「「他者の」欲望を飲みこんでいく」Swallow スワロウ 桜場七生さんの映画レビュー(感想・評価)
「他者の」欲望を飲みこんでいく
予告編でもポスターでも画鋲を飲んでいるシーンがあったのでおっかなびっくり鑑賞したが思いの外引き込まれた。
夫婦間のコミュニケーションになにかしら問題を感じている人が見ると共感する部分があるかと思う。
主人公の女性が"異物"を飲み込む原因は分かりやすく、「自分ではない誰か」を求められた時にその衝動が起こり、飲み込んだ後にそれを成し遂げた達成感を感じるのだろう。
しかしそれは越えるべき壁を越えたわけでもなく、他者からの「こうあって欲しい」を叶えただけ。
女性だから、と限定しきれないけれど、女性が抱えがちな問題ではある。
なぜ主人公がそこまでして他者に合わせるのか、その原因として遠い過去の出来事が描かれる。
分かりやすく"これが問題"と言えるような過去は現実ではそんなにあり得ることでは無いけれど、それと対峙する姿を描くことが重要だったのだろう。
最後の終わり方は主人公としてはスッキリしたのかもしれないが、あまり後味の良いものではない。
しかし、トイレの中で身繕いする何人もの女性の姿を見ていると、内面がどうであれ、外の世界と戦う為に皆生きているのだなあ、と言う力強さをなんとなく感じる。全体的に面白い描き方だなあ、と思った。
個人的には夫が悪いと言うよりは階級的、性格的なミスマッチかと思った。家事に文句つけるくらいならお金もあるんだし家政婦をとっとと雇えばいい。
いろいろ責任転嫁してきてうるさい夫だが、もっと我が強い奥さんだったら壊れずに済んだだろう。
しかし、自分の言うこと聞きそうな相手として主人公をパートナーに選んだ感は否めず、やはりこの映画の中で起こる問題はありがちな事なのかなあ、とも思った。
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