「何一つ予想できなかった」Swallow スワロウ R41さんの映画レビュー(感想・評価)
何一つ予想できなかった
まったく予想できないストーリー
予備知識なく見たが故の衝撃
真っ赤なインパクトのあるカバー画像だったが、スパイものとかバイオレンスもののように見えていたので長い間見ないでいたが、まさかこのような展開の作品だとは想像さえできなかった。
エンドロールに託された余韻は、日々自分を隠しながら生きている女性たちと、強くなって立ち去っていく女性たちを象徴しているのだろうか?
歌詞にも「そう、私は強くなった。あなたの元を去ろう」とわざわざ訳している。
スワロウ
ツバメとか、コードネームとかではなく、そのままの意味「飲み込む」こと。
実際に飲み込んでいたのは異物そのものだったが、彼女が飲み込んでいたのは自分ではないものをひたすら受け入れること。
誰もがうらやむお金持ちとの結婚
その家族になるために受け入れてきた数々の自分ではないもの。
異物を飲み込むことで得られる満足感は、一つこの家族に近づくことができた証とか満足感だったのかもしれない。
しかし異物とは偽りの違和感なのだろう。
彼女、ハンターが顕在的に持っていたのは、自分自身がレイプの代償として生まれてきた事実。
それがどんなことなのかを自分自身でさえ理解することが難しいはずだが、彼女はそれは乗り越えた過去だと思っていた。
当然自分自身ではどうにもできない事実だ。
やがて手に入れた幸せ お金持ちとの結婚
口先だけの I love you.
寂しいという夫の友人の依頼に応えたハグは、彼女にとって似た者同士の気持ちの分かち合いと、言葉以上に感じるぬくもりの温かさだったのだろう。
抑えられない異食症はストレスに比例していく。
冒頭、ハンターが夫にすすめられて話そうとした髭の変な男の話
その男は、看護師のルエイと被るのだろう。
戦時中のシリア 「戦争中に心を病むものなどいない」
そのルエイが彼女の逃亡の手助けをしたのは、彼女の心の苦しみに気づいていたからだろう。
おそらくハンターのしたかった話は、その胡散臭い髭の男に共感を覚えたという笑い話だったのだろう。
モーテルの前の公衆電話から母に電話を掛ける。
会いたいし来るのは構わないが部屋はないという言葉に反応して電話を叩き切ったのは、口先だけは娘として扱われていたのだろうが、実際にはレイプされて産んだ子だという扱いを受け続けてきたのだろう。
それを、思いがけずに再確認してしまったことの反応だった。
ハンターはもうどこにも逃げられなくなった。
さて、
何故ハンターは新聞記事の写真を持ち歩いていたのだろう?
父でありレイプ犯でもある男 彼女にとっての父という意味は、物心ついたときからあったのだろう。
次に出会った父は、母の正式の結婚相手
そして夫の父
父になる夫
ハンターにとって父とは、暴力的で嘘つきで詐欺師で口先だけ
その根源だった本当の父の自宅に潜入した。
偶然行われていた彼のバースデーパーティー
さすがに見たこともないのに、自分の血を感じたのだろうか?
やがてレイプを問い詰める。
彼女の眼は終始涙が伝っている。
本心
嘘や異物なんかじゃない本心
「決めるのは私」
父と本心で話を付けたことで、彼女は堕胎を決意した。
母のできなかったこと。
「私はあなたと同じ」
「君は私とは違う。何もしていない。悪くない」
私は、私のことを私自身で決断する。
女子トイレ 大量の出血
すべて自分で決めたこと。
そしてエンドロールの歌詞
「そう、私は強くなった。あなたの元を去ろう」
一人の女性の、自分自身を再発見する物語。
見ごたえがあって素晴らしかった。