己も隠して、何にもなれないのに、少女は母になる。ならざるを得なくなる。出生の話はやはり彼女の核になる部分だったと思う。望まれる生だったと言う認識はなかったと思う。
何もかも納得できない不条理な世の中。今回はたまたま彼女の異物を飲み込むと言う昇華方法にスポットライトが当たったけど、世間ではさまざまな方法でストレスは解消されてるよな。
ラストの、異常な癖を持つ彼女が女性たちのたった1人に過ぎない、という演出が忘れられない。私が今日、トイレですれ違ったあの女性も何かを抱えて、あるいは飲み込んで生きているんだろう。
そして私も、飲み込んで、生きて行くんだろうなぁ。
メッセージがある映画
いいですね、こーゆー映画は大好き。
写真のように、切り取ったらすごく綺麗なシーンが多々あり、またそれが叶わないから目に焼き付けようと必死で観る自分が居る。
主役のハンター演じる=ヘイリー・べネットは、綺麗なのか?(横顔は素晴らしく美しい)はたまた平凡なのか?(失礼ながら…パーツは大したことないと思う)
しかし…瞳の色がもう、吸い込まれる様に美しい。…バリー・コーガンの女性版みたい。
実は出生に問題があり、幸せな家庭に育ったふりをしてきた主人公、ハンター。
裕福な夫とその両親…どこかで認められていない、小馬鹿にされた扱いにストレスを感じて、自己啓発本の『思いがけないことにチャレンジしよう!』という言葉に感化され、異物(消化できないモノ)を飲み込む様になります。
妊娠中のエコー検査でそれがバレて、大騒ぎになるのですが、精神科医に通わせたり手を尽くしている感はあるのだけど、なんだかなぁ~根本的な解決はされないんです。うわべだけって感じでね。
それで、ハンターは(もしかしたら)最も大切なモノを始末するのですが、その後は顔つきも変わり、素の自分に戻って自分の人生を取り戻すのだろう、たぶん。
最後の女性トイレの手荒い場のシーンが印象的で…ハンカチって日本の文化なの?誰も持っていなくて、大体、髪を触って水分拭ってます、笑える…悪もたまにやりますけど。
イタ女の話か?
全く共感、感情移入出来ない。夫のモラハラが嫌なのか?前半は富裕層に嫁いだ女の悩んやだ挙げ句の特異な癖が出てと理解できるが後半全く意味がわからない。お前何が不満なの?後半父親に会いに行ってマウント取ったのにラストは何?キチガイ女でしたって事。こんなの誰が評価するんだよ。
家政夫の言ってた事が一番だよ。戦争があったら悩んでる暇ない。これに尽きる。
人間は自分の身の丈にあった暮らししか求めたらだめなのか?シンデレラガールはこの世にはいてはだめなのか?
人間をナメきった作品。この作品評価してる評論家頭悪すぎる。ちゃんと考えてほしい。
こんな女性の自立の描き方もある
裕福な生活をしている専業主婦のハンターが、異物を飲み込んでしまう病にかかってしまう話。
大きな家に住み、夫は父の経営する会社で史上最年少で役員に昇格、そして第一子を妊娠という表面的には幸せこの上ない環境だが、そうではないというシーンをうまく挟み込んでくる。とっても微妙な違和感を覚える程度のエピソード。でもそんな小さな積み重ねが人を追い込むということだ。
異物を飲み込むハンターは苦しそうで痛々しいのにとてもワクワクしていた。何者でもない自分が何かをやり遂げた達成感みたいなものに満たされていたからかもしれない。それらはハンターの出生に関わるトラウマだったことが明らかになるのはなかなかスリリング。
中絶しなかった母親とは違う道を歩み、母親をレイプした実父に存在を認められ、初めてハンターは自立できたということか。トイレで見せた晴れ晴れした表情は、中絶した直後なので若干後味は悪いが、前向きな結末だった。
スワロウ
面白かった〜!!
