「孤独な彼女が逃げたのは異食による自傷であった」Swallow スワロウ といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
孤独な彼女が逃げたのは異食による自傷であった
2021年の年始に公開された本作。映画ファンの中ではかなり話題性の高い作品でした。
ざっくりしたストーリーは知っている状態でしたが、イマイチ私の好みとは違う気がしたのでなかなか見る決心がつかずにいました。アマゾンプライムで無料配信されていたこの機会に、重い腰を上げてようやく鑑賞です。
結論ですが、凄く面白かったです。
独特の色合いの絵作りであったり絶妙な人間関係であったり、そういう部分が非常に楽しめました。異食症ばかりがフィーチャーされて説明されがちな本作ですが、それ以上に家族間の人間関係が本作の面白さの軸になっていると感じます。
夫や義両親から疎外感を感じていた彼女が、最後に頼った相手が……。
色々と考えさせられる作品でしたね。
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若くして大企業の役員となった優秀な夫を持つハンター(ヘイリー・ベネット)。裕福な義両親から新居をプレゼントされ、地位も収入も高くルックスも良い夫に愛され、赤ちゃんを身ごもり……。傍から見れば幸せいっぱいの彼女であったが、彼女自身は完璧な夫の家族に対して本心で接することができず、疎外感を感じていた。ある日、彼女はビー玉を手に取った時に、それを食べたいという衝動に駆られ、飲み込んでしまう。それ以来彼女は、様々なものを食べてしまう「異食症」の症状に苛まれることになる。
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異食症は本作に登場するハンターのような妊婦に多いそうです。
妊娠中は鉄分などの栄養素が不足してしまうため、土や石などを食べたいという衝動に駆られるとのこと。通常は体に害のない小石や土や髪の毛を口にすることが多いらしいですが、ハンターは体を傷つけてしまうようなものまで食べてしまっているので、なかなか症状は深刻に感じられます。
異食症の治療方法としては、鉄分などの栄養補給や家族を含めた生活習慣指導などがあるそうです。なので、義母のジュース療法は治療法としては決して間違ってないですね。義両親は彼女の症状を受け入れて理解しようとする様子が伺えますが、肝心の夫は彼女の行動を激しく非難し、怒号を飛ばします。過度なストレスからか、異食症の症状が治まることのないハンターがどんどん追い詰められていくような描写が観ていて辛い。
そして最後のあの展開。ハウスキーパーの男性の協力で家から逃げ出したハンターが、最後に助けを求めたのは顔と名前しか知らない実の父親。父親とのシーンは個人的にはかなり感動しました。
色々と考えさせられる作品でした。異食症という刺激の強い部分のある映画ではありますが、多くの人に観てほしい作品です。オススメです!!