劇場公開日 2021年1月1日

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「本当に飲み込んだ物は。」Swallow スワロウ はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0本当に飲み込んだ物は。

2021年2月2日
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鑑賞方法:映画館

いつもどこかうわの空。美しい妻ハンターは妊娠をきっかけにあらゆる異物を飲み込む異食症を発症する。ガラス張りの豪邸で家事をしてゲームで時間を潰し夫の帰りを待つだけの日々。一般家庭出身のハンターをどこか見下したかのような夫とその両親。まるで美しい装飾品のように扱われるハンター。その心には誰も触れようとしない。孤独感を埋めるかのように飲み込んで排出した異物を洗ってコレクションする。
無価値だった物が特別な物になったように感じ異食症がエスカレートしてゆく。

セレブのエリート夫もその両親も決して人が悪いという訳ではない。確かに両親はハンターを気に入ってはいないだろうけど妊娠には大喜びだしひどい扱いをすることもない。夫だって自らを「変わり者の私」というハンターにちゃんと愛情はあったはず。そもそも住む世界が違うし価値観の違いは否めない。
結局ハンターは誰といたって満たされなかったんだと思う。ハンター自身が自分を否定し続けて生きているから。
それを見透かすかのように「幸せなの?幸せなふりをしているの?」と冗談めかして問いかけた義母の言葉が印象的だった。

明かされるハンターの心の闇。実の父親との壮絶な確執。隠し続けてきた生い立ちと向き合おうとする姿に涙が出た。

ハンターが今まで飲み込んできた物はきっと異物だけではなかっただろう。そして排出した物も。

ラストシーン。究極とも取れる選択。違う結末があったのではないか。でも空っぽになったハンターの生き生きとした表情とその足取りに、その選択を否定することなど到底できなかった。

ポップな音楽にのせたエンドロール。定点カメラが写し出す女性達のありきたりな日常。この中にハンターが紛れていてももうきっと見つけられない。

ドレスを脱ぎ捨て手入れされた髪をクシュッと束ねたハンターが歩いて行くその道に素敵な出会いがありますように。

はるたろう