ヘイリー・ベネットが哀しくて可愛かった。
最初にスワロウした時の音がとても良かった♪
お目付け役の彼もステキでした♪
髪型や髪色も、彼女の心とともに変化していたのかな。
そしてスワロウした後が衝撃でした。。。
秘密を持つことで人は自分を保つ
美しい哀しい映画です。誰もが羨む生活の中で何もしないただ美しい妻としていることだけを求められているハンターの冒頭の「間違いたくない」というセリフに現れる強迫観念が、彼女の出生それ自体が過ちから起こっているという構図がとても考え深いものでした。
義母から貰った本で何かに挑戦しよう、と書かれているのを見て、愛しているはずの男の子供がいる体に異物を入れ続ける背徳的な行為に走り、しかしそれが彼女の自信と自我を保つ秘密になっていく様はホラーと言うよりもただ静謐なドラマで忘れ難い映画でした。違和感が生む慢性的な心の痛みに比べれば異物を飲み込む瞬間の痛みも彼女にとっては自信を生む秘密の儀式の一部として大事なものだったと思います。
個人的には途中でてくる夫の同僚が彼女にハグを求める描写は大事なシーンだったと感じました。初めは自分はリッチーの妻だと言って拒むハンターですが、彼が「孤独なんだ」というと受け入れます。自分と重ねた部分があるのでしょう。しかし別の日に同じ男は別の女にも全く同様に声をかけています。彼は孤独かもしれないが、それは手近なもので慰めることができ、本当の意味で1人ではない。その部分はハンターとの対比の気がします。だから彼女は秘密が明るみに出た時も大騒ぎしないで、大事にしないで、と繰り返したのでしょう。自分だけの秘密の儀式が自分を保つ。この真実に心当たりがある人もきっと多いと思います。
よいこは真似しちゃ駄目ですよ
幼顔の主人公ハンターは豪奢なお屋敷に住む若奥様。シルクのパジャマが羨ましい。会社経営者の御曹司と結婚。その家族は彼女自身への関心はほとんどない。身分違いの結婚の落とし穴に嵌まってしまった。始終下に見られるストレスで、妊娠初期から異食症を発症してしまいます。きっかけは姑から渡された一冊の妊娠中の生活読本。これに書いてあった「思ってもみなかったようなことをはじめてみましょう」に目が行ってしまった。
最初はガラスのビー玉。これは下からすんなり出ます。洋式トイレをゴム手袋して回収。洗って、アクセサリー置き場に戻します。次は壁ピン📌。これは肛門を傷つけ、トイレに鮮血が。折悪く、旦那が会社の同僚たちを連れてご帰宅。スカートについた一滴の血痕を洗っていると、ほろ酔いの社員ひとりが近づいて来て、「僕を抱きしめてください」という。「私は人妻なのよ」「キスするほどは酔っていないけど、バグしたいぐらいは酔っている。寂しいんだ。」彼女はこれを受け入れる。ふたりは抱擁をかわす。疎外されて、寂しい彼女。次第にエスカレートして、金属製のクリップや単3電池などを飲み込み、妊婦検診の超音波検査の際に見つかってしまう。内視鏡で取り出され、事なきを得るが、精神科医を紹介されることに。しかし、その一方で若旦那は家でパーティーを催し、社員などに彼女の異食症を話してしまう。シリア人の男性介護師もお目付け役に雇われる。逃げ場のない彼女がベッドの下に隠れているのを見つけて、砲弾が飛び交う戦場では些細なことに気を病むゆとりさえないと諭しながら添い寝している間に彼は寝てしまい、彼女はその間にマイクロドライバーを飲み込んでしまう。異物は外科的に頚部を切開して取り出される。とうとう一家の最終決定は精神病院に入れて分娩まで管理するしかないということに至る。そこで、彼は彼女を裏口から逃がす。ヒッチハイクをしながら、実家の母親に電話。自分の居場所がないことを思い知った彼女は自分の母親をレイプで孕ませた男の家へ。母親の名前を聞き、彼女の存在を悟った男。言い訳の内容は、当時は全能感に支配されていて、自分のすることに罪悪感が全くなかったという子供じみたもの。刑務所での服役中に暴行を受け、人工肛門になってしまったと告白。彼女は黙ってその場を立ち去った。堕胎薬を処方してもらい、ショッピングモールのトイレで流産する。何もなかったかのようにトイレを立ち去る。
時間の経過からすると、そんな堕胎は無理な週数でしたが、目をつむりました。
そのあと、エンドロールの背景にはトイレを出入りするたくさんの若い女性たちの映像と女性を応援する歌詞の曲が流れて映画は終わる。
お前を拾ってやったんだから、もっと恩を感じろと言った御曹司のセリフがむなしい。
