劇場公開日 2021年4月9日

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「スプラッター・コメディと「ざまぁ」」ザ・スイッチ dskさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5スプラッター・コメディと「ざまぁ」

2021年4月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

怖い

 “ホラー”と“男女入れ替わり”という要素を合わせたことで、ふたつの面白い効果が生まれた。

 ひとつはコメディ要素。
 笑えるホラーはときどきある。たいていはブラックな笑いだが、この作品は違う。ホラーとしては血や内臓が飛び散る普通のスプラッターなのに、男女入れ替わりの部分で笑える。つまり、ホラーとコメディのハイブリッド作品になっている。
 まず、外見は「不潔でいかつい殺人鬼のおっさん」なのに、言動は「気弱でガーリーな女子高生のいじめられっ子」というギャップが笑いをさそう。そして、殺人鬼の外見のまま、女子高生の恋愛ストーリーが進展してしまうことで、さらなる笑いがある。
 いくら中身がうぶな女子高生だとしても、外見がおっさん殺人鬼である相手に愛を語ることが出来た少年に、心からの敬意を贈りたい。

 面白い効果の二番目は、殺人鬼が単なる恐怖の記号ではなく、もう一人の主人公になったこと。
 応援したくなるような、かっこいい悪役もあり得るが、それは悪役の背景や哲学に共感できる場合に限られる。本作の殺人鬼にそのような要素はない。にもかかわらず、応援したくなるシーンがあった。
 視聴者のヘイトを集めた登場人物は死ぬのがホラーのお約束だ。本作では、序盤で主人公(女子高生)にいやな思いをさせた連中がその役回りである。そして、女子高生の体を得た殺人鬼が彼らを殺す。入れ替わりを知らない被害者から見れば、「いじめた相手に復讐された」という認識だろう。
 中の人(殺人鬼)にも、外の人(女子高生)にも、そんなつもりはないのに、結果として恨みをはらす構図になっている。そのせいで、殺人鬼(見た目は女子高生)を応援してしまうのだ。

 “ホラー”と“男女入れ替わり”を合わせるという単純な思いつきをきっちりとまとめることで、本作は怖くて笑える作品として仕上がっている。

dsk