若いんだからいくらでもやり直しはきくと応援する映画なのかなと。そうでもなければ、希望の光がありません。
元旦からかわいそうな女性の映画を見てしまいました。バルト9のシアター8はかなりの入りでした。新宿駅はガラガラなのに。
ななめ上をいきます。
自己否定感が強い主人公が異食症となり、自身の問題と向き合い、他者からの承認を得て前へ踏み出す話。
役どころは、人の顔色伺いHappyを装う主人公、ばりばり宗教右派の母親(声だけ)、レイプ犯の父、モラハラ夫と偽善者な義父母、シリア出身の介護士…彼らのちょっとした言動から背景や心情が見えます。
予告や解説を読んでおけばストーリは想定内なんですが、ところどこぶち込んでくるので”ひぃ!””ひょぇ〜!”となりました。
例えば…
”レイプによって出来た娘が主人公”
”刑務所で袋叩きに合い、人工肛門をつけることになったレイプ男”
”介護士が脱走を手助けするシーン”
”ラストの堕胎シーン”
あたりが”ナナメ上いくなぁ〜”と感じました。
淡々とストーリーは進みますが、行間に観てる側の想像を駆り立てるものがあり、飽きませんでした。
※ネタバレ箇所を少し削り、修正しました。
正しい幸福感
主人公のハンターはビジネスで成功を収めてる旦那を持ち、立派な豪邸に住む。もちろん彼女が外に出て働く必要もなければ表面上は旦那も優しい。ただハンターはどこか幸せでないのは冒頭から伝わる。
旦那の仕事柄上、旦那の家族と関わりが冒頭からあるのだが、その家族からも彼女が一生懸命話していても途中で遮られたり、本人は気に入ってる短い髪型を否定されたり…彼女の存在自体が彼らには大した存在でない事がひしひしと伝わる。もちろんそこには悪意があったり、彼女を虐めてやろうという気持ちもまた無いのは伝わる。シンプルに彼女の存在がはっきりと伝わり、それが返って彼女をさらに苦しませる。
結局そこのわだかまりが妊娠しても尾を引く。旦那も家族も表面上はハンターに優しく接するが、ハンターの心配以上にお腹の中の子がとにかく気になってるのが伝わる。もちろんそれは普通の事なのかもしれないが、元々きちんとした信頼関係がない上だとさらに彼女を傷つける。そこで異食症が爆発する。
この作品はもちろんこの異食症が主となるが、決してあれこれ異物を食べるシーンが沢山ある訳ではない。
孤独や寂しさの気持ち、満たされない欲がMAXに近くなるとそういった衝動に出る。その描写が丁寧に描かれているためとても見入ってしまう。
確固たる描写で彼女が明らかに、意図的に苦しめられる、虐められるような描写が決してあるわけではないが、彼女の寂しさ、満たされない欲は十分伝わり心が痛くなる。
後半ではハンターはレイプの末生まれた事が明かされ、終盤ではその犯人(刑期は終えた)に会いに行き気持ちを伝える。
そこで彼女は本心では望んでなかったお腹の中の子を中絶し、そしてこれから一人で生きていこうとする姿で作品は終わる。
このハンターは顔もカッコよく、そしてお金もあり、決して意地悪とかではない旦那を持っているのだから誰もが羨み本来は幸せであってもおかしくない。
もちろんハンターでなければこの生活でも十分幸せに感じ、ハンターの旦那と一生を暮らしていける者も沢山いるだろう。
決してハンターがおかしい訳でもなく、旦那も特別おかしい訳でもない。ただ人それぞれ幸福感、幸せに繋がる欲というのは違い、その違った欲、幸福感を強要することが返って不幸となり人をダメにしてしまうという描写が非常にうまく描かれておりとても好きな作品であった。
決してドラマ性の高い作品ではなく、異食症含め精神病になってしまうありえそうな過程を淡々と描いていくがそれでも見応えはある。
今は便利な社会にどんどんなるにつれて幸福感を満たされにくくなっていくというのはメディアで何度も目にしたことがある。僕自身もその1人であるが、そのような人は沢山いると思う。
時には人が羨む事、望む事が幸せだと思ってしまう事もあるが、自分自身の幸福感というものを明確にし、それを形にする事が大切なんだという事を改めて感じさせてくれる作品であった。
またその幸福感を形にできない、前に進めないのはハンターの様に過去の大きなトラウマが邪魔をしている場合もある。時には幸せを掴むにはまずトラウマを消し去ることが必要であったりもする。
自分の過去を振り替えながら、そして心と会話しながら楽しめるそんな作品であった。
全34件中、21~34件目を表示